あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

谷川俊太郎・岡野大嗣・木下龍也著「今日は誰にも愛されたかった」を読んで

2022-04-30 09:23:04 | Weblog

照る日曇る日第1739回

 

詩歌界の超ヴェテランと極超新鋭3人ミサイルによる連詩歌集ずら。

 

連詩というても正式のそれではなく、岡野が詠んだ「ベランダに見える範囲の春になら心をゆるしても大丈夫」を皮切りに、谷川選手が、「思い出すなつかしいあの日と/反芻をくり返すくやしいその日と/今日のこの日もいつかは日々になってしまう」と受ける。

 

それを木下選手が「かなしみのフルコースです前菜はへその緒からのはるかな自由」と谷川に返し、

 

常に谷川の詩を通す形で、2人の歌人がボールを打ち合うやり方で2019年1月6日から5月13日まで続けられたラリーの記録である。

 

が、実作よりも後半部の3人による感想戦の方が圧倒的に面白かったのは、この企画の発案者であり感想戦の司会役でもあるナナロク社の村井社長のたくみのせいだろう。

 

全篇を通じて谷川選手の海千山千ぶりと木下選手の純情あとがきが深い余韻を残す好著である。

 

          戦争は果てなく続き四月尽 蝶人

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本郷和人著「鎌倉殿と13人の合議制」を読んで

2022-04-29 13:24:32 | Weblog

照る日曇る日第1738回

 

大河ドラマの開始と同時に、またしてもさながらプーチンのように御家人の宿敵を暗殺しまくった北条一族の死都鎌倉に、観光客が押し寄せ、苦々しい限りだが、それはさておき、頼朝から時政、義時の時代の概説書のなかで、唯一まともに「鎌倉殿と13人の合議制」について論じた新書本が本書です。

 

著者は五味文彦選手と共に「吾妻鏡」の現代語訳を完成させた歴史学者であるが、テレビなどで見かけるその風貌と言説はいささか漫画家風で、これまで敬して遠ざけてきたのだが、構成がハチャメチャで、文体がアカデミックどころか楽屋落ちの落語風であるにもかかわらず、一読して感銘を受けたのは、彼が無味乾燥の文献学者ではなく、まじかに富士山を見て感動する詩人であり、歴史の真実を時空の広がりの中で透視できる直感力を備えた、繊細な哲学者でもあることを知ったから、だあね。

 

最近の研究では、2代将軍頼家の権限を剥奪した「13人の合議制」など存在せず、13人の権限とは頼家への取次権のみであったとされているので、その点は五味選手の認識とは異なるが、ともかく類書とは一頭図抜けた読み物であることは間違いありませぬ。

 

ところで、君知るや。13人の内訳は時政(1138-1215)と義時(1163-1224)をはじめとする7人の武士と4人の文官なりしを。

 

 その文官は頼朝の旧知の中原親能(1143-1208)、京情報を頼朝に伝送していた三善康信(1140-1221)、親能の義兄の大江広元(1148-1225)、頼朝の母ゆかりの熱田大宮司家の二階堂行政の面々ですが、この実務官僚を幕府運営の柱に置いたことが足利、徳川にも欠落していた鎌倉幕府の先見性だったそうです。

 

北条以外の武士は、伊豆の流人時代以来の側近、安達盛長(1135-1200)、挙兵以前からの源氏の家人、足立遠元(生没不詳)、頼朝の乳母、寒川尼の兄弟で重臣の八田知家(生没不詳)、石橋山の合戦で頼朝の危機を救った知将、梶原景時(?-1200)、頼朝の乳母、比企尼の養子で頼家の義父、比企能員(?-1203)、源氏累代の御家人、三浦義澄(1127-1200)、義澄の甥で侍所の初代別当、和田義盛(1147-1213)の面々です。

 

このうち当時北条一味と誼を通じたガチンコ仲間は、三浦義澄、和田義盛、安達盛長の3人だから北条派は5人。反北条派は、比企能員、八田知家、梶原景時、足立遠元の4人だったが、彼らは前者と違ってバラバラで、てんで統率が取れていなかった。

 

実際、時政が主導した梶原景時追放事件に際しても比企、八田、足立は源頼家同様、大所高所に立たずにパージに賛成して、結句、自らの墓穴を掘ってしまいます。

 

