サムスン電子の4-6月期の連結営業利益が過去最高を更新したのは、5月末に投入した「ギャラクシーSⅢ」など高価格のスマートフォンで米アップルと互角に渡り合っているため。
「iPhone4S」の発売は昨年10月。アップルが機種を切り替える間隙を突き、顧客を獲得しようとするマーケティング戦略が奏功している。
●世界販売最速ペース
2010年6月発売の「ギャラクシーS」、11年4月の「ギャラクシーSⅡ」に続き、サムスンは今年5月末に4.8型の有機ELパネルを搭載した「SⅢ」を投入。
欧州、中東・アブリカを皮切りに販売地域を順次拡大しており、6月8日には日本市場でもNTTドコモを通じて発売した。
IT機器部門を率いる申宗均(シン・チョンギュン)社長は、「SⅢは7月中に世界販売が1千万台を超える」としている。2カ月での大台超えはSⅡの5カ月を上回る最速ペース。
iPhone4Sと比較させることに成功し、アップルの潜在ユーザーに食い込んでいる。
サムスンは戦略機のギャラクシーSシリーズを1年周期で投入する一方、5.3型パネルにダッチペンを搭載した「ギャラクシーノート」を昨年10月に発売。
上級機を半年に一度のペースで枠入することで、iPhone4Sの勢いが陰る時期の販売機会を確実にとらえている。
高い完成度と魅力的なアプリケーションで先行するアップルとの製品差を、機種を変えるごとに詰めていくと同時に、パネルを一気に大型化。3.5型というアップルの弱点を突いて、違いを際立たせた。
有機ELパネルを内製し、世界シェア8割という強みを最大限に生かしている。
●アップルの出方分析
サムスンは11年7-9月期にスマートフォンの販売台数でアップルを抜き初めて世界首位に立ち、10-12月期はiPhone4Sにおされて2位に落ちた。
12年1-3月期は再び首位に返り咲き、4-6月期もアップルを抑えたとの見方が強い。サムスンは、アップルが次期iPhoneをいつ投入するかに最大限の注意を払っている。
新機種に対し、ギャラクシーSⅢがどこまで対抗できるかで自社の販売力を見定めると同時に、アップルの出方を分析した上で次期主力機の製品戦略を見直していく意向。
【記事引用】 「日本経済新聞/2012年7月6日(金)/3面」