あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

西暦2014年神無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2014-10-31 17:39:40 | Weblog


ある晴れた日に 第263回


桜の樹のどこいらで鳴いているのか油蝉昔よくオシッコをひっかけられたが

雨空に一筋の光差し込めば一斉に鳴き始める蝉たち

キャンパスに蝉声響動もす昼下がり生涯最後の授業終えけり

今年は平成何年なるか時々分からなくなる天皇制ってそれくらいのもの

お前さんが攻めてくるならこちとらだって黙ってはいないぜ全世界中で気分はもう戦争

可もなくて不可もなきこの世の中を可もなく不可もなき人過ぎる

シオカラの雌がムギワラトンボだなんて皆さんご存じでしたか?

取るべきか取らざるべきか迷う日々僅かに太る裏庭のミョウガ

草花の名前を聞けば答えありわが妻こそは歩く植物事典

我こそは「歩く昆虫事典」と自負すれど妻の植物事典には厚さで負ける

「お母さん、お母さん」と息子が大声で叫びたれば妻は意識を取り戻したり

「お父さん自閉症って何?」と自閉症の息子が尋ねる誰か上手に答えてやってくれ

2014年7月1日に戦後終わり憂鬱なる戦前が始まった

足元にまつわりつくなよルリシジミゴミを出すのに邪魔になるじゃんか


わが子ながらやるではないかと称えつつ幸四郎は見得を切りたり

胸押せばもの凄き力で押し返す死に物狂いの蝶のあがきよ

太るのは自己抑制が効かないでおのれが豚豚になることを許すから

青空にひつじ雲が浮かんでる今日は死ぬにはかなり良い日だ

世の中はあれからどんどん悪くなり「よきこときく」ひと少なくなれり

僕らオクラ食べても食べても五つ星オクラらはいまはまからむ子泣くらむ

さる宮のさる皇女けふ嫁ぐらし与り知らぬ遠き世界で

もうええわ、わたしおとうちゃんとこいきたいわというて母身罷りき

♪プルトニウムがよおプルトニウムが47トン これさえあれば核兵器できる

69の時はローリング・シクスティなどとイキがっていたが明日から70時間よ止れ

ようやく白地に緑のペンキ塗りも終わったこれで妻の病気さえ治ってくれればいいのだが

絶叫する通販男に対抗するには気力体力忍耐力が必要

とある日とある街でさりげなくそれは起きるだろうあらゆる戦さがそうであったように

あまりにも暑いというより熱いので、生きていることを忘れてしまう

ひとつ池で育ちゆくなり蝌蚪子蛇

蝉声絶え三千世界秋となる

列島に烽火点点曼珠沙華

富士山の彼方此方に君と僕

大いなるふぐりのありてペンキ塗り

五人組ゆえ騒動起こす鴨仲間

蟷螂が発条晒して死んでいる

右翼紙への投歌を廃す神無月


  短歌なぞ詠んでる暇はありませぬ毎日どんどん人が死んでる 蝶人

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ティエリー・ラゴベール、ティエリー・ピアンタニダ監督の「ホワイト・プラネット」をみて

2014-10-30 12:09:03 | Weblog


bowyow cine-archives vol.724


北極海に生きる白クマやアザラシやカリブー、クジラなどさまざまな生き物の生態をなまなましく、おそろしいほど美しく写し取った、芸術的な完成度を誇る、ドキュメンタリー映画なり。

我われ人間どものおかげで氷河が溶け出し、白クマができず死滅する危機に直面している恐るべき実態を、北極グマになり変って静かに、しかし鋭く告発している。

この映画をみて地球は人間だけの住みかではないことを改めて知れ!

それにしても白クマ親子の可愛らしさと情愛の深さよ!