とまあ、細かく見れば見るほど北条の悪辣非道がドタマに来る陰惨なウクライナ史ならぬ鎌倉史なのですが、この連休に鎌倉観光なぞに出かける代わりに、ワルター&ウィーン・フィルのモザールなどを聴きながら、本書を紐解かれるのも一興かと愚考する次第でR。

 

     宿敵をみな斃したる北条氏「いざ鎌倉へ」と諸君を招く 蝶人

 

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西暦2022年卯月蝶人映画劇場その6

2022-04-28 15:28:08 | Weblog

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.2840~44

 

1)今村昌平監督の「神々の深き欲望」

1968年製作、今村渾身の代表作。60年代アナーキーの極をここに見る。

 

2)溝口健二監督の「愛怨峡」    

山路ふみ子がその真価を発揮した1937年の傑作。トルストイの「復活」が原作らしいが翻訳劇らしからぬリアルな「女の一生」物。

 

3)市川昆監督の「映画女優」

吉永百合が田中絹代を演じる1987年の作品だが、なんで溝口監督役が菅原文太なのか不可解ずら。

 

4)工藤栄一監督の「十三人の刺客」

片岡千恵蔵主演の1963年の時代劇。ラストのチャンバラがリアルだとかいううが、黒沢の「七人の侍」の足元にも及ばない。

 

5)溝口健二監督の「西鶴一代女」

1952年の冬に撮影した溝口の秀作。田中絹代がお嬢様から夜鷹までを熱演する女の一代記ずら。

 

   世界一の村田選手がも一人の世界一に打ち倒されし夜 蝶人

 

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小野寺悦子ぶん・きくちちき え「もじもじ こぶくん」を読んで

2022-04-27 17:08:06 | Weblog

照る日曇る日第1737回

 

アイスクリーム屋さんでアイスを買おうとするのだが、引っ込み思案でなかなか注文できない仔豚のこぶくん。

 

でも足元にいたちっぽけなありのありいいちゃんが、「いちごあじのアイスを下さい」と叫んでいることに勇気づけられ、ありいちゃんを肩の上に乗せて、やっといちごあじとチョコあじの2個のアイスを注文することができました。

 

メデタシ、メデタシだったが、絵の方がちょっと弱いかな。

 

  私の名「佐々木真」は誤りで「佐々木 眞」が正しいのだった 蝶人

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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚葬祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.116」

2022-04-26 15:47:22 | Weblog

西暦2022年弥生蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第406回

 

  • 両親の銀婚式を祝う末娘のスピーチ

お父さん、お母さん、銀婚式おめでとうございます。*1

 

真理絵は、最近1週間ほど今日のお祝いを何にしようかな、とすごく悩んで夜も眠れなかったのですが、たまたま二人のメールアドレスを見たら、お父さんはアマデウス、お母さんはタンポポという英語を使っていたので、よし、これだと思い、お父さんにはモーツァルトのCD、お母さんには近所の原っぱに咲いていた日本タンポポのお花で首飾りを作ったのをプレゼントします。*2

 

さて、うちのお父さんはとっても優しくて真理絵はいままでに一度も怒られたことはありません。でもわたしの顔を見ると、「おい真理絵、今晩いっしょにお風呂入ろう」と口癖みたいにいうのは止めて欲しいと思っています。

 

お母さんもとても優しくて可愛がってくれるのですが、わたしの顔を見ると、「真理恵ちゃん宿題やった」とたずねるのは止めて欲しいと思います。

 

その二つを除くととってもいいお父さんとお母さんです。真理絵はこれからもずっと3人で暮らしたいと思っています。どうかおふたりとも体には気をつけて長生きしてください。

 

  • アドバイス
    • 1銀婚式の祝いの品は、通常はペアで使えるものや花などである。ここでは幼い末娘の個人的なチョイスを優先したが、花の場合は花言葉に留意する必要がある。
    • 2このような非公式の場面では、多少家族のプライバシーが垣間見えてもほほえましいものとして見逃されるだろう。

 

  プーチンなんか死んでしまえと思いつつチェーホフなんかを夢中で読んる 蝶人

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「夢は第2の人世である」あるいは「夢は五臓六腑の疲れである」第111回

2022-04-25 11:18:34 | Weblog

西暦2022年睦月蝶人酔生夢死幾百夜

 

