絵話塾だより

Gallery Vieが主宰する絵話塾の授業等についてのお知らせです。在校生・卒業生・授業に興味のある方は要チェック!

2025年3月22日(土)文章たっぷりコース第6期・第8回目の授業内容/高科正信先生

2025-03-28 17:03:54 | 文章たっぷりコース

この日、今年初めてツバメを見たと話し始めた高科先生。
早速、ハクモクレンの花を見たこと、イカナゴの不漁(海の生態系を守らなければ!)、
狭山事件の被告・石川一夫と歌手・いしだあゆみが最近亡くなったことなどなど、
いろんな話題の最後に、「それでも春はやってくるのです」と。

テキスト『「書く力」私たちはこうして文章を磨いた』(池上彰・竹内政明 著/朝日新書) は
第二章 本当に伝わる「表現」とは の続きで
・「です・ます」調と「だ・である」調の書き分け
・ことわざの使い方
のところを皆で読んでいきました。

「です・ます」調で書く文章を「敬体」、「だ・である」調で書く文章を「常体」と言い、
過去形はそれぞれ「でした・ました」、「だった・であった」と書きます。
そして敬体で書かれた文章は柔らかく優しい印象に、
常体で書かれた文章は硬派で引き締まった印象になります。
また、作品の中でこの2つを混在させることは基本的にありません。

そこで、同じ昔話を再話した絵本から
敬体で書かれた、福音館書店 日本傑作絵本シリーズ『かちかちやま』(著 おざわとしお・絵 赤羽末吉)
常体で書かれた、岩波書店 てのひらむかしばなし『かちかちやま』(著 長谷川摂子・絵 ささめやゆき)
2つを読み比べて、受ける印象の違いを見ていきました。

 

 

印象の違いを知るはずが、衝撃的な内容にみんな驚いているのがおもしろかったです。
(タヌキがおばあさんを騙して殺し、ばばあ汁にして食べてしまうという残酷さ!)

ちなみに高科先生は、絵本でもお話の内容で常体か敬体を使い分けているそうで
読み手に何をどう伝えようとしているかで書き方を変えましょう、とのことでした。

ことわざと慣用句の使い方について、基本的には読み手が知っているネタで、
自分が言いたいことをパロディ化したり、センスのある茶化し方で
「うまいこと言う」のを良しとします。
そのためには、言い換えたりする「言葉遊び」をよく知っていると良いとので
辞書を引いて調べたりしてきちんとした知識があると、うまく書けるようになります。

ここで性別で常体と敬体の書き分けをするかという質問がありましたが
性別というより、自分の中でルールを作って書き分ける意識を持とうとのことでした。

昔話は基本的にすべて過去形で書かれますが、
同じ敬体でも「だったのです」と「でありました」では印象が違うため、
どちらにするかは声を出して読んでみてから決めるとよいでしょう。

なお、断定や強調するときに使われる「〜のです・〜のでした」「〜のだ・〜のである」は多用せず、
どうしても使いたい時にだけ使うようにしましょう。

休憩をはさんで、井上ひさしの『日本語相談』(朝日新聞出版)から「かっこの中の句点はなぜあるのか」を見ていきました。
文章の終わりを表す句点は、もともと日本語ではつける習慣がなかったのが、
昭和21年と25年に文部省国語科が「くぎり符号の使い方」を発表したことから始まったので、実際にはかっこ内に句点を打つ必要はありません、とのこと。
今では学校と公用文の中でしか使われていないそうです。

続けて、中村明の『文章作法辞典』(講談社学術文庫) から「打つも打たぬも思いやり」を見ていきました。
読点は読みを助けるために打つものですので、原則ルールが17個も書かれていました。
この全てに当てはめる必要はないかもしれませんが、読み手ができるだけ楽に文章を正確に理解できるように、
それぞれのケースに合わせて工夫してください。

   

そして、特徴的な文章を書く 夢枕獏の『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』(徳間文庫) から
1巻の第2章「暗夜秘話」の冒頭に、高科先生が良いと思う読点の打ち方を入れた校正を見ていきました。
作家によって、いろいろなルールを使っているのですね。

