絵話塾だより

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2023年11月25日(土)文章たっぷりコース第5期・第2回の授業内容/高科正信先生

2023-11-26 20:54:52 | 文章たっぷりコース

文章たっぷりコース第5期の第2回目の授業は、高科先生が自作にかけた思いについての話から始まりました。

世の中には沢山の本があります。書店に並んだ本からお気に入りを選び、それを買って読んだり
あるいは図書館で借りて読むこともあるでしょう。
その時は、読者はその本を好きに読むことができるし、どんな感想を持っても良いでしょう。
作者が何を思って作品にしたかなど、できあがってしまうと読者には関係ありません。
でも、ほんの少しでよいから、作者が伝えたかったことについて気にかけてくれると嬉しいとのことでした。

まず、今期テキストとなる『60歳からの文章入門』(近藤勝重 著/幻冬舎新書)を皆で音読。
前回の【思うより思い出すことを書け】の続きで、筆者が毎日新聞で発表したコラム「アジサイを振り返り眺めつつ」と
【身のまわりの変化をとらえる】から、灘中の入試問題に使われたコラム「サンダルからブーツ」と、「天気は天の気」
を見ていきましたが、入試問題はとても難しく、先生を含め受講生の皆さんはどうやら灘中に入れそうにないことが分かりました。

続いて、哲学者の鶴見俊輔が1979年に行った一般向けの文章教室で話した内容をまとめた『文章心得帖』(ちくま学芸文庫)から
鶴見氏が考える理想の文章の条件が書いてある部分を皆で読んでいきました。

鶴見氏は必要なのは、①誠実であること ②明晰であること ③わかりやすいこと だと言っています。
 ①は、人が作った言い回しなどを使わずに、普段使っているような自分の言葉で書くこと
 ②は、自分できちんと定義できる範囲の言葉で書くこと
 ③は、読者にとって分かりやすい表現で書くこと だそうです。
 特に高度な知識を持つ人は、「おりていく」ことが必要ではないかということでした。

では、分かりやすく書くにはどうすれば良いか。
文章をまとめていく段階として①思いつき ②裏付け ③うったえ の順番があるそうです。
 ①は、発想、気づき、ひらめき のこと
 ②は、①の根拠を調べて確認する作業のこと。文章にリアリティを持たせるうえで、重要になります。
 ③は、何が書きたかったかを明確に示すこと なのだとか。
最後まで書いても分かりにくいときは、②③を繰り返しましょう。
以上は、コラムなどを書く場合で、小説を書くときはもう少し複雑な作業になるそうです。

休憩をはさんで後半は、ひらがなについての興味深いお話です。
50音には、各行ごとに色や形の特徴的な感覚があるというのです。
そこで、絵本『かっきくけっこ』(作・谷川俊太郎/絵・堀内誠一 初出・ひかりのくに/再版・くもん出版)を紹介してくださいました。

この本は、1972年に ひかりのくに から出版され、高科先生はそのバージョンを持って来てくださったのですが
そのバージョンには、ことばパフォーマーの はせみつこ さんたちが朗読したソノシートがついていて、今回はその音声を聞かせていただきました。

言葉というものは発声しないとわからないこともあって、ひらがなの各行には特徴的なイメージがあります。
ひらがなに濁点がつくと、また違ってきます。
ひらがなの持つ柔軟性と、その中から生まれてくる言葉遣いに気をつけて、かなを使うようにしましょう。

最後に、前回の課題「あるく」の参考文献として、朝日新聞に寄稿した平民金子さんのコラム『神戸の、その向こう』より
「心の中に きみだけの花を」「ふいに特別な 深夜散歩」を見ていきました。
平民さんのコラムはいつも、日常のほんの一瞬を捉えた “この人にしか書けない文章” になっているので、先生は以前からよく紹介してくださいます。
ユーモアやペーソスがあり、具体的に分かりやすく、読んでいると情景が浮かんでくる…彼のような文章が自在に書けたらいいですね。

さて、今回の課題のテーマは「たべる」です。
食べること、食べたこと(思い出)、食べ物についての考えなどについて、自由に書いてください。
食べることをテーマにした、創作でもかまいません。
枚数も自由ですが、できるだけ人に伝わるように書くためには、それなりのボリュームが必要になってきますね。

ということで、次回12月23日の授業の時までによろしくお願いいたします。

授業はここまででしたが、終わった後で生徒さんから
一つの作品の中で時間が行き来したりすることがある場合、一行空けたりするのはどうしたらよいか?という質問がありました。

文章には、まず “音節” があります。音節とは「わたしは」など、これ以上小さくできない(意味のある)言葉の単位です。
それを集めたものが “文章” で、文章を集めたものが “段落” です。段落は、意味がそんなに違わない文の固まりです。
段落は、あまり長くなりすぎると読みづらいので、4〜5行から長くても7〜8行を目安にすると、書き手も読み手も分かりやすいです。
そこから別の文章に移るときに、“改行” をします。
改行をしてからも話は続くのですが、そこで今まで書いてきた時点から時間が経ったり、別の視点から書くことになる場合は、
そのまま続けて書くと話が分かりにくくなるので、“一行空け” たりして進めるのが、常套的な手段になります。

また、会話文の書き方についても質問がありました。
先生の考え方では、(慣れないうちは)会話文と地の文は分けて書いた方が良いでしょうということです。
でも会話だけで続けていくと、話し手の様子が分かりにくくなるので、「…」の前後で情景が分かる文章を入れる場合もあります。

という具合に、このクラスでは先生のお話だけでなく、生徒さんからの質問で思いがけず授業が盛り上がることも多々あります。
皆さん意欲的に授業に参加されているので、2時間半があっという間な感じがします。

次回の授業まで一か月ほどあきますので、受講生の皆さんは体調を崩さぬよう気をつけて、課題執筆に務めてください。

なお、高科先生はつねづね課題以外の文章についても、何か書いたものがあれば読んでアドバイスしてくださるとおっしゃっているので、
皆さんどんどん書いていってくださいね!

 


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