国内の携帯電話メーカーが海外市場攻略に動き出した。
スマートフォンの普及という追い風が吹く一方で、ソフトバンクに続いてKDDIが10月から米アップルの「iPhone」の新機種の販売を始めるなど国内市場での競争が一段と激化している。
携帯電話各社は独自の技術力をテコに、新興国など成長市場の獲得を目指している。
●新興国市場を積極開拓
「国内市場も海外メーカーの躍進が目立っているが、黙っているわけにはいかない」。富士通が8日、都内で開いたスマートフォン新商品発表会で佐相秀幸副社長はこう力説した。
同社は、6月に中国で携帯電話の販売を開始。高速携帯サービスLTEに対応したスマートフォン新製品も海外展開する。
シャープは、中国へのアンドロイド対応のスマートフォン販売に続いてインドなど新興国市場を開拓。これに加えて、ドコモと端末を共同調達する仏通信会社オレンジ向けに3D液晶搭載のスマートフォンを10月に発売した。
NECカシオモバイルコミュニケーションズも、国内で好調だった薄型スマートフォン「メディアスWP」に新たに10色のカラーを用意。米ベライゾンなどの欧米キャリア向けに販売攻勢をかける。
国内各社はスマートフォン開発で海外勢に出遅れていたが、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した製品を積極投入。
安定需要が見込める国内だけでなく、欧米市場や今後高い成長性が見込める新興国市場を積極的に開拓していく戦略を打ち始めた。
●迫られる戦略再構築
MM総研によると、2011年度上半期の国内スマートフォン市場(約1000万台)のシェアはソニー・エリクソンやアップルなど外資勢が約6割。国内携帯電話市場約3700万台を巡る争奪戦は厳しい。
さらに、アップルはKDDIとソフトバンクに、販売するスマートフォンの半分以上をiPhoneとする契約を結んでいるとされ、特にKDDIは1000万台以上を課されている模様。
ドコモもサムスン電子のスマートフォンを看板機種に据え、国内重視とはいかなくなった。
アンドロイド搭載によるOS共通化が進み、「海外勢に攻め込まれもするが、逆に海外に打って出るチャンスもある」と野村証券の増野大作アナリストは指摘する。
国内各社は、海外キャリアとの関係強化など「生みの苦しみ」を伴う戦略再構築を迫られている。
【記事引用】 「日本経済新聞/2011年11月9日(水)/3面」