携帯電話業界ブログ

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富士通と東芝、携帯電話事業を統合へ 世界挑戦、最低1000万台条件

2010-06-13 | 端末メーカー/日本



 富士通と東芝が携帯電話事業の統合で交渉に入った。

 実現すると、国内市場でシャープに次ぐ第2位、海外も含めた総出荷は年700万台強になる。両社は年内にも共同出資会社を設立し、それぞれの携帯電話事業を統合することを軸に調整しているとみられる。

 統合会社には国内3位の富士通が50%超を出資する見通しで、統合後の事業を主導するとみられる。早ければ月内にも基本合意する方向。


●市場縮小と新規参入

 富士通は、シニア層に人気の「らくらくホン」などの端末をNTTドコモ向けに供給。東芝はKDDI(au)向けが主力で、統合すれば供給先を広げることが期待できる。

 また、富士通は海外市場への参入を検討しているが、東芝は昨年、初のスマートフォンを欧州に投入しており、海外展開でもシナジー(相乗)効果が得られる。

 両社が事業統合に踏み切るのは、国内市場の縮小が続いているため。

 電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2009年度の国内携帯電話出荷台数(PHS含む)は前年度比12.3%減の3142万台と2年連続で減少。

 年間の出荷台数としては、1998年以来11年ぶりの低水準。

 しかも、この数字には人気のスマートフォンiPhoneなど海外メーカーは入っておらず、国内メーカーは「縮む市場に新規参入というダブルショック」という状況。

 これに対し、世界市場は今後も成長が見込まれる。野村総合研究所によると、世界の携帯電話端末需要は08年度の11億800万台から、14年度には13億5300万台に達する見通し。

 新興国の拡大に加え、欧米でもスマートフォンへの切り替えが進むとみられるためで、NECカシオモバイルコミュニケーションズの山崎耕司社長も「統合により海外市場への攻勢を本格化させる」と意気込む。

 ただ、IT調査会社MM総研の横田英明アナリストは「単独でも海外で十分に事業できるのはシャープくらいで、再編の動きは進む」と指摘する。

 今後も、採算が悪化している中位以下のメーカーや、日本での知名度向上を狙う韓国のLG電子などの海外メーカーを交えた再編の可能性もある。


●「出荷1000万台」目安

 各社は世界と戦う目安「出荷1000万台」を目指す。1日に発足したNECカシオモバイルコミユニケーションズの山崎耕司社長は「2012年度に出荷1200万台を目指す」と宣言した。

 現在の総出荷台数・年720万台を6割増やす計画を疑問視する声もあるが、山崎社長の宣言は、「世界に挑戦するには最低でも年1000万台規模が必要」という危機感の表れでもある。

 年間出荷約11億台の世界市場はノキア(約4億5千万台)、サムスン電子(同2億台)、LG電子(同1億台)の3社が約7割を占める。

 世界の約3%にすぎない日本市場には10社がひしめき、1000万台超えは首位のシャープだけ。

 日本勢の再編が遅れていたのは、右肩上がりの国内市場でNTTドコモなどの通信会社丸抱えの端末開発が機能してきたことにある。

 端末を通信会社が全量を買い取り、開発を支援する仕組みの下、高機能端末を送り出してきた。

 携帯端末各社は「ワンセグ」や「おサイフケータイ」といった日本独自の機能付加に注力。世界から孤立した「ガラパゴス」と言われた。


●通信会社主導の限界

 この環境に変化を起こした例が、米アップルのiPhone。メーカーがコンテンツ課金するモデルの登場は、通信会社主導の端末開発の限界を示した。

 逆に、メーカーが魅力的な製品を作れば世界で戦えることを証明した。それには再編で開発基盤を統合し、コスト競争力を高める必要がある。

 国内では、光回線並みの高速通信ができる次世代携帯電話サービス「LTE」が年内に始まる。LTEで事実上、世界の携帯電話の規格が統一され、国内メーカーが海外の通信会社や利用者に端末を提供しやすくなる。

 総務省は、携帯電話端末を1つの通信会社でしか使えないようにする「SIMロック」を11年以降解除する方針。

 端末と通信サービスを別々に選べるようになれば、メーカーは独自色を発揮できる。端末の魅力自体が事業の成否を決める新しい時代はメーカーにとってチャンスだが、残された時間は少ない。





【記事引用】 「日本経済新聞/2010年6月12日(土)/11面」
         「フジサンケイビジネスアイ/2010年6月12日(土)」


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