井上ひさし繋がりから、彼の有名な言葉も教えていただきました。
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、
まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでもゆかいに(書きましょう)」
こういう心がけで、文章を書きたいものですね。

さて、この日の課題は
「これ、ほんとのこと? と読む人に思わせるようなウソ話・ホラ話を書く」です。
本当はオリジナルの話を書いてほしいのですが、難しかったら昔話の再話でも構いません。
その場合は、3度の繰り返しを使うとよいでしょう。
今回は、文字数に制限があります。原稿用紙5枚で書いてください。
1枚目の始めでタイトル周りに100字使いますから、本文は1900字です。
できるだけ最後の1行まで書いて、終わりにしてください。
そのためには、お話の構成を練ることが必要です。行数配分を計算して、書いてください。
導入は何行くらい、盛り上がりは何行くらい、ラストにどのくらい必要か…
考えながら書いてみる練習をしてみましょう。

難しいかもしれませんが、チャレンジしましょう!!
提出は次回の4月5日(土)です。よろしくお願いします。

 


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2025年3月1日(土)文章たっぷりコース第6期・第7回目の授業内容/高科正信先生

2025-03-04 16:13:08 | 文章たっぷりコース

また大雪の降っている地方があるということで、雪崩などの事故でもし雪に埋もれるようなことがあったら、体を丸くして顔の前に空間を作ると息が出来るようになるそうです。
とっさにそんなことができるかどうか分かりませんが、知識はあった方が良いですね。
そこからはまた、身の周りに目を向けると季節の移り変わりを感じられるというお話を。
この季節にウグイスを見かけても、まだ恋の季節ではないので「ホーホケキョ」とは鳴かないのだそうです。
そして、カモが凍った水田で動けなくなっているところを、鎌で脚を刈って捕まえることがあるとおっしゃるので、皆「へえ〜」という顔で聞いていたら
生前の笑福亭仁鶴も十八番にしていたという落語『鉄砲勇助』の中にあるカモメのエピソードでした。
※ ウグイスの鳴き声の件は本当です。

授業本編は、テキスト『「書く力」私たちはこうして文章を磨いた』(池上彰・竹内政明 著/朝日新書) から
第二章 本当に伝わる「表現」とは の続きで
・なぜその本が好きなのかを分析してみる
・「控えめな表現」の効用
・「たとえ」の作り方
のところを皆で読んでいきました。

何度も言われることですが、文章がうまくなるにはとにかく本をたくさん読むのが良いそうです。
そして、その本のどこが好きかを自分で分析してみる、という行動の積み重ねが、文章を書くうえでの栄養分になっていく。
さまざまな出版社から出ている『類語辞典』などで、違う言い回しを見つけるのも良いそうです。

同じように言っていても、褒めてから貶すのと、貶してから褒めるのとでは、受け取る側の印象が違ってきます。
たとえ言っていることが正しくても、批判するときは8割ほどの熱量に収めて、反感を買わないようにしましょう。
日本人は基本的に「判官贔屓」が多く、言い過ぎると逆効果になることもあるので、十分気をつけましょう。
毒気を含みながらもユーモアでスッとかわすやり方は、先ほども出てきた落語や講談も参考になるそうです。

  

次に、前回の授業の時に書名が出た、町田康の『俺の文章修行』から
「これまで読んできた本の影響」 の「 千回読んだ『ちからたろう』がつくった文章の原型と世界観」
のところを見ていきました。
『ちからたろう』はむかしばなしですので、いろんな人が絵本にしていますが
ここでは、先生がポプラ社から出ている『ちからたろう』(いまえよしとも 文・たしませいぞう 絵) を読み聞かせてくださいました。

 

町田さんは子どもの頃にこのお話を読んで、①この世には貧しい人と豊かな人がいる、②貧しい生まれでも力があれば成功者になれる、③この世には善と悪があって悪は善によって滅ぼされる(最後に善は勝つ)という世界観 が分かったとか。
それにより、彼が “文章を書くときの現実と文章の「変換プロセッサ」の原型(大まかな設計図)” ができあがったのだそうです。

