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携帯電話向けマルチメディア放送、来春スタート 端末メーカー、ずれる思惑

2011-11-16 | 携帯事業者/日本



 地上アナログ放送が使用していた電波の一部を使って、来春からサービスが始まる携帯電話向けマルチメディア放送に対して携帯電話端末メーカーなどに戸惑いが広がっている。

 通信と放送が融合する新たなサービスだが、日本独自の仕様ということもあり、世界展開を模索する端末メーカーの思惑とずれもみられる。

 一方、コンテンツ事業者の中には新たな提供手段として期待も出ており、既存メディアとの差異化をどう打ち出せるかが課題となりそう。


●先陣切って市場開拓

 「テレビでは実現できないことをする」――。NTTドコモ子会社のmmbiが始める「NOTTV」(ノッティーヴィー)の名称は、4月から始める携帯電話向け新放送の狙いを表している。

 スマートフォンやタブレット型端末の普及を見越し、現状の「ワンセグ」よりも画質が10倍向上した多チャンネルの独自放送や、端末に動画を自動的に保存する蓄積放送が可能になる。

 mmbiでは3つのチャンネルを使い、放送を流す計画で、現在、制作会社などを集めて具体的な番組編成に着手。

 新放送を受信できる端末についてもドコモとシャープが4月の開始に合わせてスマホを開発中で、タブレット型端末も用意する方針。端末には放送受信用の部品やアンテナなどの独自のカスタマイズが必要となる。

 しかし、新放送が採用する「ISDB-T」方式を日本以外で使っている地域は南米などに限られる。

 急速なスマートフォンシフトを受けて、携帯電話端末メーカー各社は海外進出のために端末の世界共通仕様化を加速している。こうした動きに逆行しかねない「日本独自の仕様を入れるのは再ガラパゴス化になってしまうかもしれない」(メーカー幹部)と不安の声が早くも上がっている。

 通信他社の参入動向も不透明。総務省が事前に実施した参入希望調査ではKDDIや学習塾のナガセなど6社の申請があったが、実際の申請受け付けでは約10の免許枠にドコモしか結局申請しなかった。KDDI幹部は「参入するつもりは全くない」と断言する。

 mmbiの二木治成社長は「まずは先陣を切ってスタートし、実績を見せていく中で次の募集で多数の再参入を促したい」と話し、ドコモも4月のサービス開始時点ではまず「一人旅」で市場開拓を図っていくことになりそう。


●差異化も課題

 かつて携帯向け有料放送の先駆けといわれ、東芝などが04年に開始した「モバイル放送(モバHO!)」は加入目標の200万人に対し約10万人にとどまり、09年3月にサービスを終了した。

 米国でクアルコムが進めた「フローTV」も同社が撤退するなど、無料が中心となってきたネットサービス時代に有料放送の利用者確保は厳しい。

 足元ではスマートフォン普及に伴い、Youtubeやニコニコ動画などの動画サービスの利用が活発となっているほか、ドコモ自身も「BeeTV」や提携した米動画配信サービス「Hulu(フールー)」などの通信系動画サービスを手掛けており、差異化も課題になる。

 ドコモは放送事業を担当するmmbiに本体の開発、販売、マーケティング、コンテンツ担当などあらゆる部門から社員を集め、社内では「プチドコモ」と呼ばれる重厚な布陣で臨む。

 mmbiが開いたコンテンツ事業者向けの説明会では200社、500以上の番組企画が寄せられるなど、番組編成に向けた計画も着々と進んでいる。

 番組だけでなく、ベンチャー企業の中には「東京スカイツリーからスマートフォン向けのアプリが配信できるビジネスチャンスは大きい」(アプリ開発のイーグルの藤永真至代表)といった期待の声が上がっているほか、出版社が電子書籍などを放送波で配信するといった案も出ている。

 スマートフォンの普及でデータ通信量が増大する中、「通信トラフィックを効果的に使えるメリットもある」(野村証券の増野大作アナリスト)との指摘もある。

 mmbiが目標とする初年度100万契約、中長期目標の1000万契約を達成するためには、従来の動画サービスや地上波テレビといった既存の枠組みにとらわれない放送波の活用も必要になるだろう。




【記事引用】 「日経産業新聞/2011年11月16日(水)/3面」


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