やっぱり突き抜けた名人だった。
11年前、76歳で逝ってしまった落語家の立川談志。円熟期の高座を聴く。まくらの喋りはともかくも、やっぱり噺がうまい。独特の世界に引き込まれるように聴き入ってしまう。
名人と呼ばれる落語家でも、ほとんどの噺家は覚えた語りを筋通り追って機械的に噺す。だが、談志のそれは、場の空気を読みながら次第に談志の空気で覆って、やがて客をみんな持っていってしまう。引き込まれるように噺の場面のそこへ連れて行く。
うーん、やっぱり突き抜けた名人はちがう。
そんな談志の噺を聴きながら、談志と同じように会場の聴衆を持っていってしまう教授の講演のシーンが浮かんでいた。会場の空気をみて用意していた講演のネタをすっかり変えてしまう喋り。そして聴衆をスーッと引き込んで持って行ってしまう。
ドカーンと何度も笑わせ、ホロッとさせ、ちょっと考えさせられる。「先生」と名の付く人の退屈でつまらない講演ばかりなのに、ずば抜けてオモロイ。まさに談志と一緒で、天才の喋り。
そういえば、同年代の談志の死を教授も惜しんでおられた。