      2014年7月1日戦後終わりて戦前始まる 蝶人
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「ハート」のつく映画を2本みて

2014-10-29 10:01:01 | Weblog


キャスリン・ビグロー監督の「ハート・ロッカー」をみて

bowyow cine-archives vol.722

大義なきイラク戦争に従軍し、命懸けの爆弾処理に従事する米軍兵士が、そのハラハラ、ドキドキが忘れられなくなり、無事に帰国したというのに、またしても生きるか死ぬか、のるかそるかのスリル満点の戦争とテロルの現場に舞い戻るお話。

彼とて死にたくはないし平穏無事な生活を愛しているんだろうが、戦争はそういう普通の人間の精神を破壊し、恐るべき狂気の地獄へと追いやってしまうのである。

さりながら栄えあるアカデミー賞に輝くほどの大した映画ではない。


スコット・クーパー監督の「クレイジー・ハート」をみて

bowyow cine-archives vol.723

往年の人気カントリー歌手が酒と煙草と女に身を持ち崩し、病に冒されてボロボロになりながらも、ふとしたことからいわゆるひとつの「純愛」に目覚めて、奇跡の復活をするというラッキー・ストライクなロードムービーなり。

なんというても老残のやさぐれシンガーを演じるジェフ・ブリッジスが素晴らしい。

 これなら栄えあるアカデミー賞に輝いてもよろしいでしょう。


♪プルトニウムがよおプルトニウムが47トンこれさえあれば核兵器できる 蝶人
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国立劇場で「双蝶々曲輪日記」千穐楽をみて

2014-10-28 15:19:17 | Weblog

茫洋物見遊山記第155回

『双蝶々曲輪日記』と書いて「ふたつちょうちょうくるわにっき」と読ませるとはなんとお洒落な江戸の文人よ。雅号「蝶人」を名乗る者としてはなんとしてでも東京にイカナバナラヌウということで国立劇場の千穐楽を見物して参りました。

 国立劇場のホームページによれば、この義太夫狂言の内容は以下のごとし。

 作者は『菅原伝授手習鑑』『義経千本桜』『仮名手本忠臣蔵』を生み出した竹田出雲・三好松洛・並木千柳の名作トリオ。 題名の「双蝶々」は、濡髪長五郎と放駒長吉、二人の力士の名前にある「長」の音を取り入れたものです。

 今回は濡髪を中心とした構成で、見応えのある通し上演でご覧いただきます。義理と人情との間で葛藤する濡髪や周囲の人々によるヒューマンドラマが展開します。

 序幕「新清水」は久々の上演。豪商山崎屋の若旦那・与五郎は、遊女・吾妻と深い仲。吾妻に横恋慕する平岡郷左衛門によって窮地に陥れられますが、吾妻の朋輩・都と相思相愛の南与兵衛が救います。

「角力場」では、山崎屋の贔屓を受ける濡髪が、郷左衛門に荷担しようとする放駒に勝ちを譲り、与五郎への力添えを頼みます。名力士の濡髪と素人相撲の放駒の意地と意地とがぶつかり合う一幕です。

 二人は「米屋」で再び争いますが、弟の放埓を案じる放駒の姉・お関の苦肉の策のお陰で、義兄弟の契りを結びます。

 しかし、「難波裏」で、濡髪は郷左衛門とその仲間をやむなく殺害。そして、実母のお幸に一目会おうと尋ねる「引窓」へと続きます。お幸は与兵衛の継母でもあります。濡髪、与兵衛、与兵衛の女房となった都(お早)、お幸―四人が互いの心中を察して苦悩する姿が、屋根の明かり取り〝引窓〟を効果的に使って描かれます。

 幸四郎が当り役の濡髪を、半世紀ぶりに三幕通して演じます。また、染五郎が与兵衛・与五郎・放駒の三役を勤める楽しみな舞台。さらに各役に魅力溢れる顔触れを揃えました。芸術の秋にふさわしい名舞台を心ゆくまでお楽しみ下さい。

 と、書かれている通りの舞台であったが、幸四郎親子の幸福感みち溢れる共演に加えて、中村東蔵の好演が印象に残った。


   わが子ながらやるではないかと称えつつ幸四郎は見得を切りたり 蝶人
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ウォルター・ヒル監督の「ロング・ライダーズ」をみて

