是枝裕和監督、1999年の作品。一生のうちで一つだけ大切な想い出をあげるならばどうするか? と問いかける内容。
死んだ人は「あの世」へいくまでの7日間、
ある場所に滞在し、
最も大切な思い出をひとつだけ選ばなくてはならない。
あの世ではその想い出だけ持って生きることができ、
選択決定できないと、その人はあの世へは行けないのだった。
このお話は、その「ある場所」が舞台であり、
そこで死者をあの世 . . . 本文を読む
ベン・ライス作の同名のベストセラーを「フル・モンティ」のピーター・カッタネオ監督が映画化。2005年の作品。
舞台はオパールの採掘地として知られるオーストラリアの田舎町。
1年前にウィリアムソン一家はオパールでの一攫千金をねらい、
この街へ越してきたのだが、
娘のケリーアンは、ここでの生活になじめず、
空想上の友達ポビーとディンガンと過ごす毎日を送っていた。
家族たちは当惑しつつも、
ケリーア . . . 本文を読む
小津安二郎監督、1962年の作品。妻に先立たれた男が娘を嫁に出すというストーリー。この作品が小津監督の遺作となる。
平山家の家族構成は、結婚し家を出た長男幸一、学生の次男和夫、
そして娘の路子の4人。母親は早くに亡くなっているようだ。
そんな家庭のなかで、聡明で美しい娘の路子は、働きながらも、
父や弟の身の回りの世話や食事の世話など、献身的にこなしていた。
もう24歳。結婚を考えてもいい年。
平 . . . 本文を読む
緒方明監督、2004年の作品。坂が幾重に重なる長崎を舞台に、50歳男女の押し殺された心の流れを描くストーリー。主演は田中裕子と岸部一徳。
冒頭の朝の牛乳配達のシーンから良かったです。
50歳、独身女性の大場美奈子。
牛乳配達とスーパーのレジで働き、夜はベッドで小説を読んで過ごす。
それが彼女の日常。
淡々とした中に、彼女の息づかいまで聞こえるような、
細やかな描写に心が打たれる。
一方、50歳 . . . 本文を読む
ポール・シュレーダー監督、1985年の作品。製作総指揮にフランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカスを迎え、日米合作で制作された、三島由紀夫の生涯を描いた映画。日本では未公開。
三島由紀夫の生涯を追いながら、
途中に『金閣寺』『鏡子の家』『奔馬』といった彼の作品を
舞台風に演出した劇が挿入されるという面白いつくり。
舞台の美術がすばらしく、三島の世界をうまく表現していると思う。
三島役を . . . 本文を読む
力道山の生涯を映画化した韓国・日本合作映画。2004年の作品。力道山を演じるのはソル・ギョング、その妻・綾には中谷美紀。
力道山といえば、戦後の大ヒーローであり、
彼のそしてプロレスの躍進はテレビ中継とともに
飛ぶ鳥を落とす勢いであった。
この作品では力道山が朝鮮出身であったことを公にし、
力士時代から虐待されてきた彼の国に対する葛藤が克明に描かれている。
「一度きりの人生、善人ぶるな」
人 . . . 本文を読む
「恋におちたシェイクスピア」「コレマン(コレリ大尉のマンドリン)」のジョン・マッデン監督、2006年の作品。晩年、気がおかしくなってしまった天才数学者の遺した数式と、その思い出に思い悩む、その頭脳を受け継いだ娘の心の暗闇を描くストーリー。
しみじみと見終わって、これだと舞台でできそうだなと感じていたら、
実際これはピュリッツァー賞受賞の舞台劇の映画化なんですね。
父の世話を5年間し続けたキャサ . . . 本文を読む
ヴィム・ヴェンダース監督、2006年の作品。「パリ・テキサス」以来、久々にサム・シェパードを脚本・主演に迎えた作品。原題は「DON'T COME KNOCKING」