「文章がうまくなるためには、たくさん本を読むこと」は当然ですが
絵本が書きたい、小説が書きたい、からといってもそのジャンルだけを読むのではなく、違うジャンルの本を読むことが近道になる、というのが高科先生の持論です。
「読んだ中から好きな本を見つけ、分析する」というのは、テキストの中で池上さんと竹内さんが言っておられるのですが、先生はそのうえで「好きな文章を書き写す」ことも薦めておられました。
「、」「。」改行やオノマトペなどを真似をしているうちに、自分の中に文体ができてくるからです。
それは、絵を描く人が模写をするのと同じです。
絵話塾・絵本クラスの講師でもある絵本作家の荒井良二さんも、毎日短い時間で名画の模写をしていると言っておられました。

「たとえ」をうまく作るには、自分の引き出しの中の言葉をたくさん持つようにしましょう。
うまい比喩が使えるのは効果的ですが、直喩は得意顔に見えることもあるので注意が必要です。
倉嶋厚・原田稔両氏の著作・編集による『雨のことば辞典』(講談社学術文庫)や、高橋健司の『空の名前』 (角川書店) のような類の本にお世話になるのも良いでしょう。

◎とにかくいっぱい書かないと文章はうまくならない、ということを頭においておきましょう。

 

子どもは絵本の内容を全部覚えていても、何度も読んでほしいとせがむことがあります。
哲学者・鶴見俊輔は、息子の太郎が幼い頃、毎晩のように『おだんごぱん』(せたていじ 訳・わきたかず 絵/福音館書店) を読み聞かせていたそうです。

ここで生徒さんから、いっぱい読む他ジャンルの本としては、どんなふうに広げていったらよいのか?という質問が。
先生は、まず手始めに身近な人が「おもしろかった」と言っているものを試したり、好きな本の作者が書いた違う作品を読んだりするのが良いとおっしゃっていました。
ある時宇野亜喜良は、江戸時代の風俗を描く必要ができたため、たくさんの資料を読んで学び、ついにそのジャンルの絵が描けるようになったといいます。宇野氏ほどのアーティストでも、「知らないことを学ぶ」ことは重要なのですね。

後半は課題について。前回は「昔話の再話を書く」というテーマでした。
生徒さんそれぞれが違うお話を書いてこられましたが、先生が共通して足りないものがあったことに気がついたそうです。それは「繰り返し」についてです。

そして、『つるにょうぼう』(矢川澄子 作・赤羽末吉 絵/福音館書店) と、『王子様の耳はロバの耳』(岡田淳 作・はたこうしろう 絵/フェリシモ出版) を読み聞かせてくださいました。
どちらもよく知られたお話を、作家独自の解釈による優れた絵本に仕上がっています。

 

この2作でも「繰り返し」が出てきます。むかしばなしでは特に、エピソードやオノマトペの繰り返しをうまく使って書くことが重要なのだそうです。

最後に、この日は「小道の散策」という課題が出ました。
前回紹介してくれた長田弘の『小道の収集』(講談社) から「小道の収集」を読んで、実際に身近な小道を散策したり、以前に小道を歩いた時のことを思い出して、その時のことを文章にしてください、というものでした。

 

次回22日(土)の授業の時に提出してください。よろしくお願いします。


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2025年2月15日(土)文章たっぷりコース第6期・第6回目の授業内容/高科正信先生

2025-02-16 20:58:36 | 文章たっぷりコース

この日は、神戸市在住の絵本作家・山本孝さんのお話から。
山本さんは、高科先生が専門学校で絵本の授業をしておられた時の生徒さんで、後に絵本作家になられました。
当時から面白い絵を描いていたので、今も新刊が出ると先生はチェックしておられるとか。
山本さんは、前回 みやもとかずあき さんのデビュー作『あおくん ふくちゃん』(講談社) を紹介してくださる時も話に出た
「行事絵本」をたくさん出版しておられるそうです。絵本にもいろんなジャンルがあるのですね。

さて、授業の方はテキスト『「書く力」私たちはこうして文章を磨いた』(池上彰・竹内政明 著/朝日新書) 第二章 本当に伝わる「表現」とは の続きを皆で読んでいきました。
・短文の効用
・とにかく「削る」を練習する
・簡潔であることの強み
・「誰に読んでもらうか」を意識する
・好きな表現は「使ってはいけない表現」?