2014-10-27 20:09:21 | Weblog


bowyow cine-archives vol.721


 有名なジェシー・ジェイムズ一派の銀行強盗の内幕を、彼らの女性関係の挿話を含めて淡淡と描くが、そのクールさがたまらない。

 悪党どもの悪行とあわせてその人間のたたずまいもしっかりと押さえている点が秀逸なり。

 ウォルター・ヒルはペキンパーには及ぶべくもないが、才能のある名監督の一人であるなあ。



「お父さん自閉症って何?」と自閉症の息子が尋ねる誰か上手に答えてやってくれ 蝶人

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緑の王国~「これでも詩かよ」第105番

2014-10-26 11:28:15 | Weblog


ある晴れた日に 第262回


私は緑の王国の中で目を瞑って
寒冷紗の網をじっと握りしめながら、
いつもの場所で、蝶を待ち構えている。

やがて大きな黒い蝶が、風のように峠の向こうから飛んでくる。
 私は大きな白い網を振り回すが、それは逃げてしまう。
黄色い思い出を残して逃げ去るモンキチョウ

しばらくすると、白と黒と紫の斑点を午後2時の陽光に煌めかせながら、
またしても大きな蝶がやってくる。
国蝶のオオムラサキだ。

私は全神経を集中してここを先途と網を振る。
運を天に任せて網を振る。
こんなにも心臓が高鳴るので、吐きそうになる。

草の上に伏せられた網の中で、それは激しく羽ばたいている
鳥のようにのたうっている。
私が生まれてはじめて捕獲したオスのオオムラサキだ。

私は大きく深呼吸して、そいつの全身を左の掌でつかみ、
そいつのぶっとい太い胸を、右手の親指と人差し指で挟んで
力を入れて両側から押す。押す。押しつづける。

きゃつは暴れる。
大きな羽をばたつかせ、悲鳴を上げながら
きゃつは全身で抵抗する

きゃつは暴れる。
が、それもほんの一時のこと。
 やがて力尽きて、ぐったりとなる。

 きゃつは死んだ。
 きゃつは、掌の上に横たわっている。
 まるで私の死骸のように


  胸押せばもの凄き力で押し返す死に物狂いの蝶のあがきよ 蝶人
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ほんにお前は屁のやうな

2014-10-25 11:02:07 | Weblog


バガテル-そんな私のここだけの話op.186&鎌倉ちょっと不思議な物語第322回&勝手に建築観光第55回




 日本の近代建築20選に選ばれるなど内外から高い評価を受けている神奈川県立近代美術館鎌倉館が廃止されるという緊急事態を前にして、遅まきながら反対運動が巻き起こっている。

 そこで小生も、その存続を求める運動の先頭に市が立つべしという提案を鎌倉市長に対して行った。

  http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1927746252&owner_id=5501094

 すると去る6月27日、「今後神奈川県等において行われます共同調査やその結果をもとに検討される方向性を見守るとともに、市民の皆様のお声につきましては、機会を捉えて神奈川県に伝えてまいりたいと考えております」という通り一遍の回答があった。

 そもそもこの問題は財政難に苦しむ神奈川県が、土地の所有者である鶴岡八幡宮に対して2016年までの借地契約を更新しない方針を表明したことから惹起した。私がこの日記で既報したように、げんざい県と八幡宮は、建物の現状を把握すべく現地調査を行っている。

 しかし小生はその事実を踏まえたうえで、当該の建築物はほかならぬ鎌倉市の文化的最重要拠点に存在していることから、市が当事者意識を持って県と八幡宮の間に立ち、保存に向けての積極的なイニシアチブを発揮してほしいと願ったのであるが、この官僚的な答弁を読む限り、市と市長のやる気はほとんど見えない。

 そもそもこの提案にしても以前の市長は「市長への手紙」という受け皿を用意しており、形式だけにせよ自らが回答する意思を示していたのであるが、この若き市長は「市長」名義を撤回し「市への提案」へとレベルダウンしているのであるから、市民の生の声を聞こうとする気持などさらさらないに違いない。

 鎌倉市議会における議員への答弁をネットで視聴していても、ああいえばこういう、こういえばああいうの糠に釘。音はすれども姿は見えず、ほんにお前は屁のやうなという都都逸はまさしくこの仁のためにあるのだろう。

