中国でインターネット企業による低価格のスマートフォンの投入が相次いでいる。
電子商取引最大手のアリババ集団(浙江省)は中国家電大手、海爾集団(ハイアール)と999元(約1万2400円)の端末を共同開発し、来週にも発売する。ネット企業が低価格スマートフォンを顧客囲い込みに使う動きが広がりつつある。
●低価格品投入
アリババとハイアールは、「Zing」と名付けたスマートフォンを投入する。アリババ傘下の阿里雲計算(アリババ・クラウド・コンピューティング、浙江省)が開発した独自基本ソフト(OS)「阿里雲OS」を搭載。
500万画素のデジタルカメラや4インチの液晶タッチパネルを採用する。ハイアールが全国の家電量販などで端末を販売する。
ネットオークションサイト「淘宝網」や、オンライン決済サイト「支付宝」など、アリババがグループで展開するネットサービスを簡単に操作できる機能を持たせる。
写真などのデータを端末ではなく、ネット上で保管し、必要な時にだけ引き出すクラウドサービスの利用も可能。
アリババは、昨年7月に通信機器メーカー北京天宇朗通通信設備(北京市)と提携し、独自OSを搭載したスマートフォンを発売。これまでに100万台超を販売した実績を持つ。
だが、価格は2680元(約3万3000円)と高かった。低価格品の投入で利用者の裾野を広げる。
一方、ハイアールはスマートフォンの投入が遅れ、携帯電話市場での存在感が低下していた。中国最大のネット通販サイトを運営するアリババと組んで巻き返す。
●独自スマホ発売
中国のスマートフォン市場では、米アップルの「iPhone」や韓国サムスン電子の「ギャラクシー」など海外勢が台頭している。ただ、iPhoneやギャラクシーの価格は最新モデルで5千元(6万2千円)前後。
外資系企業に勤める大卒新入社員の月給以上の価格だ。これに対し、中国メーカーの華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)は1千元(約1万2400円)前後で販売している。
中国ではこの価格帯でこのところ、ネット企業が独自のスマートフォンを発売している。
検索最大手の百度(北京市)が家電大手の長虹電器(四川省)と組んで、899元(約1万1千円)のスマートフォンをこのほど発売した。オンラインゲーム大手の盛大網絡も独自スマートフォンを投入する計画を発表。
各社はスマートフォンを通じて自社の通販やオンラインゲームサービスを提供することで、ファーウェイなどの携帯電話メーカーの1千元端末との差異化を狙う。
アリババの予想では中国のスマートフォン販売は2011年に7210万台、今年は1億1300万台に拡大する見通し。
ハイテク調査会社の米IDCによると、12年に世界のスマートフォン出荷に占める中国の比率が20.7%となり、米国(20.6%)を上回って初めて首位になるとみられている。
<中国の2011年10-12月携帯電話シェア>
1位 サムスン(韓):22%
2位 ノキア(フィンランド):15%
3位 華為技術(中):13%
4位 中興通訊(中):11%
5位 聯想集団(中):6%
6位 アップル(米):6%
7位 その他:26%
【記事引用】 「日経産業新聞/2012年6月8日(金)/3面」