many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

七十句

2019-07-14 17:46:36 | 丸谷才一

丸谷才一 一九九五年 立風書房
『男もの女もの』の最初の「動物園物語」の書き出しが、「句集を出す話は前まへからあつた。」で、この句集について書かれてる。
すすめ上手な編集者にうながされて、辞退してたんだけど、そのうちその気になって、それでもなかなか実現しないでいると、何年か後に古希の祝いで出しましょうといわれて話が具体化したと。
古希の句集だから『七十句』という題は、選句をひきうけた大岡信の提案だって。
浅学な私は知らなかったけど、高浜虚子に『五百句』『五百五十句』『六百句』という句集があるらしいが。
なので本書は70の句で編まれたが、虚子のほうは題名と句の数は一致してなくて収録数は多少オーバーしているので、著者は自分も律儀に数を決めずにいいかげんにしておくのだったと後悔している。
(そこから、どこがどうころがって動物園の話になっていくのかという展開が、丸谷随筆のおもしろい芸で。)
あらためて数を数えて確認したりはしないけど、春、夏、秋、冬、新年に分けて、1ページに1句を掲げるというつくり。
句については(著者は俳句といわず発句というが)、よくわからないんだけど、
買つて来いスパイ小説風邪薬
というのは、ちょっとおもしろいと思った。
去年11月に地元の古本屋で見つけた本だけど、存在を知らなかったし、なんか私的な出版物にみえたこともあって、レアもんかと思って即買った。

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男もの女もの

2019-07-07 18:00:06 | 丸谷才一

丸谷才一 2001年 文春文庫版
これは去年11月に古本まつりで買ったんだ、たしか、丸谷才一の持ってないもの見かけるとついつい買っちゃう。
エッセイ集、っていうか随筆集ってのがより適切か、なぜなら巻頭言で、
>ところでわたしの随筆は明らかに男向けだが、これが意外に女の読者が多いと聞いて、ちよつと嬉しくなつた。男もののセーターをすつきりと着こなすやうなもの、と見立ててはどうだらうか。
って著者が書いてるから。
初出は1996年から97年の「オール讀物」と、「文藝春秋」がひとつ、単行本は1998年だという。
私としては、なんでもいいんだ、発表順、時系列にあわせて順に読もうなんて思ってはいない、ただ目にしたことないのがあったら喜んで読むだけ。
>ここでちよつと余談。(と言つたつて、この文章は終始一貫、余談なのです。ちようど、文学者の人生が最初から余生であるのとよく似てゐる。)(p113「ネクタイ知つたかぶり」)
なんて一節があるけど、そんな余談っぷりがなんとも快いんだからしかたない。
とはいえ、勉強になるよぉ、ボキャブラリーが豊富だからね、やさしい文章のなかにときどきオヤッと思う語が織り交ぜられてたりして。
>とすれば、ここからはわたしの推測でありますが、彼とお国とのあひだに何もなかつたはずはない。かならずや幾夜かの巫山雲雨の夢があつて(略)(p.128「出雲のお国」)
の「ふざんうんう」とかね。サラッと書いてるけど、なかなか出てこないよ、そういうの。
日本文学史にかかわる指摘もいつもどおり刺激的で、
>蝶について、わたしは一つ重大な疑問をいだいてゐた。日本には昔、蝶はゐなかつたんぢやないかといふ疑問である。もちろんそんなことはあり得ない。(略)さう打消すたびにわたしは、しかし王朝和歌で蝶が歌はれないのはどうしてだらうと思ひ悩むのであつた。
>『古今集』には蝶は出て来ない。
>『千載集』にも、『新古今』にも出て来ない。
>『万葉』にだつてないんです。
>をかしいぢやないか。(p.201「菜の葉に飽いたら桜にとまれ」)
とかって、なるほど、そうだ、あれほど花とか鳥とか歌にしてるのに、なんでだろうと驚かされる。
どうでもいいけど、今回、随筆で触れられてる本のなかで、読みたくなったのは、辻静雄『料理に「究極」なし』、大岡信の解説が文春文庫版にはついてるって。
コンテンツは以下のとおり。
動物園物語
春日の、九重などと
阿部定問題
食品譚
007の作者の妻
政治の辞典
四月と五月と六月
ネクタイ知つたかぶり
出雲のお国
二人のコロンブス
龍の雌雄
ゴシップ! ゴシップ!
七つさがりの雨
東西食器論
菜の葉に飽いたら桜にとまれ
小説論的王室論
命令形について
キスの研究

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