絵話塾だより

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2024年6月8日(土)文章たっぷりコース第5期・第13回目の授業内容/高科正信先生

2024-06-09 20:50:19 | 文章たっぷりコース

この日は、先日NHKの「日曜美術館」で放送していた、宇野亜喜良さんのお話で始まりました。
生徒さんの中でこの番組を見ていたのは一人だけだったので、先生は残念がっておられましたが、宇野さんがどんなに素晴らしいかを雄弁に語りました。
1934年に生まれた宇野さんは、今年90歳。1960年代からイラストの仕事を始め、1966年に出版された『あのこ』では、今江祥智さんの文章に絵を付けて、高科先生を魅了したそうです。
そして『あのこ』と同じ、宇野さんが絵、今江さんが文章を書いた(ジェームズ・サーバー作を翻訳)、『たくさんのお月さま』(1989年にビーエル出版から刊行)も紹介してくださいました。
※ ちなみに今江さんの翻訳はとてもセンスが良く、マーク・セイラーの『ぼちぼちいこか』(絵 ロバート・グロスマン/偕成社)では、なんと関西弁を使っています。

  

宇野さん関係の出版物は、画集や雑誌の特集もたくさん出ていて、先生はわざわざ特集本の付録になっていたポスターを持って来て、見せてくださいました。
絵話塾の書棚にも宇野さんの本は何冊かありますので、皆さんもご覧ください。

 

宇野さんは、2歳下の横尾忠則と一緒に仕事をされていたこともありますが、横尾さんが途中で「画家」宣言をして自分の表現したいテーマで制作しはじめたのとは対照的に、現在までずっとイラストレーターとして、クライアントからの依頼を自らのフィルターを通して表現し続けています。
どちらも日本を代表するアーティストですので、できれば著作や原画作品を見る機会を持ちたいものです。

さて、今期のテキスト『60歳からの文章入門』(近藤勝重 著/幻冬舎新書)は、P177〜181。この日で最後になりました。
宇宙創世からの歴史を考えると、人類の登場はつい最近であり、生命の誕生は奇跡によってもたらされたものです。
本の中では自分自身の「気づき/ひらめき」を大切にして、文章を書きましょうと再三再四言及されています。
ぜひ気になることや興味を持ったもの、感銘を受けた言葉などを書き留め、そこから書きたいテーマを見つけて文章にしていってください。

続いて、『日本語のレトリック:文章表現の技法』(瀬戸賢一/岩波ジュニア文庫) から、「擬人法」と「共感覚法」のところを見ていきました。

 

「擬人法」では、風を擬人化してその表情を描いたり、何かを運んだりするような例文がたくさん出てきました。あまりにも自然な表現が多いので、比喩と思わずに使っていることが多いのだなとあらためて気づきました。

「共感覚法」では、五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)のつながりによって、何かをどれかに置き換えて表現する方法です。例えば、味には甘味・塩味・酸味・苦味・旨味の5種類しかないのに、「薄味」「懐かしい味」「芳醇な味」などの言葉で、より分かりやすく表現する方法があります。その場合、貸す方と借りる方に組み合わせがあることも覚えておきましょう。しかも、このような比喩そのものがどんな味を表すのかという共通認識(共感覚)となっており、一般的によく使われています。

比喩は、自分が思いついたユニークなたとえ方を使って表現する楽しみもある一方で、それが人に伝わるようなたとえになるよう、さじ加減をうまく行う必要があります。(独りよがりではダメ)

休憩をはさんで後半は前回から見ていっているかこさとし+福岡伸一の『ちっちゃな科学』(中公新書ラクレ)から、かこさんの科学絵本『かわ』宇宙』 『小さな小さなせかい』について書かれている箇所を見ていきました。
それぞれの作品は作り方を変えて制作されていますが、知的好奇心を膨らませるものを文章の中に入れることができるかが大切です。かこさんの場合は、画面の隅々にまで読者のさまざまな「萌えポイント」を描きこんでいるのが大きな魅力になっている、とのことでした。

同じように、知的好奇心を膨らませる絵本として『このよで いちばん はやいのは』(文 ロバート・フローマン/ 天野祐吉/あべ弘士/福音館書店かがくのとも絵本)を紹介してくださいました。

カメから始まり、ウサギ、チーター、海の生き物、鳥の仲間、乗り物、音、光…とだんだん早いものをあげていきますが、最後に「この世でいちばん早いのは、人間の想像力」であると言っています。人は想像することで、一瞬でどこにでも行ける、何にでもなれる、いろんなことを成し遂げられるのです。

それにしても、「言葉」はいつ生まれたのでしょう? 人類の祖先であるホモ・サピエンスが誕生したのは、40〜25万年前。アルタミラやラスコー、ショーベの洞窟に動物の絵が描かれたのは数万年前(これは石器時代にネアンデルタール人が描いたとされる)。その頃から人類は記憶や感情を共有しており、情報を自分以外の人に伝える手段としての「言葉」を使っていたと思われます。
まず「言葉」ができ、文字が生まれ、情報を残せるようになる → 情報を手描きで複製していたのが、版画や印刷によってたくさんの複製が可能になる → インターネットの普及で、ネット上に情報が拡散されるようになる(その中にはフェイク情報も含まれる)

このように、世の中はどんどん便利になっていきますが、便利になりすぎると好奇心や想像力が減少する傾向もあります。

そこで、今回の課題は「しる」「わかる」です。
自分の身のまわりの小さなことでも、宇宙規模の大きなことでもかまいません。
「へえー、そうやったんや」「なんや、そういうことやったんか」という発見や驚きを、文章にしてみてください。
書き始める前に、「どうして○○なんだろう?」と想像してみることから、やってみてください。

今回は書き出しに注意(工夫)して、第三者が読みたくなる作品に仕上げてください。
そして、大事なのは「書ききる」「書き終える」ことです。

提出は、次の29日(土)の授業の時です。今回は猶予が3週間あるので、頑張ってくださいね!


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