携帯電話業界ブログ

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岐路に立つ日本の携帯電話メーカー スマホ普及で海外勢台頭、求められる他社端末との差別化

2012-05-01 | 端末メーカー/日本



 日本の携帯電話端末メーカーが岐路に立たされている。

 スマートフォンの普及に伴って海外勢が台頭し他社端末との差別化が求められるようになった。国内各社は海外市場に活路を求め、そのための武器として高齢者や女性を狙った機種やアプリの展開を強化する。

 スマートフォンに本腰を入れ始めて間もない会社が主導権を取れる市場は残っているのか試される。


●半分は海外製

 「我々は死の寸前。携帯電話端末の国内市場が年間4000万台いくかどうかという中で、半分くらいは海外製になってしまった」。ある国内メーカーの関係者はこう嘆く。

 苦境に陥った原因がスマートフォンの出遅れにあることは、多くの業界関係者が認める所。

 2008年7月にソフトバンクモバイルが米アップルの「iPhone3G」を発売。09年7月にはNTTドコモが米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した台湾HTC製の端末を投入した。

 海外製の端末がスマートフォン普及を先導した一方で、日本メーカーは「フィーチャーフォン」と呼ばれる従来型携帯電話の製造を続けた。

 NECカシオモバイルコミュニケーションズ(川崎市中原区)が初めてつくったスマートフォンの発売は11年3月。パナソニックモバイルコミュニケーションズ(横浜市都筑区)製は11年8月だった。

 スマートフォンで後発の日本勢は、他端末との差別化に苦慮している。ハードウエアの性能や使い勝手で絶対的な差をつけることは困難。OSも実質的にアンドロイド以外の選択肢が無い。

 従来型携帯電話が主力の時代は携帯端末向け地上デジタル放送のワンセグや電子決済できる「おサイフケータイ」など、日本固有のサービスを訴求して顧客を囲い込むこともできた。

 だが、昨今は海外メーカーがこれらの機能を搭載したスマートフォンを日本市場向けに投入する事例も出てきている。


●独自性発揮の手段

 こうした状況下でメーカーが独自性を発揮する一つの手段になるのは、プリインストール(事前搭載)アプリ。スマートフォン利用者は「アンドロイドマーケット」などのアプリ流通基盤を利用すれば、自分の好みに合ったアプリを探して使える。

 しかし、それらの操作が分からない、あるいは面倒だと感じる人も多い。そのため、通信事業者はいくつかのアプリをあらかじめ組み込み、ホーム画面に表示している。

 メーカーの裁量で事前搭載可能なアプリもあるため、やり方次第では高齢者や女性などスマートフォンに不慣れな消費者の利便性を高められる。

 例えば、パナソニックモバイルは、「ピースマート」という情報提供ウェブサイトを構築。スマートフォンの使い方や、お勧めのサービスについて解説している。利用者はスマートフォンのホーム画面上からアプリを起動すれば同サイトへ即座にアクセス可能。

 NECカシオモバイルは健康管理ができる「メディアスウェルネス」や、美容関連の「メディアスビューティー」といったアプリを展開。女性利用者の獲得を図っている。

 ただ、取り組み開始から日が浅いこともあり、こうしたサービスの存在がどれだけ自社端末の購買に結びつくのかは分かっていない。端末の販売や購入後の満足度調査は通信事業者に頼っていた部分も大きく、メーカーは消費者動向の把握に慣れているとは言えない。

 パナソニックモバイルやNECカシオモバイルは自社サービスの利用者を対象にしたメールマガジンを発行しており、登録者の個人情報を把握できる。

 しかし、その中から自社端末を買い続けてくれる人や、忠誠度が高い理由を割り出すには少し時間がかかりそう。


●マーケティングの重要性

 海外に打って出る際には、マーケティングの重要性が一段と増す。国内各社は日本市場の縮小に危機感を抱いていることもあり、海外でスマートフォンの販売拡大をもくろんでいる。

 だが、日本以上にアプリの利活用が進んでいる国もある。スマートフォンでブランドカに劣る日本メーカーが存在感を発揮するには「(海外事業者が未着手の)隙間の分野で戦うしかない」(松村孝表富士通ユビキタスビジネス戦略本部長代理)という。

 富士通は高齢者向けの従来型携帯電話「らくらくホン」で実績があり、、そのノウハウを武器に欧州市場の攻略を狙う。ただ、通話に特化した安価な端末とは張り合わず、あくまでスマートフォンで勝負する方針。

 「高齢者が意識することなくネットワークを介したサービスを使えることが大事」(同)という点を現地の通信事業者へ訴えて協業体制構築を進めている。

 日本勢はまず、どこにどんな隙間があるかを把握するのが急務となる。ニッチな分野であっても成功事例を作れれば、他地域での横展開も期待できる。そうした事例をどれだけ早く作れるか。残された時間は長くない。




【記事引用】 「日刊工業新聞/2012年5月1日(火)/6面」


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