おらっちはパーティで与太話をしていた貴族から、その街を発展させる計画についての感想と協力を求められたので、すぐさま断ったのだが、それは、そんな難しいことなんか、自分で出来っこないと分かっていたからだった。1/1

 

私は大阪城を大掃除していたおばはんの実態が、掃除婦ではなく、腕利きの印刷屋であると知ったので、新しい1万円札が出回る前に、偽札作りに協力してほいいと頼んだが、あっさり断られてしまったのよ。1/2

 

歯が痛い、歯が痛いと七転八倒する息子を見ていると、可哀想になって来て、そうだ日々を無為に過ごしている父親の自分が替わってやろう、と思いついたのだが、どうすれば入れ替わることが出来るのか分からなくて、往生している。1/3

 

正月になっても、朝から晩まで町内をほっつきまわっている夫婦がいるので、「どうしたの?」と訊ねると「暮れからうちの愛猫が行方不明なので、正月どころではないんです」と答えてから、またあちこち探し続けるのだった。1/4

 

犬派と猫派のふた手に別れて新春大討論会が開かれたのだが、両者相譲らず、まるで革マルと中核派のように武装して、時ならぬ大ゲバルト大会が始まった。1/5

 

「雨が降っても、雪が降っても、槍が降っても、おらっちは断固として前進するぞ!」と息巻いていたら、本当に雨と雪と槍が降ってきたので、ちと驚いている。1/6

 

若輩ながら販売チーフに抜擢されたおらっちは、年長の先輩たちに天文学的な売り上げノルマを課したので、たちまち総スカンを喰らい、その会社から追放されちまった。1/7

 

ここは陸軍の散髪屋なのだが、軍隊刈りのショートカットにあこがれる大勢の市民が、門前市をなして詰めかけている。1/8

 

明日からダム工事が始まって、村は湖底に沈められてしまうので、おらっちたちは、三々五々涙をぬぐって、住み慣れた襤褸家を後にした。1/9

 

生来おっちょこちょいのおらっちは、よせばいいのに両組の出入りの最先端に飛び出したので、あっというまに全身をなますのように切り刻まれて、儚いいのちを散らせてしまった。1/10

 

「「フィガロの結婚」を聴く前に、お互いの言い分を言いあって手打ちにしようぜ」と、敵の親分が提案したのだが、その時遅く、かの時早く、オペラの序曲が始まってしまった。1/11

 

その戦士は、女子供には傷一つつけないで、敵の男どもを皆殺しにしていくのだった。1/12

 

横浜市では毎年スポーツ大会を開いているので、それをそのまま毎年五輪に昇格することにしたそうだ。1/13

 

リュウホウ部長が、「企画のヒサミツ課長と相談して、新ブランドのPR案を考えてくれ」というので、おらっちは急遽、中目黒に出向いたのよ。1/14

 

木造の古いモナコホテルには、無数の貧民たちが住んでいるのだが、ここに30年以上住み続けると、その部屋を無料で払い下げてくれるので、とても人気があった。1/15

 

われひとは、何故か人世に失敗したのではないか、という疑いにとらわれて、城門の傍らで長く立ちずさんでいた。1/16

 

街中を歩いていたら「相撲取りになりませんか?」と勧誘されたのだが、人から勧誘されたのは生まれて初めてなので、「相撲取りになってみようか? どうしよう?」と、ずっと悩んでいるのよ。1/17

 

ゲーム カナリチ エニンシア カーターなどになって叩く僕。1/18

 

ボク、紅衛兵用の新品マスクを付けて「気をつけー!」で 「エライ、エライ」と、誉めてもらった。1/19

 

おらっちは新入社員なので、先輩たちに「おはようございます」と挨拶すると、「おい、そういう月並みの挨拶をしていると、すぐに社長から首にされるぞ」と警告された。1/20

 

八幡様の二ノ鳥居の傍で休んでいると、左側に自転車に跨ったセイさん、右側には仲間と連れだって歩いているセイさんがやってきたので、おらっちはどっちに声を掛けようかとしばらく考え込んでいた。1/21

 

そのマラソンレースは、ちと風変わりで、走者は、1キロ走る毎にシェークスピアの芝居のせりふ、例えば「生きるべきか、死ぬべきか」を喋らなければならないのだった。1/22

 

