
照る日曇る日 第1040回
名前の通り古今東西百学の智に満ちたインテレクチャルな詩集である。
作者はこの国の文芸が湿潤かつ情緒的であることに辟易して、あえていわゆるひとつの高踏的で詩文を大脳前頭葉で操作しようちしているのだろうが、いくら読んでもたとえば大関松太郎の泥土歌謡のようにその乾いた詩魂が心に沁み込んでこないのはなぜだろう。
タイトルと同名の「川のほとり」という詩も黄泉の川の渡し船守、カローンとか、妻エウリデイーチェを探す楽人オルフェウスなどのギリシア、ローマ神話の故事が念頭に置かれているのだろうが、だからといって別に詩的感興がにわかに湧いてくるような気配もない。
私は、頭の中でこね繰り返されたような前半の韻文よりも、むしろ最後に置かれた3篇の散文詩の童話的な夢幻のほうに魅かれたことであった。
「反原発」を封じて外相になれる人いずくにありや政治家の信念 蝶人