韓国のサムスン電子とLG電子の業績格差が鮮明になっている。
スマートフォン事業の収益力に差があるためで、LGが26日発表した7-9月期の営業損益は319億ウォン(約3円)の赤字。一方のサムスンは同じ時期にスマホの販売台数で世界首位に立つ快走ぶり。
製品の急速な世代交代への対応力で明暗が分かれる電機業界の現状を映し出している。
●従来戦略通用せず
「スマートフォンと従来型携帯の販売台数が減った」。LG電子の鄭道絃(チョン・ドヒョン)副社長は同日の決算会見で、携帯事業の長引く不振が赤字の要因だと説明した。
売上高も前年同期比4%減り、12兆8972億ウォン。鄭氏は10-12月期の黒字転換を明言しなかった。
携帯電話を手掛けるモバイルコミュニケーション部門は6四半期連続の営業赤字となり、金額は1388億ウォン。スマートフォンを含む携帯電話の販売台数が2110万台と4-6月期に比べ、15%減ったことが響いた。
利益率の低い従来型の出荷を絞ったが、肝心のスマートフォンも伸び悩み、薄型テレビや白物家電の原価節減で赤字を吸収しきれなかった。
LG電子は従来型携帯で世界シェア3位。それがスマートフォンに乗り遅れた理由は、デジタル製品の世代交代が速くなり、先行メーカーに追随する従来戦略が通用しなくなったため。
製品開発でサムスン電子の先行を許し、鄭副社長が昨夏、「意味のある製品が無い」と吐露するまでに追い込まれた。
今年に入り戦略機種を次々に投入したが、ハードの機能面で上回る「ギャラクシーSⅡ」をサムスン電子が発売。製品投入が後手に回り、1年半にわたってLG電子の足を引っ張っている。
●経営資源スマホに集中
一方、サムスン電子は2009年11月に韓国市場に登場した米アップルの「iPhone」を見て、経営資源をスマートフォンに集中。10年6月には4型の有機ELパネルを積んだ「ギャラクシーS」を投入、アップルに追いすがった。
サムスン電子が7日発表した7-9月期の営業利益の見通しは、4兆2000億ウォン前後。前年同期比14%減だが、スマートフォンの急伸でアナリストの予測を大きく上回った。
新機種登場の直前で買い控えられたアップルを抜き、四半期ペースのスマートフォン販売台数で初の世界首位になったとみられる。
LG電子は巻き返しのため、高速携帯電話サービス「LTE」に対応したスマートフォンの拡販を急ぐ。韓国に続き、日米で近く発売する。ネット閲覧でも「サクサク動く」高速性が売りだが、サムスン電子もLTE機を公表済みで、先手を打てるかは不透明。
従来型携帯で世界首位のノキアも、スマートフォンヘの対応が遅れて業績が低迷。スマートフォンやタブレット端末の市場の急速な変化は、出遅れた世界の主要企業を次々に低収益に追い込んでいる。
【記事引用】 「日経産業新聞/2011年10月27日(木)/6面」