毎年大学を留年ばかりしているので、今年こそは卒業するぞ、と心に誓って久しぶりに登校したが、自分に必要な単位と講座がさっぱり分からないので、ただただキャンパスの中をうろうろしているのよ。1/23

 

新しいCMの製作を依頼されて、まずその企画内容の予告編を作らなければならないのだが、じつはおらっちビデオの撮影はやれても編集作業なんてやったこともないので、ひどく消耗しているとこ。1/24

 

どういう風の吹き回しか、おらっちはリーマンになっている。総務から机と椅子や文房具一式が届けられたので、とりあえず座ってあたりを見回してみると、なんだか嬉しくてたまらぬ。こんなに仕事がしたくなったのは、じつに生まれて初めてのことである。1/25

 

しかしここはどういう組織で、どういう仕事をすればいいのだろう。そもそもこの会社の名前はなにで、どういう職種に属するのだろう?誰かに聞いてみようと思うのだが、みな忙しそうに立ち働いているので聞けない。そうこうするうちにお昼になったので、弁当を使ってお茶を飲んだ。1/26

 

眠くなったので昼寝をしようかと思ったのだが、ふと午後いちで試写会があったことを思い出し、急いで会社を出てから地下鉄に乗って銀座で降りて試写会場に入ったら、顔馴染みのキサラギさんがいたので、ちょっと会釈して安楽椅子に座って映画鑑賞しているうちに眠ってしまった。1/27

 

しまった、これは申し訳ないことをしてしまった。試写会で見る映画は9割がたは詰まらない映画なのだが、今日のはそれほど酷い映画ではないので、ちゃんと終わりまでみようと思っていたのに、寝てしまった。これで感想文を頼まれても書けない。困った、困った。1/28

 

どうしたものかと考えてみたら、さいわいまだ試写は数回あるので、また来ればいいやと思いついて外に出たら、もう誰もいない。みんな3時半からの試写に行ってしまったのだ。おらっちも負けてなるものか、と銀座の別会場の試写会に駆けつけて、今度は居眠りしないで最後までしっかり見届けた。1/29

 

終って外に出たらもう5時半だ。これで会社に戻っても仕方がない。6時からはクロコダイルでロック、渋公でパンク、武道館では松田聖子のコンサートがあるので、急がなくっ茶。明日から午前中に会社の仕事をして、午後からは映画とお音楽にしようと決めた。1/30

 

ふぁっちょんライターのおらっちが久しぶりに巴里に行ったら、今年の秋冬のトレンドガ「ステルス・ろまんちっく」から「極超レアル」に180度大転換している、という話だったので、こないだアンアンに書いたお洒落速報を書き直そうと連絡したのだが、もうデリバリー済だった。1/31

 

   プーチンの「軍事作戦」さながらに日本も韓国を併合したり 蝶人

 

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西暦2022年卯月蝶人映画劇場その5

2022-04-24 10:31:57 | Weblog

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.2835~39

 

1)マーヴィン・ルロイ監督の「クォ・ヴァデス」

ポーランドの作家シェンキヴィチの原作を「主よ、どこへ行かれるのですか}をロバート・テーラー、デボラ・カー主演で1951年に映画化したが皇帝ネロ役のユスティノフは芸達者ずら。

 

2)レオ・マッケリー監督の「めぐりあい(邂逅)」

船旅で知り合い、エンパイアステートメント最上階で再会しようと誓ったアリーン・ダンとシャルル・ボワイエのラブストーリー。交通事故に遭ったことをなんですぐに男に連絡しないのか不可解な1939年の映画ずら。

 

3)セルゲイ・エイゼンシュタインの「戦艦ポチョムキン」

時は今、ウクライナのオデッサ港での革命騒ぎをリアルに描く。端緒はやはり食い物。ウジが湧く肉なんて食えないずら。1925年、有名な大階段の乳母車の撮影はさぞや赤ちゃん怖かったろうな。

 

4)マーヴィン・ルロイ監督の「犯罪王リコ」

ギャングにうってつけのちんぴらヤクザ、エドワード・G・ロビンソンの短く儚い哀れな末路。しかしプーチンと同様誰も同情しないだろう1931年の暴力反対映画。

 