文章を書いていると、どうしても長くなってしまいます。が、一文の長さは40〜50字程度が読みやすいです。
それ以上長くなると分かりにくいし、リズムもつかみにくくなります。
そして、一段落は5〜6行から7〜8行程度とし、改行して次の段落に続いていきます。
その程度が読み手が読みやすい目安になると覚えておきましょう。

文章の書き方の基本として「5W1H」がありますが、必ずしも全部が必要なわけではなく、
なくても伝わる場合はなくても良いということです。(その分短くできる)

簡潔な文章とは、これ以上削ることができなくて、強く心に刻まれます。
そのような文章を書くためには、削る練習をすることが重要です。
毎日書いては削る練習をして、名人を目指してください。

ここで生徒さんから
「絵本なら対象年齢を考えながら書けますが、エッセイの場合は対象はどんな読者を想定すれば良いのですか?」という質問が。
エッセイの場合は、自分が書こうと思ったことを普遍化させる必要があります。
始めは身のまわりのことを書いていても、徐々に一般的な読み手に共感を得られるように進化させてください。
そのためには、エッセイの達人の文章を読んで、これは良いなと思うことをどんどん試してみてください、とのことでした。
先生お薦めのエッセイストは、幸田文とかだそうです。

そして、以前のクラスで教科書にも使われた辰濃和男の『文章のみがき方』(岩波新書)から
1.書き直す
2.削る の箇所を見ていきました。
「1.」では辰濃さん自身が書き直すための心得が①〜㉒まで挙げてあり、どれも納得できるものでした。
「2.」には、井伏鱒二が『山椒魚』を自選全集に収めるために、発表から60年以上の時を経て最後の500字を削ったというエピソードが書かれていました。
作家というのは、それほどまでに自分の文章について考え、より良くするために推敲を繰り返すものなのですね。

 

「推敲」について、先生はまず「時間を置いて読み直す」のが基本だとおっしゃいます。
文章を書いたら、必ず「、」「。」で区切って音読し、耳触りやリズムが気持ちよく流れているかチェックします。(慣れてくると黙読でも分かるようになる)
そのうえで迷ったら削る、困ったら改行することを心がけましょう。(ごく稀に文章を足す場合もあるのはある)
違う意図であると取られないように、違う意味と思われないように、できるだけ正確に伝えるために、視覚や聴覚に訴えるような文章を書くようにしてください。

町田康は『オレの文章修行』(幻冬舎)の中で、昔話の「ちからたろう」を1000回読んだと言っており、そこから文章の原型を学んでいったそうです。
これは極端かもしれませんが、先人から学ぶのも役に立ちます。

 

推敲にまつわるお話として、高科先生ご自身が『オレのゆうやけ(フレーベル館)を書いたとき、E.L.カニグズバーグの『クローディアの秘密』(松永ふみ子 訳/岩波少年文庫)のような、誰も書いたことがない家出のお話を書こうとしたのだそうです。
そして、ラストにストーリーとは関係ないシーンを入れようとしたのですが、編集者にそこをまるごと削らされたとか。
作家はエンディングを重視しがちですが、個人の好みの問題もあり、必要不可欠なエンディングのボーダーライン(あっさり or くどくど)を決めるのも難しいものです。

先生の持論によれば、
大人の文学は問いを発するもの(愛とは?人生とは?幸せとは?=不条理、読後に余韻を持たせられるもの )であるのに対して、
子どもの文学は答えを表すもの(愛とは○○・人生とは○○幸せとは○○=条理、めでたしめでたしで終わるものが多い)である とか。
エンディングを考える時の参考になるかもしれません。

