あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

ルース・スタイルス・ガネット作・ルース・クリスマン・ガネット絵・渡辺茂男訳「エルマーのぼうけん」を読んで

2024-07-31 14:11:39 | Weblog

照る日曇る日 第2086回

 

歳を取ってだんだん先が短くなってくると、あまり難しい本は遠ざけて、幼児用の絵本や童話を読みたくなってくる。

 

「エルマーのぼうけん」は有名な3部作のはじまりの1冊であるが、冒険少年ならではの次々に押し寄せる大冒険を、こんどはどう乗り切るのだろうとハラハラさせながら、ひとつひとつクリアーしていく物語のつくりの手作業に感動させられてしまう。

 

ついこないだ亡くなってしまった原作者の周到なプロットは、あくまでアマチュア創作家の手仕事で、いくらAIが学習しようとしてもアマチュアすぎて無理だろう。

 

しかしエルマーのお母さんて、嫌な女だ。実際にガネットの母親ってそんな人だったんだろうね。

 

       餞暑尽詩集の残は九部なり 蝶人

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トルーマン・カポーティ著・川本三郎訳「叶えられた祈り」を読んで

2024-07-30 09:38:59 | Weblog

 

照る日曇る日 第2085回

 

「叶えられなかった祈りよりも、叶えられた祈りのうえにより多くの涙が流される」という聖テレサの言葉が、「冷血」の著者がこの世に遺した最後の小説集の題名になっているが、私にはてんでその意味が分からなかった。

 

「ティファニーで朝食を」、「冷血」で有名作家に成り上がったカポーティが、おのが文芸活動の集大成として取り組んできた本作は、全部で12の短編が緩やかにつながる長編小説として構想されていたようだが、結局のこされたのは「まだ汚れていない怪獣」「ケイト・マクロード」「ラ・コート・バスク」の3本のみ。

 

カポーティを思わせる主人公P.B.ジョーンズの半生を、金持ち階級の腐敗堕ぶりを剔出しながら米帝のハイソの虚飾を、かのプルーストの向こうを張って描破しようとしたものらしいが、3本目は先行する2作品とはまったく連動していない。

 

それ以上の大問題は、これが当時の上流階級夫人の事実を上塗りした「超」がつくゴシップ&ポルノ・スキャンダルのオンパレードだったことで、「冷血」を遥かに凌ぐそのスーパーリアリズムは「事実は小説よりも奇なり」を地で行く様相を呈したのであったあ。

 

ハイソでは可愛がられていた「小説も書く男娼」は、飼い犬に噛まれた有閑階級のマダムと権力者のその夫たちによって、完全に社会と文芸の世界から葬り去られ、衝撃の余り無垢な魂の持ち主は、「無残に汚れた敗残者」として、60歳直前で急逝したのである。

 

さはさりながら「まだ汚れていない怪獣」の冒頭のある少女の作文に共感するカポーティの純情には、いたくほだされる。そこには「汚れても終生汚れることのない一匹の怪獣」がいたのだ。

 

「もし何でも出来るなら私は、私たちの惑星、地球の中心に出かけていって、ウラニウムやルビーや金を探したいです。まだ汚れていない怪獣を探したいです。それから田舎に引越したいです。フロリー・ロトンド。八歳」

 

勝った負けたと大騒ぎ されどあんたの人世じゃなし 蝶人

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「新潮120周年記念特大号」を読んで

2024-07-29 09:55:34 | Weblog

「新潮120周年記念特大号」を読んで

 

照る日曇る日 第2084回

 

なんせ120周年ということで短編やエッセイとはいえ、我が国の代表的な作家たちが軒並み顔見世興行を開催しているので、騙されたと思って読んでみることにした。

 

巻頭は「春のみみずく朗読会」と称するライヴの小特集で、村上春樹と川上未映子の両大家?が、最新の短編を朗読したものが収録されていたので、これは!と思って読んでみたのだが、これが完全な期待外れというか肩透かしであった。