5)グレゴリー・ラトフ監督の「別離」

有名ヴァイオリニニストのレスリー・ハワードが、若くて美貌のバーグマンに恋して平和な家庭が滅茶苦茶になるが、やっさもっさの挙げ句元の鞘に収まる1939年のお噺。バーグマンが良かったのはフレミングの「ジャンヌ・ダーク」くらいか。

 

 八っあんやクマさんにも出来る「解説」を「専門家」から聞かされる毎日 蝶人

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ハサン・ムーサヴィー作・愛甲恵子訳「ボクサー」を読んで

2022-04-23 11:44:10 | Weblog

照る日曇る日第1736回

 

テヘラン在住の若い作家による国際的に話題の絵本なり。

 

海山動植物と森羅万象を殴り続けるが、あるとき、自分は「何のために殴り続けてきたのかとはたと立ち止まり、父母をしのびながら殴る対象を明確にして第2の人世を切り開いていく、という倫理的なテーマを持つ絵本だ。

 

が、そんな屁理屈より、作者の絵に圧倒的な美と力と輝きがある。

 

  超音速の上にさらに極がつく いかなる武器か極超音速ミサイル 蝶人

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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚葬祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.115」

2022-04-22 09:54:22 | Weblog

西暦2022年弥生蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第405回

 

  • 友人の銀婚式を祝うスピーチ

田中君、そして奥さんの郁子さん、このたびは銀婚式おめでとうございます。私は田中君の高校時代からお付き合いをさせていただいております門と申します。*1

 

こうやってお二人が並んですわっていらっしゃる姿を拝見しておりますと、いまからちょうど25年前のあの日の姿が昨日のことのようによみがえってきます。*2

 

今だから申し上げますが、このお二人を結びつけたのは、他ならぬ私と家内なのです。いや、正確には音楽の神様ミューズのなせる業だったのです。

 

当時音大のバイオリン科を出てから勝手きままな独身生活をエンジョイしていた田中君の行く末を案じた私ども夫婦は、ある日自宅に彼を招待しました。

 

なんにも知らないでやってきた田中君を待ち受けていたのは、才色兼備のひとりの女性でした。当時、郁子さんは私の家内と同じ音大を卒業されてピアノの教師をされていました。

 

その晩、食事を終えた後私たち夫婦のすすめで田中君と郁子さんは、ベートーベンの「クロイツェル・ソナタ」を合奏してくれましたが、それははじめての顔合わせとは思えぬ見事なものでした。

 

昔の中国に*3「琴瑟相和す」という言葉がありますが、まさに初対面のふたりはバイオリンとピアノでお見合いをし、たちまち恋に落ち、熱情的に愛し合うようになったのであります。*3

 

「始めは処女のごとく、終りは脱兎の如し」とは、まさにその折のふたりの演奏を的確に捉えた表現と申せましょう。これを「音楽の奇跡」といわずしてなんというべきでしょうか。

 

25年前の結婚式は、ご親族に私たち友人を加えた少人数で小さな教会で挙行されましたが、その後のパーティで再び演奏された「クロイツェル・ソナタ」は、愛することのよろこびが爆発的に表現された一世一代の名演でありました。あれがビデオに収録してあれば、といつも家内が惜しんでいたほどの素晴らしさでした。

 

それからのおふたりの活躍については私よりも皆さんのほうがよくご存知でしょう。

田中総司&郁子のデュオは、国内のみならず世界各地で好評を博し、とりわけニューヨークのカーネギーホールで行われたリサイタルは、ニューヨークタイムスに取り上げられて絶賛されました。*4

 

私と家内は、このような世界的な演奏家コンビの生みの親であることを誇りに思っています。田中さん、郁子さん。どうかこれからもお元気で充実した演奏活動を続けてください。そして、今夜私たちの思い出の曲「クロイツェル・ソナタ」を演奏してくださいますようお願いしまして、お祝いの言葉に代えさせて頂きます。

 

  • アドバイス
    • 1 25年間の長い歴史を振り返って、エポックメーキングな思い出を拾い上げてみよう。
    • 2 友人との密接な関係をできるだけ客観的に、面白く紹介すると会場の雰囲気も盛りあがってくるだろう。
    • 3話し言葉の中で漢語や熟語の決り文句を挿入してみよう。説得力が高まりスピーチが立体的になる。
    • 4物語のエピーローグは、ふたたび友人と話者の強い絆の再確認と今後の健康、活躍への期待で結ぶとよい。25年目の現在でこと足れりとせず、それ以降のアクティブな活動を視野に入れてスピーチできればなおよい。

