スマートフォンで、携帯電話メーカーが複数の通信会社にブランドや機能が同じ製品を供給するケースが増えている。これまでは、一つの通信会社に供給することが多かった。
通信の質だけでなく、機器の機能がより問われるだけに、メーカーは使いやすさや個性を競っている。
●機能ほぼ同じ
複数の通信会社向けの供給が増えているのは、米グーグルの携帯電話向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載する機器。大きさやデザインが若干違うだけで、機能はほぼ同じ。
英ソニー・エリクソンは6月下旬、KDDI(au)向けに「エクスペリア・アクロ」の供給を始めた。「エクスペリア」はそれまでNTTドコモ向けに供給してきた。
7月上旬には、ドコモ向けにも「アクロ」の販売を始めている。
「アクロ」は液晶ディスプレーに「クリアブラックパネル」を採用し画像表現の幅を広げたほか、高画質カメラを搭載するなど高性能を追求。ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信機能も盛り込んだ。
ソフト面でも「ソーシャルメディアの『フェイスブック』への接続しやすさは他にない機能」(ポートフォリオ&プロダクトマネジメント商品企画課の河村洋氏)という。
シャープは5月以降、「アクオスフォン」を通信会社3社向けに投入。ドコモは「SH-12C」、KDDIは「IS12SH」、ソフトバンクモバイルは「006SH」の名称で販売する。
細部のデザインはやや異なるが、3次元(3D)表示が可能な液晶ディスプレ-やボタンを一押しして3D写真が撮影できるツインカメラなど主要機能は共通。ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信機能も備える。
同社の液晶テレビ「アクオス」に無線で映像を送信し視聴できる。
また、「従来の携帯電話にある、本体に音声を録音する留守番電話機能を搭載するなど細かい使い勝手にこだわった」(パーソナル通信第一事業部商品企画部の小林繁氏)。
●機能競争激化
パナソニックモバイルコミュニケーションズは同社初となるスマートフォンを、ソフトバンク向け(スウィーティー003P)とドコモ向け(P-07C)に供給している。
若い女性や初心者の利用を想定した機能を盛り込んだ。グルメや天気などの情報を自動で通知する「フューチャープラス」など、ユニークなソフトを充実。
「使いやすさと独自性をどう出すか苦心した」(商品開発センターブロジエクトマネージャーの村本武志氏)。
メーカーが同一機能の製品を複数の通信会社に供給し始めたのに加え、携帯電話を特定の通信会社しか使えない「SIMロック」を解除する動きも本格化している。
消費者の機器に対する選択肢は広がっており、メーカー各社の機能競争はさらに激しくなりそう。
【記事引用】 「日経産業新聞/2011年8月25日(木)/31面」