携帯電話業界ブログ

── ケータイ業界関連の記事集.

【覇権争奪 新ケータイ戦争②】 ネットと通話、どっちで稼ぐ 二極化の波

2010-03-28 | 市場動向/世界



 「データ通信の拡大を目指すうちの戦略にとって、重要な製品だ」。

 寒さがピークを迎えた1月21日。東京都内のホテルで行われた記者会見の後、集まった報道陣にNTTドコモの山田隆持社長はひときわ声を張り上げた。


●音声通話の落ち込みを補完

 ドコモがこの日発表した新製品は、ソニー・エリクソン製の新しいスマートフォン「Xperia(エクスペリア)」。

 日本のスマートフォン市場はソフトバンクが販売する米アップル製「iPhone」の独走状態で、エクスペリアは「切り崩しの本命」(ドコモ幹部)と期待を集める。発売日は4月1日。

 注目される理由は、それだけではない。
 
 携帯電話の本来機能は音声通話だが、利用時間はジワジワと落ち込んでいる。ドコモの場合、平成21年10~12月期の携帯電話1契約当たりの月間平均通話時間は138分。

 4年前の17年10~12月期に比べて13分も少ない。電子メールの利用が伸び、それに押される形で音声通話の出番がなくなっているのだ。

 ドコモとしては、インターネット閲覧といったデータ通信の利用を伸ばすことで音声通話の落ち込みを補いたいわけで、ネット利用に適したエクスペリアはそのカギを握る。

 海外市場でも、データ通信の重要度は増している。

 韓国のサムスン電子が年内発売を予定するスマートフォン「Wave(ウェイブ)」は、流行中のミニブログ「twitter(ツイッター)」やネット上からダウンロードするコンテンツが最大の売り。

 「端末の価値はネット機能の充実度で決まる。いずれ音声通話は付属サービスの1つになるだろう」。携帯電話市場で世界第2位の企業らしく、サムスン電子幹部は明快に言い切った。
  

●多様化戦略激化

 携帯電話のイメージからほど遠いが、通話機能のない端末も存在感を増している。

 携帯電話通信網を使ったパソコンのネット接続に使う、データ通信カードがその代表。大手通信企業だけでなく、国内ではイー・モバイルといった新興勢力がサービス強化に乗り出している。

 イーモバイルに端末を供給するのは中国最大の電話ネットワーク機器メーカー華為技術。

 同社幹部が「IT技術の進化に伴ってデータ通信のニーズは高まる」と指摘するように、そのサービスはすでに新たな領域に広がっている。

 昨年、白い犬の「お父さん」が写真立てのような機器を目にするCMが話題をさらった。携帯電話で撮影した写真をメール送信で大型画面に表示できる、ソフトバンクの「デジタルフォトフレーム」。

 別の電子機器に携帯電話の通信機能を付けて、いかに新しい価値を生み出していくか。予想外の製品を“携帯電話”に変えて驚かせることが、今や携帯端末商戦を左右する重要な要素となっている。

 もっとも、音声通話を主体とした携帯電話が消えるわけではない。

 「欧米では通話だけで十分という顧客層が存在し続ける」との見方が強いほか、今後、アフリカ諸国などで携帯電話市場の成長が見込まれる。低価格化を軸にしたさらなる競争激化は避けられそうにない。

 ネット機能を中心としたスマートフォンと音声通話主体の携帯電話端末。市場の“二極化”がさらに加速する中、データ通信を柱とした多様化戦略も激しさを増していく。





【記事引用】 「フジサンケイビジネスアイ/2010年3月26日(金)」


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