 

村上の「夏帆」という短編では、いつものムラカミ風の男性がヒロインの夏帆とデートして、食事が終わってデザートを食べ終わってから、「正直いって、君みたいな醜い相手は初めてだ」と言い放って、夏帆の反応をうかがうところから始まるのだが、これってじつに不愉快で、小説の出だしとしても最悪の設定ではなかろうか。

 

侮辱された絵本作家の我らがヒロインは、こんな最低男に熱い珈琲をぶっかけて席を立って帰ればいいのに、「好奇心が抑えられずに」そのままじっと我慢の行を続け、あろうことか再度のデート!にも応じ、その結果が功を奏したのか?従来のマンネリを打ち破った中味の濃い新感覚の絵本!を世に出したそうだが、こんな村上選手の最新作のどこが素晴らしいのだろう?

 

凡庸な前作に呆れ果て、今度こそは新機軸を切り開いてほしいと願っているのだが、この調子では無理かもしれんなあ。だいたいあのバカダ大学が阿呆莫迦ムラカミ記念館なるものをこさえたりするから、こおいう仕儀になっちまうんだ。

 

「村上がダメでも川上があるさ」と思い直して読んでみた「わたしたちのドア」と称するえらく短い川上選手のタンペンも、じつに無内容で詰まらない作品で、こんな下らない2本を巻頭に持ってくる「新潮」編集長のアホさ加減にも驚いたことだった。

 

でもそのお陰で、それに続く有象無象の諸作家の作品の価値がぐっと高まったようで、高橋ゲンちゃんが彼の弟さんのことに触れた短いエッセイなど良かったでっせ。

 

自らを超大国と思うなら「アメリカ・ラスト」を謳い文句にせよ 蝶人

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鎌倉小町の鏑木清方美術館で「夏の日のきらめき―清方一家の夏休み」展をみて

2024-07-28 09:10:02 | Weblog

 

蝶人物見遊山記第387回&鎌倉ちょっと不思議な物語第467回

 

 

神奈川県立近代美術館鎌倉別館から左側の鶴岡八幡宮に沿って5分ほど南(海)方向に歩いて、大嫌いな外国人観光客で雑踏する小町通りに入って右折したところに、かつて日本画家の鏑木清方が住んでいたアトリエ兼住居があり、彼の死後、市が跡地を買い取って建て直し、小さな美術館にしたのが、このこていな庭付き日本家屋です。

 

今回のテーマは「清方一家の夏休み」ということで画家が金沢文庫に所有していた別荘で書かれた、いかにも避暑地らしい花鳥風物と人物画をみることができました。

 

明治45(1912)年の金沢海岸を遊ぶ3人をスケッチした「砂浜少女」は、長女の清子さんを含めて、二度と帰らない夏の日の思い出を、かげろうのようなタッチで一筆で描いた幻想的な紙本淡彩画です。

 

長女清子が幼い時の「清子四歳像」は、前回に続いての出品ですが、岸田劉生の「麗子像」に匹敵する名品と思われるのです。

 

そしてなんというても本展の目玉は、その清子の清冽な浴衣姿を描いた「朝涼」でせう。13年後の17歳の美しい少女の姿を眺めていると、何がなしに女の一生ということを考えてしまいます。

 

なお本展は、暑さで燃え尽きなければ来る8月25日まで絶賛公開ちう。

 

國の為障碍児者を殺したるある人物を国が殺すと 蝶人

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西暦2024年文月蝶人映画劇場その6

2024-07-27 08:45:44 | Weblog

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3708~12

 

1)ジェロウム・セーブル監督の「絶叫のオペラ座」

殺された母親の跡を継いでミュージカルの主演女優になった娘に降りかかる災厄を描いた2014年のおもろいカナダ映画。

 

2)キム・ソンフン監督の「最後まで行く」

2015年の韓国の犯罪映画で、国産の阿呆莫迦警察ものに比べたら、まあ圧倒的に面白いずら。

 