かてて加えてこの市長は我々の反対を押し切ってゴミ有料化を強行しようとしているのだから、あいた口がふさがらない。


  足元にまつわりつくなよルリシジミゴミを出すのに邪魔になるじゃんか 蝶人
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杉田成道監督の「最後の忠臣蔵」をみて

2014-10-24 11:29:05 | Weblog


bowyow cine-archives vol.720


 討ち入りから16年。赤穂浪士の生き残り・寺坂吉右衛門と瀬尾孫左衛門をめぐる後日談。池宮彰一郎の原作を杉田成道が演出して、それなりに格調高い映画に仕立てている。

 大石内蔵助の足軽、寺坂は当日の討ち入りに参加しながら泉岳寺には集結しなかったが、これを大石の命で後事を託されて逐電したとみなし、瀬尾もまた大石が山科の妾に産ませた娘の世話で一味からはなれさせたと仮説をたてる。

 が、前者は公的な使命ゆえ充分ありえたと思えるが、後者はあまりにも私的な後始末なので、いくら映画とはいえ信憑性に欠ける。

 杉田成道の「優駿」は見るに堪えない駄作だったが、本作では殊に「間」を大事にした演出が効果的で、役所工事、佐藤浩市の熱演も相俟ってなかなか重厚な仕上がり。

が、最後の残酷腹切りシーンは別になくてもよろしいでしょう。


    草花の名前を聞けば答えありわが妻こそは歩く植物事典 蝶人
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ピート・トラヴィス監督の「バンテージ・ポイント」をみて

2014-10-23 12:49:53 | Weblog

bowyow cine-archives vol.719

 スペインで開かれた平和国際会議における米国大統領暗殺事件におけるシークレット・サービス(デニス・クエイド)の大活躍を描くサスペンス活劇映画なり。

 この手の映画では必ずといってもいいほど、テロリストの正体とその人物像がいい加減にしか描かれていないが、本作も同様なり。

 ただ久しぶりにシガニー・ウィーバーやウィリアム・ハートやフォレスト・ウィテカーの顔を見ることができたし、事件の内幕を異なる複数の多彩な登場人物がそれぞれの視点で描きながら、次第に全貌が明るみに出されてくる手法が思いがけず新鮮で、バリー・レヴィの脚本はなななかよく練れていると思った。


今年は平成何年なるか時々分からなくなる天皇制ってそれくらいのもの 蝶人
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アンドリュー・V・マクラグレン監督の「大西部への道」をみて

2014-10-22 11:18:48 | Weblog


bowyow cine-archives vol.718

 1840年代に不況のミズーリ州から一穫千金を夢見てオレゴンへ向かった幌馬車隊の悪戦苦闘の物語なり。

 幌馬車隊を率いるのがカークダグラス、開拓民の頭目がリチャード・ウィイドマーク、案内役がロバート・ミッチャムでこのあらくれ3人男の確執と友情が見どころ。

 ラスト近くで、行く手を阻む大峡谷の下に、人も馬も牛も馬車も下ろすシーンは、迫力がある。

 ロバート・ミッチャムはどの映画でもつまらないと思っていたが、この映画で演じている先住民との仲立ちをする、自由で気ままなガイド役は、悪くなかった。


 「お母さん、お母さん」と息子が大声で叫びたれば妻は意識を取り戻したり 蝶人
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久松静児監督の「地の涯に生きるもの」をみて

2014-10-21 10:27:46 | Weblog


bowyow cine-archives vol.717


 これは1960年制作の日本映画で、国後島出見の漁師、森繁久彌の悲しき生涯を綿綿と綴っていくのだが、にっくきソ連(ロシア)に北方領土を略奪された怒りがまったく表現されていないのが見ていても腹立たしい。

 トルストイ、ドストエフスキー、チエーホフ、ゴンチャロフを生んだ偉大なる文学国の政治における非道な領土拡大主義の無茶苦茶さは、隣国の中国にも飛び火し、平成の現在もその狂乱はますます悪化の一途をたどっているようだ。

 それにしても若き日の司葉子のにおうがごとき美しさよ!



