絵話塾だより

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2023年3月25日(土)文章たっぷりコース第4期・9回目の授業内容/高科正信先生

2023-03-29 17:05:38 | 文章たっぷりコース

この日のテーマは、「子どもと家族」についてでした。

1950年代に始まった日本のテレビ放送は、最初はアメリカのドラマや娯楽番組を流していましたが、60年代になると独自の作品が増えてきました。
向田邦子や山田太一などの脚本家が描いたホームドラマは、その時代の日本の家族観・家庭観をよく表しています。
74年に放送された向田邦子の『寺内貫太郎一家』は、頑固親父を中心に祖母・両親・孫の3世代が食卓を囲み、毎回さまざまなゴタゴタがあっても、最後には「家族って良いよね」という感じで終わるものでした。
ところが77年の山田太一の『岸辺のアルバム』では、平凡に暮らしているように見える両親と姉弟の4人家族が、実は秘密にしている病んだ部分があって、最後には多摩川が決壊して家が流されてしまい、残されたのは家族のアルバムだけ…というショッキングな内容でした。

映画作品に目を向けると、80年代には森田芳光監督が『家族ゲーム』で家族の崩壊を描き、90年代には相米慎二監督が『お引越し』で離婚した両親の間を行き来する小学生の娘を、2000年代に入ると是枝裕和監督が『誰も知らない』で親に捨てられて子供たちだけで暮らす兄弟たちの壮絶な生活を描いて海外で評価を得ました。
現在では、家族といっても血縁関係がない(養子など)ものや、LGBTQ+の親を持つ子ども、再婚の親同士の連れ子など、家族も複雑化しており、世界的にも問題になっています。

寺内貫太郎一家 https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/d0087/

岸辺のアルバム https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/d0038/

家族ゲーム https://www.nikkatsu.com/movie/26029.html

お引越し https://movies.yahoo.co.jp/movie/151912/

誰も知らない http://www.kore-eda.com/daremoshiranai/index.htm

子どもの文学の世界では、タブーとされているものがあります。
不幸な終わり方をせず、最後はバラ色の未来を予感させることや、セックスの話題を出さないことなどです。
しかし現実には、両親の不仲や老い、死、暴力、子どもの迫害などが存在しています。

松谷みよ子は1964年から始まった『ちいさいモモちゃん』シリーズで、痛みを果敢に描く姿勢を見せ、評価が上がりました。
この日は『モモちゃんとアカネちゃん』の「ママのところに死神が来たこと」の章を読み、やさしい言葉で父親の不在の恐怖を描いていることを知りました。

 

ちいさいモモちゃん https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205799

モモちゃんとアカネちゃん https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205859

神沢利子も、『いないいないばあや』(岩波書店/1978)で家族の負の側面を描きました。

いないいないばあや https://www.iwanami.co.jp/book/b254575.html

長谷川集平の『あしたは月よう日』(文研出版/1997)は、ありふれた家族の休日を描いたものですが、実は翌日震災があって平和な日常は消え去ってしまうというお話です。(震災のシーンは出てきません)

 

あしたは月曜日 https://www.shinko-keirin.co.jp/bunken/book/9784580812123/

高度成長期には右肩上がりだった日本の社会も次第に停滞が始まり、消費は美徳と言われていた時代は終わりました。
だからこそ、子どもの文学の中でも「家族って何なの?」という話が描かれるようになってきたのです。

休憩を挟んで後半は、教科書『文章のみがき方』(辰濃和男 著/岩波新書)の「Ⅱ さあ、書こう」から、「11. 正確に書く」「12. ゆとりを持つ」のところを、交代で音読していきました。

11. 正確に書く では
言い間違いのしやすい言葉や、他の文章を引用する場合の確かさなどの留意ポイントについて書かれていましたが、国語のテスト問題に関する問題提起もありました。
「この言葉は何を表しているでしょう?」という問題がよくあります。
高科先生の文章も問題に使われることがあるそうですが、たとえ作者でも答えを一つに絞れないものが多いとか。
というのも文学や詩の作者は、敢えていろんな読み方ができるように書くことが多いだそうからです。

12. ゆとりを持つ では
文章にユーモアが入っていると、書くほうも読む方もゆとりが持てるというのです。
例文に上がっているのは小沢昭一です。小沢や永六輔が活躍した昭和の時代はそれで良かったのでしょうが、SNSが盛んになり、誰でも気軽に自分の文章を人に読んでもらえるようになった現代では、ゆとりを持つのも難しくなっています。

最後は、今回の課題です。

「子どもの頃のいちばん最初の記憶」について。じっくり考えて、どんなことを憶えているのか思い出して書いてください。自分にとって、古い古いうんと小さい頃のことを、自由な形式・長さで書きましょう。
提出は次の授業(4月15日)の時です。よろしくお願いします。

 


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