 

最後に、詩人・長田弘の『小道の収集』(講談社)から、散文詩「最初の質問」「ふりだしに戻る」を読んでいきました。
「最初の質問」には、簡単なものから深いものまで、たくさんの質問が書いてありました。
「ふりだしに戻る」には、タイトルのような “考える言葉 “ について書かれていました。「おいしい」とか「かわいい」のような “考えない言葉“ ではなく、時代とともに移り変わる生活に根ざした“考える言葉 “ を使うと、文章に奥行きが出ると言うのです。
デジタルで文章を書くのが主流になっている今も、自分の胸の内にある辞書に “考える言葉 “  を豊かに持つことが、人生の豊かさにつながる、と。
言葉を一番信じている詩人の長田さんの文章には、引きつけられるものがあります。

教室にあった『森の絵本』(講談社)は、長田さんの文章に荒井良二さんが絵を付けたもので、先生が読み聞かせてくれました。

「言葉を信じる」ということは、「言葉のもつ力を信じる」とも言えます。
言葉は人の心を動かすことができるのです。
いまの世界では、別の意味で言葉の力を持つ人が多くなっていますが、それに抗えるのもまた言葉(の力)なのです。

今回の課題は、長田さんの「最初の質問」に答える、というものです。
どの質問にどんなふうに答えるかは自由です。(基本は一問一答)
YES/NOよりは少し長めに。そして、文体も元の問いに近いものにしてください。
たくさんの質問の中から、自分の意引き寄せられるものを選んで答えてください。

提出は次回3月1日(土)の授業の時です。よろしくお願いいたします。

 

 


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2025年2月1日(土)文章たっぷりコース第6期・第5回目の授業内容/高科正信先生

2025-02-05 20:57:30 | 文章たっぷりコース

この週の高科先生は、水曜日のわくわくコースも担当されていたのでお話の内容が重複している部分もありますが、タイムリーな話題につきご容赦ください。

まずは今年は2月2日が節分ということで、絵話塾卒業生の みやもとかずあき さん*が、2023年講談社の絵本新人賞を受賞され、『あおくん ふくちゃん』という節分をテーマにした絵本で絵本作家デビューされたというお話から。
* 講談社のサイトには、みやもとさんが絵本作家を目指してから今回の受賞、出版に至るまでの経緯をご自身の文章と4コマ漫画で詳細に綴った連載記事がありますので、ぜひご覧ください。

ちなみに、絵本には節分やクリスマスなどをテーマにした「行事絵本」というジャンルがあり、毎年そのシーズンになると書店の目立つところにまとめて並べられるので、よく売れるそうです。

そして、テキスト『「書く力」私たちはこうして文章を磨いた』(池上彰・竹内政明 著/朝日新書) 第二章 本当に伝わる「表現」とは の箇所を皆で読んでいきました。
・わかっていることを、わかっている言葉で書く
・ベタに書くことを恐れない
・感情は抑える
・ツッコミを先回りする のところまで。

自分がわかっていることを、わかっている言葉で書かなければ、読者に伝わるはずがありません。
ですから、自分の中にわかっている言葉を増やすことが重要になってきます。
できるだけたくさんの言葉を身につけ〜たとえば雨の種類や色の名前など〜表現の枠を広げて、伝わる内容を増やすようにするのです。
テキストの中に「アイデンティティ(自己同一性)」という言葉が出てきて、著者のお二人は「腑に落ちないので使わない」と言っておられるのですが、この言葉でしか表せない概念があるのもまた確かです。元は哲学用語で、日本にはなかった言葉だそうです。

  