  なにゆえにサハリン、サハリンと安易に口走る北方の熊に強奪されし樺太を 蝶人
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松尾昭男監督の「打倒 ノックダウン」をみて

2014-10-20 10:18:19 | Weblog


bowyow cine-archives vol.716


赤木圭一郎が新人ボクサーになって活躍する拳闘劇画なり。

赤木圭一郎は裕次郎、旭の真似をしてカッコつけたりギターを弾きながらいかにも恥ずかしげに歌をうたったりするが、それがものすごく下手糞なところがよい。

喉が良いだけで、実際は下手糞なのに、それをうまいと勘違いしている裕次郎、実際にうまいけれど、普通に歌っている旭より、はるかに好ましい。

圭一郎はこの映画の翌年に事故死するが、長生きしたら無能で調子だけはよい大根役者、裕次郎よりましな役者になっただろう。

松尾昭男の演出は、内容はともかくスピーディで心地よい。


 なにゆえにいつも偉そうにしている(た)のだろう慎太郎、裕次郎なんぞの石原一族 蝶人
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オードリー・ウェルズ監督の「トスカーナの休日」をみて

2014-10-19 10:48:02 | Weblog


bowyow cine-archives vol.715


 サンフランシスコで恋人に振られた作家がたまたま訪れたイタリア・トスカナ地方の小さな村の屋敷が気に入り、そのままそこに住むうちに、さまざまな人々との交流に生きがいを見出し、第2の人生を切り開いていくというお話なり。

 世の東西と古今を問わず、人世とはそのような偶然の連続であるからして、風光明媚なイタリアの田舎の自然や朴訥な暮らしぶりを楽しみながら鑑賞できるが、作家であるヒロイン役がダイアン・レインというのは、ちょっとそぐわないキャスティングではなかろうか。

 もっとも中年にさしかかって、目元に小皺と隈が姿を現している彼女の容貌をけっして嫌いではないのだが。


  シオカラの雌がムギワラトンボだなんて皆さんご存じでしたか? 蝶人
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フレッド・ジンネマン監督の「ジャッカルの日」をみて

2014-10-18 11:34:34 | Weblog


bowyow cine-archives vol.714

 極右テロリストが雇った英国の殺し屋ジャッカル(エドワード・フォックス)が仏蘭西のドゴール大統領を暗殺しようとするが失敗して殺される話です。

 ともかくフォーサイスの原作がよくできていて、ハラハラドキドキしながら最後まで引っ張るジンネマンの演出力は見事であります。

 そんなスリルとサスペンス満載の緊迫映画のスパイスとして彩りを添えるのは、ジャッカルと紅一点モンペリエ男爵夫人(デルフィーヌ・セイリグ→「去年マリエンバートで」)との一夜の情事なりき。

 まったく男にすげない態度を見せ、部屋のドアに「ドント・ディスターブ」の札を掛けておきながら、鍵は掛けずに、内心では男を求めていた女心の機微、なんてふ事情が見事に描かれていて、いたく勉強になりました。


  取るべきか取らざるべきか迷う日々僅かに太る裏庭のミョウガ 蝶人
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三宅喜重監督の「阪急電車片道15分の奇跡」をみて

2014-10-17 10:50:58 | Weblog


bowyow cine-archives vol.713

日本の電車の中でいちばんかっこいいのは阪急電車、いっとうかっこいい駅は阪急梅田駅と私は昔から考えている。

素晴らしいのはなんというてもあの重厚な「ぶだういろ」の外装で、これを東京のみどりの山手線や黄色な中央線の露骨で下品なブライトカラーと比べてみれば、その差は歴然たるものがある。

この格調高い上品な色彩を選んだのは、さだめしオーナーの小林一三か、運転手だった朝比奈隆のいずれかではないか、と愚考するのだが、間違っていたらごめんなさい。

内容はといえばその阪急電車と阪急今津線を舞台にした近隣の住民たちをめぐる心温まる交流譚で、甘いといえば甘いがてだれの岡田恵和が手際よくストーリーを脚色している。

電車の中で突然ぶちきれて付き合っている女性を威嚇するDV男にならないよう、わたしも注意しよう。


ようやく白地に緑のペンキ塗りも終わったこれで妻の病気さえ治ってくれればいいのだが 蝶人
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