3)リー・ダニエルズ監督の「ペーパーボーイ」

マイアミの新聞社員たちが湿地帯で巻き込まれていく泥沼のような殺人事件と恋。ニコール・キッドマンの体当たり演技が凄い2012年のサスペンス。

 

4)マイケル・ウィナー監督の「DETHE WISHI 2ロサンジェルス」

犯され惨殺された娘の復讐を遂げる1982年のチャールス・ブロンソン。

 

5)ロジャー・ドナルドソン監督の「追いつめられて」

最後になんだこれと腰砕けになるケビン・コスナーとジーン・ハックマン共演の1987年製作の米ソスパイミステリー。ショーン・ヤングがエロい。

 

50円アップの最低時給は1054円息子の月給は3314円 蝶人

 

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神奈川県立近代美術館鎌倉別館にて「てあて・まもり・のこす」展をみて

2024-07-26 11:49:13 | Weblog

 

蝶人物見遊山記第386回&鎌倉ちょっと不思議な物語第466回

 

暑いさなかのお昼前に、7月28日まで開催されている鎌倉別館40周年記念の展覧会を見物しました。

 

さいきん美術工芸品の保存修復があちこちで話題になっているようですが、それをテーマにした展覧会はこれが嚆矢ではないでしょうか。

 

見慣れたトンカチやペンチに混じって手術用具など大型の機械などもずらずら並べられているのには驚きました。松本俊介や関根正二、古賀春江、高橋由一などの有名作品の写真撮影は許されているのに、それらの修復工程の現場写真などは禁止になっているのは、その技術が公開を憚るほどに貴重なためでしょうね。

 

全国各地の美術館に学芸員数多しといえど、美術品修復の専門家を備えているところは少ない。さりながらこの狭い鎌倉別館には、伊藤由美さんという腕っこきの修復師がいることをはじめて知りました。

 

地球上の全人類がくたばっちまう今日この頃全国の学友諸君ご機嫌如何 蝶人

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ブレーズ・パスカル著・田辺保訳「パンセ」を読んで

2024-07-25 09:13:54 | Weblog

 

 

照る日曇る日 第2083回

 

西暦1654年11月23日月曜日、夜10時半から12時半の間に、有名な「回心」が起こり、ブレーズ・パスカル(1623年6月19日 - 1662年8月19日)は、イエス・キリストの神の核心に触れ、生まれ変わった。

 

西暦2024年7月13日、米国の前大統領ドナルド・トランプは20歳のトーマス・マシュー・クルックスにライフル銃で銃撃され、九死に一生を得てから人生観が変わり、この世界を新しい光のもとで見直すようになった。かな?

 

「人間は1本の葦に過ぎない。自然の中でも一番弱いものだ。だがそれは考える葦である。これを圧し潰すには全宇宙はなにも武装する必要はない。しかし宇宙が人間を圧し潰しても人間はなお殺すものより尊いであろう。人間は自分が死ぬこと、宇宙が自分よりも勝っていることを知っているからである。」

 

「だから私たちの尊厳の全ては考えることのうちにある。まさにこころから私たちは立ち上がらなければならないのであって、それを満たすことの出来ない空間や時間からではない。だから、正しく考えるように努めようではないか。ここに道徳の原理がある。」

 

「語というものは、ちがった並べ方をすると、ちがった意味を生じるようになり、意味は、ちがった並べ方をすると、異なった効果を生じるようになる。」

 

「「武器を携行せずにすむ生活など、およそ考えもつかぬほど、野蛮な国民」。彼らは平和よりも死の方がよいと思っている。他の国民は戦争よりも死の方がよいと考える。」

 

「恋愛がどんな原因、どんな結果をもっているかを、とくと考察してみることほど、人間の空しさについて教えられることはない。全世界がそのために変化するほどである。(クレオパトラの鼻)」

 

