携帯電話業界ブログ

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スマートフォンのテザリング機能、ネット接続の中継担う 大手3社、導入には慎重

2011-05-05 | 携帯事業者/日本



 「テザリング機能」をうたうスマートフォンが増えている。通話やアプリケーションを楽しむだけではなく、中継機器として複数の端末をインターネットに接続できるのが特徴。

 スマートフォンの普及をさらに後押しすると期待される一方、通信網の混雑などを引き起こしかねないとの指摘もある。いわば「もろ刃の剣」に、携帯電話各社の対応も分かれている。


●8台の端末をネットに

 「テザリングを解禁します」。KDDI(au)の田中孝司社長は2月の新製品発表会で、スマートフォン「EVO(イーボ)WiMAX」をアピールした。

 NTTドコモとソフトバンクモバイルを含めた携帯大手3社で、テザリング機能を搭載したスマートフォンを売り出すのはKDDIが初めて。

 パソコンなど最大8台の端末をネットにつなげることができる。受信速度は最大毎秒40M(Mは100万)ビットで、動画もスムーズに楽しめる。

 テザリング機能で先んじたのは、「イー・モバイル」を展開するイー・アクセス。

 昨年12月にスマートフォン「Aria」を売り出し、今年1月には無線ルーターに通話機能などを追加した「ポケットWiFiS」も投入した。

 坂田大常務執行役員は、「出先でパソコンやiPadを使いたい人が増えてきたため」と説明する。

 日本通信もテザリング機能で攻勢をかける。月3000円程度で利用できる「IDEOS」を昨年末に発売し、ニーズの高まりに対応している。


●あえて無効に

 ただ、KDDlを含め大手3社は総じてテザリング機能には消極的。

 スマートフォンの基本ソフト「アンドロイド」は、バージョン2.2からテザリング機能を標準搭載としているにもかかわらず、日本の携帯各社はあえて無効にしている。

 実際、ドコモは3月発売のタブレット端末「オプティマスパッド」こそ例外としたが、スマートフォンについては1機種もテザリング機能がついていない。ソフトバンクも対応機種はゼロ。

 尻込みする理由は、第3世代携帯電話(3G)のネットワークが大混雑を起こしかねないため。

 スマートフォンはアプリケーションの取り込みなどで通信量は膨らみがち。通話から発展してきた3Gネットワークには、そもそも負担が重い。

 そこにパソコンや携帯ゲーム機のデータが大量に流れ込むと、通信速度が極端に遅くなったり接続できなくなったりする恐れがある。

 定額制が広く普及した今、一部ユーザーのテザリングで通信網がまひすると不満が爆発しかねない。


●減収も懸念

 サービスの重複による減収も懸念している。携帯各社はパソコン向けにデータ通信サービスを用意しているが、テザリング機能をフル活用すれば専用端末は要らなくなる。

 ホテルや駅、空港公衆では無線LANサービスも提供中だが、こちらも利用者が目減りしかねない。

 KDDIがテザリング解禁を宣言したスマートフォン「EVO WiMAX」では、こうした問題の解決策を示した。その名が示す通り、3Gネットワークとは別の基地局を使う高速無線通信「WiMAX」を採用。

 みずから整備したネットワークではないため回線を借りるコストこそ増えるが、3Gネットワークの混雑を防ぐことができるという。

 さらに、ユーザーにWiMAXの利用料金(525円)を別途負担してもらうことで採算にも気を配っている。

 SMBC日興証券の森行眞司シニアアナリストも携帯大手のテザリング機能は過渡期としたうえで「ドコモが次世代携帯電話LTEで導入した段階的な定額制も1つの解」とみる。




【記事引用】 「日経産業新聞/2011年5月5日(木)/6面」


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