1969年に出版された『くまの子ウーフ』(神沢利子 著・井上陽介 絵/ポプラ社)は、ウーフがぼくは何でできているかを考え、「ぼくはぼくでできている」ことを知るお話。
70年代には 山中恒の『ぼくがぼくであること』(岩波少年文庫) などが、日米安保条約に反対の学生運動で疲弊した若者たちに支持された一方で、
アメリカでも、60年代にベトナム戦争で心身ともに傷ついた若者たちが、レオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』(藤田圭雄 訳/至光社) を読んで、何のために生まれてきたのか、生きる意味とは何かという問いの答えを探すムーブメントがあったそうです。

これらはみな「アイデンティティ」に関するお話で、子ども向けの文章で深い内容について語っているといえるでしょう。

次いで、今年1月13日(成人の日)の天声人語を見ていきました。
前々回の授業でも紹介された茨木のり子の詩集『おんなのことば 文庫』(童話屋) から『汲む』を引用して、新成人へのエールを綴っています。

コラムは短いので、茨木のり子・石垣りん・谷川俊太郎など詩人の言葉をよく引用しています。
魅力的な文章を書くうえで、詩を読んで自分の引き出しにしまっておくのもよいでしょう。

  

休憩をはさんで、前回も見ていった 中村明の『文章作法辞典』(講談社学術文庫) から、
「読まれなければ始まらない」の箇所を見ていきました。
その中では、大正時代に森鴎外の書いた『山椒大夫』と、昭和に寺村輝夫が書いた『一休さん』を比較したり、淵悦太郎の『悪文 伝わる文章の作法』(角川ソフィア文庫) の中で紹介された文章を例に挙げて、説明しています。

文章中に漢字が多いと紙面が黒っぽくなって難しそうに思えますが、逆にひらがなばかりでもかえって読みにくくなったりするので、対象となる読み手のことを考えて加減しましょう。

世にある悪文を紹介し、その文がどうしたら分かりやすくなるかを解説しているのが千早耿一郞の『悪文の構造-機能的な文章とは』(ちくま文庫) で、興味がある方はチェックしてください。 

ここで生徒さんから子ども向きの読み物の変遷についての質問があり、原題では多様性だったり残酷性だったり、さまざまなコンプライアンスが昔と変わってきています。
今の時代の作家たちは、新しい生き方を模索して移り変わっていくしかないといい、一方で受け手は作品が描かれた時代をきちんととらえる意識を持つ必要があります。

それらをふまえて、今回の課題は「昔話を書く(再話)」です。
よく知られている桃太郎とかシンデレラなど、世界中の昔話を自分の中でもう一度組み立て直して、新しい物語に仕上げるというもの。
登場人物やストーリーの流れ、結末などは変えずに自分なりの文章で構成してください。
何かを見ながら、細部までなぞる必要はありません。自分で覚えている範囲で結構です。
ただ昔話なので、語り手が話す「むかーしむかしあるところに」というような語り口調で書いてください。
聞き手は主に子どもと考え、やさしい言葉で、文体やリズムを考えましょう。
長さや、書き方(「」の使い方や改行など)も自由です。
このように、今回は「物語を作る」ということをしてみましょう。

昔話の様式として
①良いおじいさんと悪いおじいさんなど、対照的な登場人物が出てきて、彼らが起こした行動で結果が変わってしまう とか
②3匹のこぶたなど、1回目・2回目・3回目とどんどん話が進んでいく などがあります。

柳田國男の『日本の昔話』(新潮文庫)や、小澤俊夫の『こんにちは、昔ばなしです』(小澤昔ばなし研究所) などには、たくさんの昔話が載っています。

 

好きな昔話を見つけて、うまく自分なりのお話に仕立ててください。
締め切りは次の2月15日の授業の時です。よろしくお願いいたします。

 


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2025年1月18日(土)文章たっぷりコース第6期・第4回目の授業内容/高科正信先生

2025-01-30 21:29:11 | 文章たっぷりコース

2025年が明けて初めての授業は、体調を崩してお休みされる人もおらず、
高科先生もお正月をのんびり過ごされたようで、皆が元気で教室に集まることができて、良い滑り出しとなりました。