「ユダヤ人はイエス・キリストを見捨て、神から見放されるようになるであろう。選ばれた民は、不実な、忘恩の・不信仰な民、「信仰もなく反抗する民」となるであろう。神は、その目を見えなくすることによって彼らを打ち給い、彼らは真昼間にも盲人のように手探りする者となるであろう。」

 

「すべての物体を合わせても、そこから小さな思想一つすら実を結ばせることはできないだろう。すべての物体と精神をもてしても、そこから真の愛の動き一つすら引き出すことはでないだろう。そんなことは不可能であり、別な・超自然的な秩序に属することである。」

 

「33年間のうち30年間を、彼は外に表さずに生きる。3年間はペテン師といわれ、最後に弟子の一人に裏切られ、もう一人の弟子に知らないといわれ、誰からも見捨てられて死ぬ。これほどの輝かしさを持ちながら、自分では享受できなかった人が、他にいるだろうか?」

 

「「この犬はぼくのものだよ」と、あのいたいけな子供たちは言ったものだ。「そこは、ぼくが日なたぼっこする場所だよ」。さて、これこそ、全地上における不当な専制の起こりであり、またその縮図である。」

 

「何一つ知らないのに、こんな風に安心していられるとは何とも奇怪なことである。だからこうした生活を送っている連中に対しては、無茶苦茶振りと馬鹿さ加減を目の前に突きつけ、思い知らせてやらねばならない。あの人たちには誠心誠意という気持ちがないのだ。」

 

「下らぬものに心誘われ、情念の害を受けないために、1週間の命しかないように行動しよう。生涯の1週間を捧げねばならないものなら、100年を捧げるべきである。もし1週間を犠牲にしなければならないなら、全生涯を犠牲にすべきである。」

 

「神が存在するということは分からないし、神が存在しないということも分からない。魂が肉体と共にあるということも分からないし、私たちには魂がないということも分からない。この世界が創造されたということも、創造されなかったということも、原罪があるということも、ないということも分からない。」

 

「3種類の人がある。一つはすでに神を見出して神に仕えている人、次は努力して神を求めている人、そして神を求めようともしない人。第1の人は道理にも叶い幸福である。最後の人は愚かであり不幸である。真ん中の人は不幸ではあるが、道理には叶っている。」

 

「正しい者についていくのは正しいことであり、いちばん強い者についていくのは仕方のないことである。力のない正義は無力であり、正義のない力は暴力である。力のない正義には反抗する者ができる。常に世に悪人は絶えないからである。」

 

「正義のない力には、非難する者ができる。だから正義と力とを一つに合わさなければならない。そのためには、正しい者を強い者にするか、強い者を正しい者にするかしなければならない。」

 

「なぜ人は大勢の方に従うのか。その方に正しさが多くあるからか。そうではない。力が多くあるからだ。なぜ古代の法律や古人の意見に従うのか。それが一番健全だからか。そうではない。それらがただ一つのものであって、種々雑多なものの芽生える原因を取り除いてくれるからだ。」

 

「力はこの世の女王である。世論は力をふるう女王のようにみえるが、むしろ力の方が世論をつくるのだ。」

 

       施設では息子は時折歌うらし父母にも聞かせよその歌声を 蝶人

 

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鏑木清方美術館にて「清方と二人の弟子」展をみて

2024-07-24 09:16:54 | Weblog

 

蝶人物見遊山記第385回&鎌倉ちょっと不思議な物語第465回

 

こえまた6月30日まで開催されていた展覧会の後だしジャンケンである。

鏑木清方には数多くのお弟子さんがいたが、今回の「2人の弟子」とは門井掬水と西田青坡である。

 

2人ながらに聞いたこともない名前なのであるが、その作品はお師匠さんの影響を色濃く受けつつも自分らしさを出そうとして苦闘しているような中途半端な作風であって、自分としてはあんまり感心できなかった。

 

「出藍の誉」などと世間は簡単にいうが、師匠と弟子とは難しいものである。

 

