インドの携帯電話人口が急増している。
7月の新規加入は、単月で過去最多の800万件を超え、現時点での累計加入は2億件に達したのがほぼ確実。世界最大手のノキアとソニーエリクソンが現地に開発拠点を設けるなど、メーカーの争いが激化。
外資系通信会社もM&Aで市場参入を狙うなど、インドが中国と並ぶ重要市場として台頭してきた。
●現地の流行研究
急成長の背景には、メーカ各社が新興市場国を狙った2000ルピー(約5600円)前後と手ごろな製品を相次いで投入していることや、電話会社間の競争による通話料の値下がりなどがある。
インド電気通信管理局(TRAI)によると、7月末の累計加入は約1億9300万件となった。
ニューデリーを8月末に訪れたノキアのオリペッカ・カラスブオ最高経営責任者(CEO)は、「今年上半期に、携帯とネットワーク機器の売上げで、インドはアメリカやイギリスを抜き、中国に次ぐ市場に浮上した」と述べた。
現地シェアが7割に達すると目されるノキアは、製品開発でインドシフトを強める。
8月初め、南部のバンガロールに世界初となる「サテライト・デザイン・スタジオ」を開いた。現地のデザイン会社と連携し、インドの流行りのデザインや色などを研究する。
新製品の開発に、インドの消費者の好みを反映させるための戦略拠点だ。
また、インドからの輸出拡大にも期待しており、カラスブオCEOによると、06年に現地生産を始めて以来、累計生産はすでに6000万台、58ヶ国に輸出を始めており、「世界戦略のための工場」と話す。
●製品を現地調達
ソニーエリクソンも6月、南部のチェンナイに携帯の研究開発拠点を設けると発表。
現地生産の動きも広がっている。すでに工場を持つノキア、サムスン電子、LG電子などに続き、ソニーエリクソンは6月、生産提携しているEMS最大手のフレクストロニクス・インターナショナルの各インド工場から現地調達を始めた。
09年には、調達台数が1000万台に達すると見込む。
ソニーエリクソン・インディアのゼネラル・マネージャーのスディーン・マトゥール氏は、「製造と開発の両拠点は、インドで成長する強固な足場となる」と期待する。
サムスン電子は06年2月、北部のハリヤナ州で年産100万台規模の現地生産を開始した。10年をめどに、同2000万台に引き上げる計画。
通信の世界でも、インドに外資系企業が熱い視線を注ぐ。
英ボーダフォンは、今年初めにインド四位のハチソン・エッサール(現ボーダフォン・エッサール)を130億ドルで買収した。10年を目標に首位を奪取する計画。
【記事引用】 「日経産業新聞/2007年9月5日(水)/4面」
【画像引用】 「インド紀行」 「神の国インド」