タレントがやってもいないオークションで落としたことをブログに挙げていたことが話題になっている。
タレントを隠れ蓑にしたステマ(ステルス・マーケティング)ではないかと。
「IT企業」と持てはやされても、そのほとんどの実態はこんなものというのが実情。
さて我が愛読紙である朝日新聞。昨日(土曜日)は投票日の前日ということで選挙の記事が紙面のあちこちを賑わせた。
読んでいて「うん?」と思った記事がある。39面(いわゆる三面記事)のトップ。
見出しは「絵空事 もううんざり」「候補の言葉 聞こえぬ」と2つ大きく並んでいる。
以下の8人の政党/候補者の論戦に対する評価とコメントをもらい、それを記事にしたもの。
煩雑ではあるがその一部を書き写してみると:
1. ケイコさん(25)会社員/東京都 女性--民主/民主
2. コバさん(30)証券会社員/東京都 男性--維新/維新
3. ジュンコさん(36)主婦/茨城県 女性--検討中/検討中
4. トシさん(48)タクシー運転手/群馬県 男性--未来?維新?自民?
5. マサさん(49)元派遣社員/横浜市 男性--民主
6. ササキさん(55)内職業/宮城県 女性--自民だが本音はだれでもいい
7. アキラさん(64)コメ農家/青森県 男性--維新/維新
8. マコトさん(76)町工場経営/東京都 男性--自民/維新
とそれぞれの意見を表にまとめている(原文には番号はなし)。
記事本文における各人のスペースと出てくる順番を見てみると
5. マサさん(49)元派遣社員/横浜市 男性--民主
画像の赤枠最初の2つ
3. ジュンコさん(36)主婦/茨城県 女性--検討中/検討中
画像の赤枠の3つめと4つめ
「公示前は民主にはまだ期待している」、今は投票したい政党はない」だそうだが.....
6. ササキさん(55)内職業/宮城県 女性--自民だが本音はだれでもいい
画像のブルー枠の3つ。表では「自民だが本音はだれでもいい」とあるが、記事の文章では
「積極的に投票したい政党が見つからない」とある。
2. コバさん(30)維新/維新で、「自民優先との報道に肩を落とす」という「文学的な」表現
画像のグリーン枠の1つ。
8. マコトさん(76)町工場経営/東京都 男性--自民/維新
画像のブルー枠の3つ。自民候補の集会に参加した。安倍総裁のキャッチコピーばかりという
ネガティブな表現。見出しの「候補の言葉 聞こえぬ」は、ここを指していることがわかる。他には
そのような部分はない。
次の枠は全体をまとめたような部分。
「何か1つでもよくなるのか疑問」「古い政治に逆戻りするだけ」 。
「8人中6人は自民政権が誕生しても期待しないと回答した」と総括している。
しめくくりとして、3. ジュンコさん(36)が再登場し「民主の失敗を繰り返してはダメだ。どの党もそう実感していると思う。何かが変わる、ともう一度期待したい」と記事をまとめた。
スペースの配分、文章のもって行き方(読者を誘導させたい方向)に作為がある。
「民主は失敗を繰り返してはダメだ。今度は何かが変わるから、一度やらせたい」ではないか?
1. ケイコさん(25)と4. トシさん(48)の意見は記事本文にはない。
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高学歴な層を読者とする、日本のクオリティペーパーと自認している(と思うのだけど)我が愛読紙だけのことはある見事な記事だ。
世代、男女数のバランスをとり、さりげなく意見を並べているのだが、そこには巧妙に、あるいは狡猾なといえる、ある方向に導こうとする意図が見え隠れしており、読んでいて不快になる。表と本文を照らし合わせると、民主にはポジティブさを、自民にはネガティブな印象を持たせる言葉が使われていること、特に最後の2つの部分は誘導そのものといえる。
「もう一度期待したい」の「もう一度」とは?
記事本文にはなぜか登場しないケイコさん(25)だが、民主を選ぶようで、表では一番上にあり目立つ。
「何か意図があるのでは?」と訊かれたら「いえ、ただ年齢順に並べただけです」という言い訳もたちそうだし。
そもそも、このケイコさんは本当にいるのだろうか?もしかするとケイコさんだけでなく他の7人ももしかするといないのではと勘ぐりたくもなる。我が朝日新聞はこれまでも何度か記事の捏造をしてきた大いなる「功績」があるのだから.....
こんな回りくどい小細工をせずに、我々、朝日新聞は「民主党を支持します」と表明するだけで事足りるのではないだろうか?
この前のアメリカ大統領選挙では、新聞社はどの候補者を支持するのか明らかにしていたという例もある。
5面の編集委員署名記事の最後は「....衆院選では、将来世代のために「痛み」を含めた政策を示しているかをみて欲しい」と締めくくっている。
どこか他人事のようではないか。ま、どんな風に書こうが、この記事を読む人は少ない(ほとんどいない)とタカを括っているのかもしれない。
各党がそれ(「痛み」のこと)をどのように示しているかを取材、精緻に分析して記事として読者に提供することで紙面の価値が上がるのではないかと。これではまるで小学生の感想文と言われてもしかたがない。
新聞、あるいはもっと大きく広げて紙を媒体とするメディアがオンラインに押される原因はこんなところにもある。
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もう一つ面白かったのが声欄
札幌市在住の男性(65)無職の投書「TPPより移民の開放進めよ」
その主旨は「一定の移民を受け入れる。日本は古くは移民国家なのだから。社会の活力は文化の多様性から生ずることを、もう一度実証する時だ」
声欄とは、読者の投書を(おそらく)そのまま載せるというスペースと、購読者は思っている(あるいは思わされている)。
しかし、投書のすべてを掲載することは物理的にも不可能だろうし、なによりも新聞社の方針と大きく異なるものはボツだろう。
編集権が新聞社にある、つまりそこに新聞社の考え、意向、意図があると考えるほうが自然。
海外、特に欧州ではすでに「多文化主義は失敗した」と判断し、移民の受け入れの制限へと方向転換しているのだが、朝日新聞社には海外支局はないのだろうか?
このような場合、(日本より進んでいる)欧米先進国では「すでに○○になっている(その一方、日本ではそうなっていない、遅れている)」というレトリックが使われることが多いのだが、今回ばかりは都合が悪い。
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こういった読む愉しみがある。朝日新聞を読む魅力の一つだ。
さて選挙結果に対してはどう反応するだろうか?