大谷なんか別にいなくてもふつうに勝てるロサンジェルス・ドジャース 蝶人

 

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鎌倉歴史文化交流館にて「鎌倉の廃寺―寺社の興亡」展をみて

2024-07-23 10:20:51 | Weblog

 

蝶人物見遊山記第384回&鎌倉ちょっと不思議な物語第464回

 

これまもうとっくの昔の6月29日に終わってしまった展覧会だが、タイトルが魅力的なので無理して滑り込んだ。

 

「鎌倉の廃寺」といえば貫達人氏の「鎌倉廃寺事典」という名著があり、私は昔から本書の手引きで北条一族による暗殺暗黒都市のあちこちを探訪したものだが、いまでも「廃寺」と聞けばドドンパ娘の黒い血が騒ぐのである。

 

本展ではかつての鎌倉郡家(今の御成町)の北側にあったといえあれる「千葉地廃寺」、かの有名な「永福寺」といまは誰も見向きもしない「勝長寿院」、源頼朝ゆかりの「法華堂」と我が家のすぐそばにある「大慈寺」跡、さらには「西方寺」、「仏法寺」、「多宝寺」、「無量寿院」、「東勝寺」、「釈迦堂跡」、「一乗院」、「慈恩寺」、「太平尼地寺」、「鶴岡八幡宮」まで数多くの廃寺の遺跡、遺構、遺品を並べて後学の手引きとなさしめているのであったあ。

 

7月の息子の工賃は3314円ハンコを押して事業所に戻す 蝶人

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西暦2024年文月蝶人映画劇場その5

2024-07-22 09:16:20 | Weblog

西暦2024年文月蝶人映画劇場その5

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3703~7

 

1)エドリアン・ライン監督の「フラッシュダンス」

ジェニファー・ビールスは可愛いなあ。それからどうなったのかしら。1983年は今から思えば長閑な時代だった。

 

2)テリー・ジョーンズ監督の「ミラクル・ニール」

突然全能の力を授かったニール君が宇宙全体を舞台に繰り広げる2015年の阿呆莫迦コメディずら。

 

3)トニー・スコット監督の「デイズ・オブ・サンダー」

1990年.デイトナ自動車レースを争うトム・クルーズに惚れる美人医者のニコール・キッドマン。

 

4)ニック・ライオン監督の「オペレーション・ダンケルク」

ダンケルクからの撤退を急いでいるのに極秘情報を持つ科学者の保護を命じられた英国人兵士の苦闘を描く2017年の不出来な戦争映画。

 

5)エドワード・ドミトリク監督の「ケイン号の叛乱」

精神錯乱に陥ったハンフリー・ボガード艦長を前にして沈没の危険を察知して解任した副長を巡る1954年のスリリングな裁判劇映画。

 

潔く大統領選から身を退きしバイデン老の勇気と知性 蝶人

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柳田國男著「「遠野物語」「山の人生」」を読んで

2024-07-21 10:01:11 | Weblog

柳田國男著「遠野物語」「山の人生」を読んで

 

照る日曇る日 第2082回

 

冒頭に「この書を外国に在る人々に呈す」とあるが、さしずめ私などはこの國とその住民のやることなすことに違和感を覚え、今では外国ならずとも国内亡命者同然の暮らしを送り迎えしているので、柳田の異色の文芸作品のうってつけの読者だと自分でも思うのである。

 

この2つの作品を大いなる共感を覚えつつ読み進むにつれて、こういう「神隠し」ならつい最近も近所にあったなあと、思い当たる節が随所にあったので、それらをバイデン爺みたくならないうちにメモしておこうかしら。

 

1)近所のオジサンの母親が行方不明になった時は、町内会の有志が捜索隊を編成し、2度3度と付近の山探しを試みたが、ついに発見されなかった。まだ70台に手が届かない年齢で足元がおぼつかず、外出時は必ず車椅子に乗った状態でオジサンかその息子が付き添っていたのだが、ちょっと目を離したすきに行方知らずになってしまった。