 

   ロシアには殺したい奴が一人いる口には出さぬが皆そう思う 蝶人

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「夢は第2の人世である」あるいは「夢は五臓六腑の疲れである」第110回 

2022-04-21 15:50:06 | Weblog

西暦2021年師走蝶人酔生夢死幾百夜

2021年12月

名物カメラマンの写真の撮り方は、まず顔から始まって、次にボディ、次に全身、最後にまた顔のアップに戻る、というものだった。12/1

 

展覧会その1では1000円の入場料を取り、その2では無料どころか茶菓までサービスしていたので、10年も経つと両者の経営には大きな格差が生じたようだった。12/2

 

おらっちはひそかにA子を贔屓にしているのだが、それを他人には知られず、当の本人だけに分かるように伝えるにはどうすればよいか、あれこれ迷っていた。12/4

 

おらっちは源氏の末裔なので、もしも敵に襲われて捕虜になっても恥ずかしくないような由緒ある衣装を身に纏っていなければならないと思うのだが、それがどういう格好なのかさっぱり分からないのよ。12/6

 

「酒を飲めないこの子たちは、アッパークラスのバーで修行させたらええ酒飲みになると思うがな」と、さる酔っ払いがいうたずら。12/7

 

死にかけの痩身の老人の分際で、まだ名前もついていない難病中の難病を、3つも抱えこんでしまったもんだから、湘南鎌倉病院に行っても医者が喜ぶばかりで、いっこうに治してくれないので、雨の水曜日を自宅で静養することに決めた。12/8

 

私は、東西南北を行き来しながら、すべての営為の虚しさを、嫌というほど思い知らされていた。12/9

 

バーンスタインの私は、ブラームスのヴァイオリン協奏曲の劇伴だけをつとめて、ニールセンの交響曲なんかは、三流指揮者の棒に任せて帰宅した。12/10

 

整形外科の先生が「その後どうですか?」と聞くので、「相変わらず痛いです」と答えると、「じゃあ注射でもしてみますか」と言うので、「痛いのは嫌ですよ」と言うと、「ちょっとピリッとするだけですよ」と言うので、「ではお願いします」と言うて、注射してもらったら、やっぱり痛いのだった。12/11

 

その夫婦の生甲斐といえば、毎月1度だけ、それなりのレストランで、ランチを楽しむこと、だけだった。12/12

 

敵は、額に黒いサングラスをかけているので、それが、太陽光線で光る瞬間に射撃すれば、射斃せることが、分かった。12/13

 

今月のおすすめふぁつちょんは、レディスの白に対して、メンズはグレイだったが、その理由については、カラリストのイチカワさんにしか分からなかった。12/14

 

おらっちは、さっきまで、楽しく酔いしれていた、壮大な夢の尻尾が、大魚の尻尾のように、ゆらゆら、消え去っていくのを、呆然と眺めていた。12/15

 

その有名な素材講座では、2人の講師がかわるがわる教壇に立つのだが、今回の講師をよく見ると、あまりにも昔の恋人に似ていたので、ちと驚いた。12/16

 

長い間コロナや交通事故のせいで外出を避けてきたのだが、気がつけばぶらりと電車に乗って京都みたいな町にやって来て、あちこちをほっつき歩いているのだが、誰一人いない。12/17

 

最後に登場したのは不思議な荷物で、こいつに呪文を唱えると、たちまち容量3倍の大きさの3Dメデイアに膨れ上がり、わいらあ4人組は、その巨大な段ボールに、なんもかんも詰め込んで、上京したのよ。12/18

 

この白いアフリカの地で、褐色の少年たちにとり囲まれたおらっちだったが、ナイフを握った彼らの右手を掴み、次々に左手のナイフで彼奴らの腋の下を刺していったので、おらっちの周りは、死体がゴロゴロだった。12/19

 

下半身に茶色い液体が入った、無数の小さいビニール袋がぶら下がっていて、おらっちは、そいつを、2時間おきトイレに捨てに行かねばならんかったのよ。12/20

 

