世界最大の携帯電話見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」では海外の主要メーカーがスマートフォンの新製品などを相次ぎ発表したが、日本メーカーの世界市場向けの新機種の発表は皆無。
日本勢の「世界での存在感の無さ」が改めて浮き彫りになった。
●目立つスマホ開発遅れ
特に目立つのは、スマートフォン分野での開発の遅れ。背景には携帯電話に搭載する基本ソフト(OS)の急速な進化に対応できていない実態がある。
これまで日本の携帯電話のOSは、NTTドコモなどの通信会社がメーカーと共同開発してきた。
携帯電話の販売も通信会社が全量を買い取る「護送船団方式」が長く続き、新機種は2年後の技術進化を見据えて共同で開発を進めるのが慣習だった。
ところが、スマートフォンの普及でOS開発の主導権が米グーグルやアップルに移行。
世界の主流になりつつあるグーグルの「アンドロイド」の場合、半年に1回のペースでOSの仕様が変わる。仕様の変化に合わせて電話機の機能を素早く開発し市場に投入しなければ競争には勝てない。
販売数の差も響いている。フィンランドのノキアは、年約4億台の携帯電話を世界で販売しており、韓国サムスン電子の販売数も2億台。一方、日本では首位のシャープでも約1000万台に留まる。
グーグルは携帯電話メーカーと協力しながらOSを進化させているが、グーグルと関係を密にできるのはシェアが高いメーカーが中心となる。
だが、スマートフォン市場の急拡大は巻き返しの好機。
デザインや機能で優れた製品なら世界中で売れるようになったためだ。開発体制を見直し、高機能製品での強みを世界の消費者にどう訴えていくかが課題になる。
【記事引用】 「日本経済新聞/2011年2月15日(火)9面」