 

自力で数メートルくらいは移動できたというが、車いすに乗ったままで山道に入ったり、車が行きかう県道を移動したりすることはそれまで一度もなかったし、今回もそう考えられたが、ともかく狭い生活範囲とその外延を目を皿にして歩き回っても、その行方は現在に至るも杳として知れなんだ。

 

2)昨日当地では5年ぶりに花火大会が開かれたが、以前は毎年決まって7月10日に開催された。当時私立大学の1年生の若い女性が行方不明になったのは、その年の花火大会の夜のことで、いつまで経っても母一人子一人の茅ヶ崎の自宅に帰宅しない娘の身を案じた母親が鎌倉の警察に届け出て、我らが町内会でも数次の捜索が行なったようだが、この度も行方不明のままで徒に月日が流れた。

 

その他)またある時には、近所の原っぱで、猟銃自殺した男の死体が発見されたり、朝夷奈峠の麓の茶屋跡で首吊り自殺の遺体があったり、滑川の橋の下に白いローブ姿の溺死体が浮遊していたりするのだが、当地の住民はもはやその程度の事件には慣れっこになっていて、だいいち現場に駆け付ける浄明寺派出所の警官だって2回まで拳銃自殺を遂げているのだから、暗殺者北条氏が暗躍する鎌倉が、今のガザやウクライナ以上の死都であったことを想起するまでもなく、中世鎌倉時代の「でんでらの」(政権の正式埋葬センター)があったここいらは、当の遠野よりも「死に近い場所」といえるのかもしれない。

 

 どんどはれいまもむかしもやまびともにほんおおかみもいきておるなり 蝶人

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中村稔詩集「月の雫」を読んで

2024-07-20 08:34:25 | Weblog

中村稔詩集「月の雫」を読んで

 

照る日曇る日 第2081回

 

97才の高齢者の詩人による最新詩集20篇を拝読しました。

 

「月の雫」て小田原のお菓子の名前か、それとも竹取物語かと思ったが、そうではなくて、この詩句、この光景が20の情景をつないでいくブリッジの役割を果たしているのですね。

 

若い時に浴びた月の光、そして100才近い老人を物憂く照らす蒼の光線、といった「具合に。

 

大器晩成、功成り名を遂げた老人が、長かった生涯を感慨深げに振り返っている趣きもあるけれど、突然

「ウクライナの兵士も市民も、ロシアの兵士も/ みんなあわれだな。」

 

と憐れみ、なんでかというと、みんな軍需産業の仕掛けた罠にはまり、

 

「ますます軍需産業は儲け、その株価は上昇し、/ロシア、ウクライナは疲弊するのだな」

 

などという戦争論の現状分析が飛び出してくるのだから、詩人より若いくせに五里霧中のバイデン爺なんかと違って一瞬も油断できません。

 

知り合いの実例を引き合いに出したと思しき「月の雫10」はとても美しい。

「また、二十年ほど、二人の幸せな暮らしの日々が流れた。

突然、彼女の物忘れがひどくなった。年々、認知症が「つよくなった。

彼女は入浴もできなくなった。彼が彼女を抱いて入浴させた。

月の雫を浴びた無垢な彼女は浴槽で聖女のように微笑んでいた。」

 

そこばくの貯え俄かに尽き始め死に急く理由の一つに数う 蝶人

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西暦2024年文月蝶人映画劇場その4

2024-07-19 09:32:36 | Weblog

西暦2024年文月蝶人映画劇場その4

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3698~3702

 

1)ティム・ロビンス監督の「デッドマン・ウォーキング」

死刑囚を忍耐強く見守る尼僧スーザン・スランドンと処刑されるショーン・ペンの1995年の聖なる愛の物語。

 