東京発の最終の新幹線こだまの窓枠にぶら下がって、食堂車にいる知り合いと談笑していたら、いつのまにか発車してしまっった。「さあ大変、どうしよう?」と思うのだが、こうしていても振り落とされはしないので、このままで続けることにしたのら。12/21

 

3匹の仔豚が行方不明になったので、FM横浜のアオキアナウンサーが心配して、何度も何度も放送で呼び掛けているが、まだ見つからないようだ。12/22

 

「おめえ、たまにはジョークの一つも言うてみろよ」、と強要されたので、必死に考えた末に「殿下の電話」と言うたのだが、誰も笑ってくれなかったずら。12/23

 

真夜中に誰かが家族で寝ている4畳半に忍び込んできて、幼い息子をさらっていこうとするので、必死に阻止しているおらっちなのであったあ。12/24

 

その病院では最強コロナで殆どの患者が死亡してしまい、金子院長は、唯一生存しているリヨ子に望みを託していたのだが、リヨ子は「わたし、一人は堪えられませんので」と言うて、勝手に退院してしもうたずら。12/25

 

これは昇進を続ける2人のエリート・ゴルファーの内緒の話だが、乳首島の5万羽の貴重種が、いつのまにやら全滅していたそうだ。12/26

 

腱板損傷で「痛い、痛い」と喚いていたら、「おらっち理学部の学生ずら」と自称する若者が、アルツ25mgを注射して痛みを鎮めてくれたのよ。12/27

 

今まで通っていた2つの病院に信を置けなくなったので、おらっちは急遽第3の病院を捜し始めたが、選ぶ基準が揺らいできたので、大層難しい作業になってきた。12/28

 

超多忙で超売れっ子のバリトン歌手のおらっちは、モザールのオペラのアリアなんか全部頭に入っているので、全然練習なんかしないで本番に臨んだのだが、いざ伴奏が始まると、どこから入っていいのか分からず、赤っ恥をかいてしまった。12/29

 

あの有名なタナカ一家が、展覧会の会場にやってきたので、主催者である息子は、少しばかり緊張しているようだった。12/30

いずこより飛び来る種か一粒が青空を衝く桜となるまで 蝶人

 

 

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西暦2022年卯月蝶人映画劇場その4

2022-04-20 17:05:38 | Weblog

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.2830~34

 

1)降旗康雄監督の「駅 STATION」

北海道の雪の駅を舞台に倉本聰の脚本で高倉健をはじめ倍賞千恵子、いしだあゆみなど当時のスタアが仰山出るが、所詮は八代亜紀季の演歌のカラオケ映像みたいな1981年の邦画。

 

2)ウィリアム・A・ウェルマン監督の「民衆の敵」

ジェームズ・ギャグニーが悪ガキの頃からチンピラヤクザの大人になっても悪事を積み重ね、ついに短い一生を終えるまでを描く1931年の米犯罪映画。こんな駄作よりPublic Enemyの音楽の方がマシだ。

 

3)ポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」

韓国でも進行する貧富の差を鋭く抉る2019年韓国製作の悲喜劇噺で、遠くドストエフスキーの「地下生活者の手記」の流れを汲んだある種の文明批評になっている。いくら富裕者に近づいても、半地下生活者=最低人の地肌に刷り込まれた独特の「臭い」で区別=差別されてしまう、とうくだりが本作の肝だろう。

 

4)天願大介監督の「デンデラ」

浅岡ルリ子、草笛光子、倍賞美津子などが70歳で捨てられた姥に扮し、捨てた村人たちに対する武装蜂起を構想するが、その前に飢えた熊に襲われて全滅するという2011年製作のチャっプい姥捨て映画。

 

5)山田洋次監督の「遥かなる山の呼び声」

高倉健、倍賞千恵子、吉岡秀隆が演ずる1980年公開の日本版「シエーン」で、ラストシーンで泣かせるが、撲殺による傷害致死刑が2年から4年で済むのだろうか?

