スペイン・バルセロナで開かれた携帯電話の見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」が18日に閉幕した。
携帯電話世界最大手フィンランド・ノキアが出展を見送る一方、展示場内では中韓メーカーの存在感が際立った。これまでMWCと縁が薄かった米グーグルのトップが基調講演をするなど、産業の主役交代を印象づけた。
●MWCの主役の1社
「2月14日に、サムスンから新たな携帯電話が誕生します」。
韓国サムスン電子はMWCの開幕前から、会場の真向かいの建物に壁面を埋め尽くす巨大広告を掲出。MWCに合わせて発表した新たなスマートフォン「ウェーブ」ヘの期待感をあおった。
今回のMWCの主役の1社が、端末で世界シェア2位のサムスン電子だったのは間違いない。
メーンの展示場でも昨年までノキアが出展していたスペースを陣取り、展示面積を従来の5倍程度に拡張。次世代携帯電話「LTE」のデモを実施するなど、最先端技術で来場者らの関心を集めた。
昨年末に世界で初めてLTEを商用化したスウェーデンの通信大手テリアソネラは、サービス開始にあたってサムスンのLTEデータ通信カードを採用した。
ノキアのおひざ元である北欧でも、サムスンの勢いが増していることを裏付けた。
テリアソネラ移動通信サービス部門のケネス・カールバーグ社長は「あらゆるメーカーに声をかけたが、サムスンが最も納期を守って製品を出してくれた」とふりかえる。
4月以降に発売予定の新型データ通信カードも、サムスン製を採用するという。
●映し出す携帯産業の変化
欧州市場を席巻しているアジア勢はサムスンばかりではない。米調査会社によると、中国の通信機器大手ファーウエーは2009年7~9月期に世界の無線通信インフラ市場で2位に躍進した。
09年10月~12月期は3位に戻ったものの、すでに最大手のエリクソンなどと肩を並べる実力を備えている。
MWCの会期中には、スウェーデンで新たにLTEサービスを始める通信会社ネット4モビリテイーから、LTEの通信インフラを単独受注したと発表。
17日の調印式に参加したファーウエー幹部は、「基幹ネットワークから無線アクセス、通信》端末まですべて我々が手掛ける意味で、とても重要なプロジェクトだ」と強調した。
今回のMWCの最大の目玉である16日の基調講演には、グーグルのエリック・シュミットCEOが登壇。
「3年以内にスマートフォンがパソコンの販売台数を抜くだろう」と述べ、今後、同社は携帯電話向けを最優先にネットサービスを開発する「モバイル・ファースト」という方針を表明した。
MWCは、元々欧州の通信事業者や通信機器メーカーを中心に始まったため、従来は「ノキアのための見本市」とも呼ばれてきた。
今年は景気低迷の影響でかつてのような賑わいはないとの指摘もあったが、参加企業の顔ぶれを通じて、携帯電話産業の変化を映し出したのは間違いない。
【記事引用】 「日経産業新聞/2010年2月19日(金)/3面」