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項羽がケインズを知っていたらよかったのに①

2022-10-01 21:32:03 | 日記

項羽がケインズを知っていたらよかったのに①

司馬遷の史記に、項羽が二十万人の捕虜を生き埋めにしたとあります。これを見た時これは誤植で二十人の間違いだと思いました。穴を掘るだけでもたいへんですから。しかしどうやら傍証もあって本当らしいです。この項羽に関する考察です。

 

さて、あるときエジプトのピラミッドをみながらもしやと思うことがありましたので、ちょっと一緒に考えてもらいたいのです。ピラミッドは宗教的情熱に突き動かされた王様が、働くのを嫌がる奴隷を使って建設したのではないのではないかと思うのです。嫌々やってあんな大きなものを作れるわけありません。現代のビルだって作のはもちろん賃金を貰えるからですが、それ以外に作る喜びとか人と一緒に仕事ができるとか一杯他の理由があるからでしょう。いやいや仕事がこんな立派な結果を遺すわけありません。

 そこで次のように想像します。ナイル川のデルタは肥沃で小麦が一杯取れた。王様の倉庫には税金の小麦が積みあがって勿体なくも腐って仕方なかった。それと同時に食べるものがたくさんあるので子供がたくさん生まれた。大きくなった子供は、大勢で山の上に集まってビール(ただし冷えてないしホップも炭酸も入ってないから今のとはかなり違う)を飲みながら暇つぶしに王様の悪口を言い出してそれが王様の耳にも入った。

 王様ははじめこいつらを亡き者にしようとしたが、書記(政府内序列3位の行政官、絵文字を書くインテリ)が「王様は何をしてもいいんですけどそんなことしては、他の人々の信頼を失って恨みを買います。」と言う。(項羽にこの忠告をする人が居なかったことが悔やまれます。)次に、そんな奴は軍隊に徴兵しようと言い出します。書記は「隣に強大な国があれば軍隊に使い道もありますが、今はエジプトが唯一の国ではありませんか。奴らに武器を渡して使い方を教えると宮廷内クーデタをひきおこしかねません。」それでは、税金で集めた小麦をタダで配ってやろうというと、「あいつらはますます暇になって王様の悪口に拍車がかかるだけです。こうなさいませ。立派な宗教施設を建設する労働力に使うことです。近隣に対する国威発揚にもなりますし、これに参加すると神の恩寵があると言えば本人たちにもやる気がでるでしょう。」

 ケインズのいう国家が需要を作り出すことをすでにエジプトの時代からやっていたのではないかと思うのです。しかも書記はこう付け加えた。「最近ある神官(政府内第二位の高官)が石組みの技術を思いついたと言ってました。彼はそれを実験したくて仕方がないようだからこの際彼をいい気持にしてあげればいいでしょう。それに別のある神官は、賄賂が欲しくて仕方ないようだから労働者に配る小麦の中抜きを彼にさせると彼は感謝して王様を支える側に回ると思いますよ。」

古代国家がケインズによく似た需要の作り方をしましたがその際次の要素があったと考えられます。

  • 過剰な労働力を消費するため。労働力が王様に対する反逆をしないようにするため。
  • 宗教の意味合いを持たせ働く人を鼓舞するようにしむける。これで国威発揚になれば安いものです。
  • その施設を設計する人の心の張り合いにも留意する。
  • 途中で中抜きする人の気持ちにも配慮する。善悪を言ってる場合じゃない。政権維持がすべて。

ピラミッドは、このような状況で建設されたと考えられます。なお、それがその後莫大な観光収入を生み出すところまでは、この有能な書記も予想できなかったとみられます。