 

  凶暴な犬がロシアで吼えている誰一人諌める者もなく 蝶人

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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚葬祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.114」

2022-04-19 20:50:49 | Weblog

西暦2022年弥生蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第404回

 

  • 祖父の金婚式を祝う孫のスピーチ

おじいちゃん、おばあちゃん金婚式おめでとうございます。*1

 

先日おじいちゃんが足の骨を折ってお医者さまの診察を受けて1週間ほど入院しました。今日の金婚式が迫っていたので、みんなとても心配しましたが、お父さんだけは必ず治るから大丈夫、と断言していました。

 

種明かしをすると、お父さんがそのお医者さまだったのです。おじいちゃんとおばあちゃんがそろって元気でとてもうれしいです。

 

さて、僕のうちでは家族いっしょで朝ご飯を食べます。その時におじいちゃんとおばあちゃんがいつも桜井家の先祖代々の昔話をしてくれます。

 

なんでも桜井家は江戸時代にお大名のお医者さんをしていたらしいので、その当時の話をたくさんしてくれます。お父さんお母さんも時々質問したり、いつも賑やかでたのしいひと時です。*2

 

それから、お正月や誕生日には、お父さんお母さんのほかにおじいちゃんとおばあちゃんからもお小遣いをいただけるので、それがいちばんうれしいです。

 

どうかおじいちゃん、おばあちゃん、もっともっと長生きしていつまでも僕にお小遣いをください。

 

  • アドバイス
    • 1子供は子供らしいあいさつがほほえましい。内容的には自由でかまわないが、高齢者に声が届くように発音すること、あまり長くしゃべらないことがポイント。
    • 2子供の特権は、自分の思うがままにスピーチして、それが自然に出席者の笑いと共感を呼ぶことである。

 

   モスクワを空爆するのを我慢して戦艦モスクワを撃沈したり 蝶人

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塚本邦雄著「塚本邦雄全歌集第6巻」を読んで

2022-04-18 09:54:42 | Weblog

照る日曇る日第1735回

この偉大なる前衛歌人の文庫本の全集は出始めた頃に何冊か読んだのだが、余りにも絢爛豪華な幻影世界に、食当たりならぬ文当たりがして、途中で放り投げて失礼したのだった。

 

が、久し振りに塚本選手を手にとってみたら、なかなか面白かった。

 

いつかどこかで穂村選手がかれを評して、「まるで玩具のように言葉を扱っている」、と非難めいたことをいうておったが、それは確かに彼の芸術の本質の一端を衝いていて、「心余りて言葉足らず」どころか、「心多くして言葉多し」の塚本ワールドのなのであるが、それが読者からみれば「心無しにして言葉多すぎ」と映ってしまうほどの言葉の魔術師ぶりなのである。

 

言葉の名人芸が為せる技といえばいえるが、しかしその自動表記にも似た、因業な右手の華麗な文飾テクの発動を、自負と諦念と悲哀を諸共に懐きつつ否定的に眺めていたのは、当の本人の大脳前頭葉なのだった。

 

されど彼の「不變律」「波瀾」「黄金律」という3つの代表作を読むひとは、彼の内面的な主題が、華麗に傾く空虚な修辞ではなく、その内奥で炸裂する「戦争」であることを知るだろう。

 

  山茱萸泡立ちゐたりきわれも死を懸けて徴兵忌避すればできたらう 

 

という「波瀾」の中の1首こそ、虚飾を剥ぎとり、心と言葉が調和した塚本ほんらいの歌だったのである。

 

      迫りくる「第7波」など忘れ去りみなウクライナに熱中している 蝶人

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ミロコマチコ作「オオカミがとぶひ」を読んで

2022-04-17 12:45:12 | Weblog

照る日曇る日第1734回

 

全篇にパッションが漲る、異色の絵本ずら。

 

予定調和な物語とかストーリーを気にせず、ゴリラやチーターやクジラやトナカイなどを、描きたいように自由奔放に描きまくっている。

 

これではオオカミも飛ぶだろう。というより、作者自身がジャンプしているからね。

 

  占領し殺した民に地雷まで仕掛ける兵士の心やいかに 蝶人

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酒井駒子作「よるくま クリスマスのまえのよる」を読んで

2022-04-16 13:03:32 | Weblog

照る日曇る日第1734回

 

サンタさんからのプレゼントを待ち望む男の子と、よるくま君の幻影を、いわゆる一つの宇宙的スケールで描いた酒井選手の力作である。

 

さはさりながら、どうも賢すぎる大人が知恵を絞って、こねくり回したような奮闘努力の跡が、随所でありありとしているような絵本で、素直に入りこめないのはおらっちだけだろうか?

 

 春蘭の1本2本なぜ咲かぬ シンディー・ローパー元気にしてるか 蝶人

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