習近平が狙う「米一極から多極化へ」(ビジネス社 遠藤誉著)③多極化の意味
アメリカ一極が終わることを、23年3月に起こった中東の石油取引を人民元でもできるようになったことが象徴していると説いている。これは世界史の教科書に載るほどの世の中をひっくり返すほどの大事件なのに新聞は小さく扱うし、あの朝から晩までワーワー流している経済番組でもお昼のワイドショーでもあんまり触れていないのは不思議なことだ、とは私の意見でこの本にはそこまで書いていない。
石油取引に使われていたドル(各国の準備通貨として各国間でやり取りされていた)がアメリカに帰ってくるのだから、大インフレになりそうと思っていたら果たしてそうなったようである。これを高金利にすることで防ごうというのは果たして効果あるんだろうか。日本円は米ドル裏付けのおカネだとばかり思っていたがアメリカがインフレなのに日本がそのくらい大きなインフレでないのが不思議なことである。アメリカでも貯金を取り崩して生活する人はいるだろう。その人々がこのインフレ下どうなさっているのだろう。
アメリカは、すでに一極集中の極の座を降りたと見られる。昔は横綱がなく大関までであって、大関は陥落することがあっても不思議なことではない。また盛り返すかもしれないしそのまま年寄り襲名するかもしれない。それからアメリカはもうドルの増刷ができにくくなっているからこれからは財政出動ができにくくなるはずである。これからはブリックス共通通貨をつくるらしい。ただその新通貨の裏付けが何であるのかまでは書いていなかった。
ニクソンショック以降キンの裏付けを失ったドルが増刷されるので経済が大発展大拡張を遂げた。いいことのように思うけど、やたら忙しくなっただけであるような気がする。ニクソンショック以前の日本は、それはそれで別の問題山積であったとは思うが、ゆったりとした時間が流れていてそれでも高度経済成長であった。毎日五時には大抵のヒトは仕事を終えていた。残業というのは特別の日にすることであった。仕事が原因の心の病というのはあるにはあったでしょうが、今のように人口に膾炙していなかった。ブラックとかパワハラとかの言葉はなかった。あの時代の写真をみれば、人々は素朴な笑顔であった、今の様なひきつった笑顔ではない。おカネを増刷するかどうかは、人々の笑顔に直結する。
もしブリックスが発行する新通貨が、いくらでも増刷するものでなければ(すなわちキンとか他の実物資産を裏付けにするものならば)経済の発展は昔のように緩やかになり我々は自分の時間を取り戻せるようになるかもしれない。本は自分のことに引き付けて読まないと面白くも何ともない。わたしは、世界はこれから多極化という部分を読みながらうまく行けばのんびりした時代が戻ってくるのかもと思ってにんまりした。
忙しいとは心が亡びるという字にした人は、フロイトもユングも足元に及ばないくらいの天才だと思っている。もう心の亡びる時代は終わりにしたいとつくづく思う。ちょっと前、忙しいことは良いことだ、私はあなたより忙しいからあなたより立派であると言ってマウントとられたことがあった。つくづくこの人はあほかと思ったことがあった。フランス人は今でも「忙しい」と言ってる人を気の毒な人と見るらしい。