まず、テキスト『「書く力」私たちはこうして文章を磨いた』(池上彰・竹内政明 著/朝日新書) 
第一章「構成の秘密」の続きを交代で読んでいきました。
・池上式、文章構成力向上法 かっこいいブリッジのかけ方①
・「部品」を集める感覚で、知識をストックする かっこいいブリッジのかけ方②
・職業病も悪くない かっこいいブリッジのかけ方③
・思考に奥行きをもたせるトレーニング法 かっこいいブリッジのかけ方④
・最後をちょっと緩める 結論と読者をつなぐブリッジのかけ方

池上氏によれば、かっこいいブリッジをかける練習方法として
新聞のコラムの冒頭を読んで、先の展開を予想してみることを薦めておられます。
最後まで読んで、予想が当たったら勝ち、外れたら負け、というゲームだそうです。

ストックしている「部品」(エピソード・知識)は、いつ使える時が来るのか・来ないのか分かりません。
けれどもその「部品」がたくさんあれば、より読者の興味を引く構成の文章を書くことができます。
予想だにしなかったような場面で役に立つので、「部品」はせっせと集めておくのが良いそうです。

字幕付きの洋画を見ていると、俳優が喋っている台詞と字幕が違うことがあります。
翻訳者が、文字数の制約がある中で台詞のニュアンスを伝えていることに気づくのも、
(知識のある)文筆家の職業病でもあり、楽しみでもあるそうです。

一般の人が文章を書く際のトレーニングとして、竹内氏は極悪人の弁護をする立場になったら
自分ならどうするか、という思考実験をやってみることを薦めておられます。
あえて逆を唱えて、世の中の常識をとらえ直すと、物事を多角的にとらえることができるようになるとか。

小説でもエッセイでも、メインのストーリーを書き終えた後に
ほんの少しだけ蛇足を入れると、それが余韻を生んで、読者の心にいっそう沁みるようになります。
中村明の『文章作法辞典』(講談社学術文庫)では、その辺りを吉行淳之介の言葉を引用して
「ギュッと締めて、フワッと放す」と説明しています。

難しいかもしれませんが、このようなことを実践してみると、より良い文章が書けるようになるそうです。

その後は、前回の課題「わたしは○○です」〜自分を何かに置き換えて、
何かになってみてそのものの視点で書く〜についてのお話でした。

皆さんが提出した文章の中では、お地蔵さんになったりクモになったり、外国人の女性になったり、
楽しい作品が揃ったようです。

参考作品として、長新太の『ぼくはイスです』(亜紀書房)を読み聞かせてくださいました。
いつも何かに腰掛けられているイスが、部屋を飛び出していろんなところに行き、
さまざまなものに腰掛けていくお話です。
お話がどんどんエスカレートしていくのが、楽しいですね。

 

その他に、くどうなおこの詩集『のはらうた1』(童話屋)から、
かぜみつお の「し」をかくひ、かまきりりゅうじ の「おれはかまきり」、
みのむしせつこ の「かぜにゆられて」の3編を見ていきました。
作者は子どもの頃から、ごくあたりまえに「何かになってみる」ことをやっていたそうです。
有名な「てつがくのライオン」も、ライオンが哲学をやってみたら…という仮定の詩です。
子ども向けのような簡単な言葉でも、受け取り方によって深い意味が込められていると考えることもできます。

どんなものでも、文章を書く際は、その人にしか書けないエピソードを書くと、おもしろいものになります。

さて、今回の課題は「冬の光」です。
冬を思わせる内容なら、実際の光でも、何かに光を喩えても、何かを通して見た光でもかまいません。
光はローソクの炎でも、クリスマスのイルミネーションでも、ルミナリエでも、どんな光についても。
創作でも、エッセイでも、自由に書いてください。
ただしこの日習った書き出しと終わり方、途中のブリッジのかけ方に注意することだけは忘れずに。

課題については、文章教室なので締め切りは設けていますが、間に合う・間に合わない より
書ききる・書き終える ことを重要視してください。
遅れても大丈夫です!

では、課題「冬の光」よろしくお願いいたします。


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