西部劇のスターとして人気を博した俳優ハワード・スペンス。
最近は酒や女関係でトラブルを起こし、逮捕されたりしていて、
めっきりさえない。自分でも何とかしたいと思っているが、
そんなハワードがまたトラブルを起こす。
砂漠の真ん中の西部 . . . 本文を読む
小津安二郎監督、1958年の作品。嫁入り前の娘を持つある上流家庭の父親がたどる運命を描く。
この時代、結婚といえば見合い結婚が普通で、
ちらほら「恋愛結婚」の波が押し寄せつつある様子である。
会社の重役である平山の娘もそろそろ結婚を考える歳。
平山は、友人の娘さんの結婚式では、恋愛結婚を賛美し、
たてまえでは「うちの娘にも相手がいればありがたいのに」
なんて言っている、一見、理解ある大人だ。
し . . . 本文を読む
「ビューティフル・マインド」のロン・ハワード監督、2005年の作品。1920年代から30年代にかけ活躍した実在のボクサー、ジム・ブラドックの半生を描く。演じるのはラッセル・クロウ。その妻役にはレニー・ゼルウィガー。
ブラドック夫妻の固く結ばれた愛情と、
ボクシングと家族のために
頑なに誠実であり続けるジムの姿に感動させられる。
ときは大恐慌時代。タイトルを狙っていたジムの勢いは、
故障などのた . . . 本文を読む
アラン・パーカー監督、1999年の作品。貧苦に喘ぐアイルランドの家族を描く。父母を演じるのは、「奇跡の海」のエミリー・ワトソン、「フル・モンティ」のロバート・カーライル。
大恐慌に陥った1930年代。アイルランド出身のマラキの家族は
貧苦に追いやられながらニューヨークで4人の子供をかかえ暮らす。
そしてそんななか5人目の子供が生まれ、
かわいらしく彼らにとって初めての娘だったが、
寒さと栄養状態 . . . 本文を読む
自分の幸せを求め続けるシングルマザーとその息子の心模様を描くストーリー。出演は、西田尚美、塩顕治(子役)、松岡俊介、鈴木砂羽など。
シングルマザーの美由紀は育児ノイローゼを経験しており、
子供を愛してはいても、負担に感じてしまう本音を自分でも認識していた。
このままではイライラして子供と接してしまう、というので、
彼女がとった方法は、息子をキッズモデルとして成功させ、
自分もきらびやかな世界をか . . . 本文を読む
スティーヴン・スピルバーグ監督、2005年の作品。1972年のミュンヘン・オリンピックでのパレスチナ・ゲリラが起こしたイスラエル選手殺害事件、その後のイスラエル暗殺部隊による報復劇を描く。
1972年9月5日未明、パレスチナのテロリスト集団“黒い九月”が、
オリンピック選手村のイスラエル選手の宿舎を襲撃。
全世界が報道をとおして見つめる中、
最終的には人質となったイスラエル選手団の11名全員が
. . . 本文を読む
小泉堯史監督、2005年の作品。同名のベストセラー小説を映画化したもの。
ピュアな映画です。
交通事故に遭って以来、80分しか記憶がもたない数学博士、
元来、数字だけを追い求めてきた故なのか、
それとも時間がとまったための副産物なのか、
慈愛に満ちたピュアな心だけがそこに残ってしまった、
というような印象を受ける。
そして、彼の世話をする家政婦の杏子とその息子ルートは、
博士の見えている世界に . . . 本文を読む
父親が地雷の事故で亡くなったクルド人の家族の物語。2000年カンヌ国際映画祭ではカメラ・ドールに輝く。
舞台はイランの山岳地帯。ここにも国家を持たない
“世界最大の少数民族”クルド人が住んでいる。
生活はイラクへの密輸でなりたたしめている。
ラバに大きなタイヤを二つくくりつけ、
雪積もる山をキャラバンする。
ラバのないものは自らの背に密輸品を背負い山越えする。
ちなみに、この厳寒対策として、
キ . . . 本文を読む