ある晴れた日に 第96回
天青咲きてわたしの夏が来る
喨々と油蝉鳴く正午かな
むざむざと車に轢かるるキリギリス
ギースチョンを2匹助けてやりました
このススキ持って帰っていいかしら
横須賀で長崎チャンポン食べました
つばくらの低く飛ぶ駅を出でにけり
原発や一億の民が核の傘
五十名の生徒が走らせるシャーペンの音
もう飽きか明きか空き缶かあ。秋だ!
こんなことしでかしてしまってあんたどうするんよ
炎昼や目覚めればまたマリナーズ逆転負け
源爺ときたらこっちから挨拶しても知らん顔してる
カワセミは笑わずに土菅めがけてまっすぐ飛んで行く
領土を取り返すために君はもう一度戦争をしますか
古の森川町なる本郷館生まれ変わりて住みたきものを
お父さん浮輪潰して下さいと頼まれて浮輪の空気を抜くああまた一つ夏が逝く
今日からは時給40円となったことも知らず君はいそいそと出勤する
あんたなら立派な看護師になれたわよと姉に太鼓判押されしわが妻
うしみつどきに灯りをつけて働いているわが町内の二軒の家
この頃は来なくなりぬわが義母を余命一週間と断言せし医師
一億の民が一本の傘の下ヒロシマナガサキフクリュウフクシマ
核不滅ヒロシマナガサキフクリュウフクシマ
東電のフクシマ原発恐ろしや一億の民被爆者と化す
誰か助けて下さいと鳴き叫びながら少年が滑川を歩いている
物喰えば歯がボロボロとかけていくいずれは全部消えて無くなる
小便すれば付着す黄色い滲みこれぞわが耄碌の証なりけり
あんたは初体験で舞いあがってるが俺たちはいやんなるほど知り抜いているんだよ
魚屋は死んだ魚を肉屋は死んだ動物を八百屋は死んだ植物を売る
何の花が好きかと尋ねれば山百合が好きと答えし人ありき
三十日の真夜中に啼く油蝉 蝶人