2)フランシス・フォード・コッポラ監督の「ワン・フロム・ザ・ハート」

1981年製作のじつに下らないセミ・ミュージカル映画。

3)サム・ライミ監督の「クイック・アンド・デッド」

父の恨みを晴らしたシャロン・テートがジーン・ハックマンを倒して颯爽と去っていく1995年の西部劇。ラッセル・クロウとディカプリオも出るでよ。

 

4)ジャシティン・ベンソン監督の「シンクロニック」

7分だけいろんな過去に移動できる素敵なヤクを飲んで、親友の娘を取り返したが死んじまう男の2012年のお噺ずら。

 

5)ペニー・マーシャル監督の「プリティ・リーグ」

1943年から54年まで続いた全米女子プロ野球チームの1992年の懐かしい記憶の物語ずら。

 

シルバーナ・マンガーノ、ジーナ・ロロブリジダ、ミシェル・モルガン、ソフィア・ローレン、山本富士子ゴージャス系大女優はおっかない 蝶人

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三橋敏雄句集「まぼろしの鱶」を読んで

2024-07-18 09:23:08 | Weblog

三橋敏雄句集「まぼろしの鱶」を読んで

 

照る日曇る日 第2080回

 

俳句界にあって珍しく「いいな」と思っている池田澄子の御師匠さんだった三橋選手の300部限定のまぼろしの初句集を読んでみる。

 

昭和10年代が51句、20年代が21句、30年代が249句を収録したものであるが、10年代には有名な「かもめ来よ」とか「少年あり」の代表作があり、既にして後年の作風が確固としていたにもかかわらず、やはり年代が重なるにつれて秀作の山々が重畳して出現してくるのは当然ながらも興味深い。 

 

例によってアトランダムに作品を並べて、心ある諸兄姉の鑑賞に付したい。

 

酒を呑み酔ふに至らざる突撃

ある日より弾なき砲の錆厚し

蝉幾萬英霊幾萬青天下

我多く精蟲となり滅ぶ夏

朝雀爪音花火運動会

無花果や獨り姙娠中絶す

海山に線香そびえ夏の盛り

若者よ抱きあふ固きとこと骨

鴉が啖ふ兵隊さんを嘆きませう

世界中一本杉の中は夜

沈む列島移民船には移民多し

 

    政権は交代すべし熱帯夜 蝶人

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ゲルツェン著・金子幸彦・長縄光男訳「過去と思索1」を読んで

2024-07-17 11:28:51 | Weblog

ゲルツェン著・金子幸彦・長縄光男訳「過去と思索1」を読んで

 

照る日曇る日 第2079回

 

1812年ナポレオン侵攻前夜にモスクワに生まれ、1870年のパリ・コンミューン前夜にパリで没したロシアの思想家による岩波文庫で全7冊の膨大な回顧録の第1巻である。

 

本書は昔から筑摩書房から全3巻のボリュームで神田の古本屋に並んでいるのをよく見かけ、何度も買おうとしてはためらい、結局そのままになってしまった思い出の作物なのであるが、先月図書館の新刊コーナーに陳列されているのをみかけ、それより早く読むべき多くの書籍がうずたかく机に並んでいるにもかかわらず、ついふらふらと手を伸ばしたのが運のつき。

 

第1部「子供部屋と大学1812-1834」における幼少年時代からモスクワ大学における疾風怒涛の青春時代のあれやこれやを息もつかずに面白く読み進み、反権力の勢い余って官憲の嫌疑を受けて思いがけず逮捕されてしまう第2部「牢獄と流刑1834-1838」ではてめえの若き日々を思い出しつつ血湧き肉躍るおもいにずぶずぶに浸され、気がつけば第1分冊はあというまに終わってしまったのであるが、続く第2巻を読むべきか、読まざるべきか?

 

なるほどドストの「カラマーゾフ」より、トルストイの「戦争と平和」より面白いロシア文学の白眉」とまで誰かが評していたことまで思い出されて、日夜ひとりで頭を悩ませている始末なのである、

 

真っ二つに割れてしまったアメリカを一つにできるか「夢の球宴」 蝶人

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