本の感想

本の感想など

奈良国立博物館 四天王像 

2023-07-31 10:41:09 | 日記

奈良国立博物館 四天王像 

 焼き討ちに合うまでの東大寺には、大きな四天王像があったらしい。その像の多分ひな形としてつくられたと考えられる小さな四天王像が展示されているので見に行った。顔にまで彩色されているのでこれが大きければかなりの迫力でいいものである。作家名は書いてなかったが多分運慶じゃないか。

 南山城には多くの小さな寺があることは知っていたが、東大寺別当が引退した後に住む寺であるとは知らなかった。引退したあとは勝手気ままが通るので、ひな形に作った四天王像を

「これ貰っていくよ」

とか言って持って行った別当が居たのだろう。

流石の筒井順慶も山の中の小さな寺までは手が回りかねたと見えて焼き討ちしなかったおかげで後世に残った。ありがたいことである。そのほかの仏像を拝見しても、気楽になった引退した別当の気分が伝わるような優しい感じの仏さまが多い。してみると東大寺別当というのは相当気苦労の大きい仕事であったと考えられる。昔も今も大きな組織のトップに立つのは大変なようである。

 わたしが今の東大寺別当なら、このひな形をもとに3Dプリンターで大きなのを作ってまさか今の大仏の隣に置くわけにはいかないが(第一スペースがない)別の大きな建物をつくって安置して皆に見てもらうところである。または、ARを用いてこれを大仏の隣にあるようにみせるゴーグルを作るところである。(こちらの方がずーと安価で実現するのが早いだろう)

 それに北円堂にある運慶の無著世親像を普段非公開にするとは勿体ない限りである。南円堂にある康慶の仏像も公開するべきだと思う。長いこと飛行機に乗ってはるばるやってきてあの目玉になる傑作を見ないで帰るとは実に気の毒である。お客さんにサービスする精神が皆無である。奈良のヒトはプライドが高くてものつくり(だから工学部が最近までなかった)もサービス業にも向かないとされているが、そのプライドの高さがどこからきているのか知りたいものである。

 

 注目すべきは、南欧と思われる多くの観光客がこれらの仏像に見入っていることである。ローマとかへ行った方が安く済みそうなのにわざわざこんな遠いところにくるのは、日本のルネッサンスである鎌倉彫刻の魅力に取りつかれたというのもありだけど、たぶんヨーロッパの物価がバカ高いことの反映ではないかと想像した。それが証拠に博物館内のレストランは1100円で少ししか載っていない料理であるのに南欧と思しき人々で押すな押すなの盛況である。料理店を出そうという人、今がチャンスですぞ。1500円であの体格のヨーロッパの人の好みにあう料理を提供できれば繁盛するだろう。

 中華圏のお客さんは親を連れ子供を連れ(しかも子供は眼鏡をかけているのが多い)旦那さん大変である。ヨーロッパのお客さんは夫婦ずれで子供がいない。子供は祖父母に預けているのか。しかしこの場合の旦那さんは中華圏の旦那さんより気を使っていそうで痛々しく見える。(実際はどうだか知らないが)気楽に旅行を楽しんでいるとはとても見えない。北米らしき人は見かけなかった。


エレガントな毒の吐き方②(中野信子 日経BP社)

2023-07-29 19:02:16 | 日記

エレガントな毒の吐き方②(中野信子 日経BP社)

 このような本に需要があるということは、日本中が難しい人間関係のなかに入っていることを露呈している。京都の上京中京の近所付き合いの処理は大変難しくてよそから入り込むことは至難の業と聞き及ぶ。その難しいところで用いられている技法が紹介されているのである。日本中の会社などが京都もどきに都市化されたということであるからこの本の売れることは日本社会にとって実は由々しき事態ではないのか。

 どうやら日本人の心性は、地域共同体のような丸抱えしてくれる集団に属しているときに一番安心できて仕事のパーフォーマンスも宜しいようだ。知る人は少なくなったが昭和の会社などは、地域共同体もどきの作用を果たすように心がけたのである。社員運動会とか会社が行う祭りまであったところがある。人事異動は、社員全体の娯楽になって居てだれが出るか残るかでダービーみたいに賭けが行われていた。

 こんなことではいけないと、最近会社などは仕事だけの場にしたのはいいが所属している人々は安心して所属したい欲求の持って行き場がなくなって困ることになる。さらにその今所属している集団から毒のある言葉を投げかけられて心がへこむことがあってはもう立ちいかなくなる。なんとか、あまり波風の立たぬ程度のそれでも十分に毒ある言葉を投げ返さねばならない。そんな人が爆増していることが、この本の売れる背景だろう。

 今 会社に「単属」である人は都市部では女性を含んでほとんど全員である。その唯一単属している会社の中で、毒を吐かれたらどんな気分になるか会社などを経営しているヒトは、お考えになったことがおありだろうか。毒を吐かれた人は、対抗上毒を吐かねばならない、そのために従業員はこの本を買って読んで研究をせねばならない。そのために仕事の効率が悪くなっていることにお気づきだろうか。

 今 私がジョージソロスのような大投資家であったとする。空港を降りたって人々がなんとかあいつに仕返しをしてやろうと考えている眼をしている国と、仕事が欲しいとギラギラした眼をしているヒトがいる国どちらに投資するかはもう明らかである。

 そこで中野信子氏に是非次の題で、一冊書いていただきたい。売れることは保証する。出版は同じく日経PP社が宜しいと思う。

 「経営者に読んでほしい、従業員が毒を吐かなくてもすみ、また吐きかけられることのない会社の作り方」


エレガントな毒の吐き方(中野信子 日経BP社)

2023-07-29 10:11:16 | 日記

エレガントな毒の吐き方(中野信子 日経BP社)

 主として女性で会社などに勤めている人がマウントをとられた時、とられそうになった時どう対応するかを書いたほとんど実用書に近い書物である。その対応の仕方を京都風のやりかたに範をとっている。

 一千年に渡って都会を形成してきて、かつ御所の政治のやり方を庶民がまねてきた歴史があるから洗練した対応の仕方があるのは当然である、そこを学ぼうという策である。毒のある言葉には毒のある言葉で返すがよかろう、ただしその場で喧嘩にならないようにしたい人には価値がある本である。ちゃんと毒のある言葉で返しておかないと(言われっぱなしだと)言われたほうの心が傷ついて出社拒否になるのであろう。

 この技法は本を読んだだけでは身につかないもので、実際に師匠のそばで学ばないといけない、ちょうど落語の間合いみたいなものが必要だからである。ヒトとの会話は水泳や野球のボールを打つなどと同じく体で覚えるものだと思う。しかしそうも言っていられないから急ぐ人にはこの本役立つかもしれない。もちろん男にも役立つ。(さらに毒を必要としないようなマッチョな男でさえ多少は役立つかもしれない。)

 感想は以下の通り。

  • 日本の会社などは女性を戦力にしたのはいいが、人間関係のコントロールに全く意を用いていない。トラブルが起こったらそれは当人たちの問題であり、当人たちの人間ができていなかったせいだとしている。これは、いらざることに女性が心血を注いでいることになるので会社としてもパーフォーマンスが低下することを意味する。あんまり放置しすぎると会社がつぶれてしまうだろう。会社はこの本を買って全社員に配布すると予防策にはなるだろう。これが幻冬舎ではなく日経BPから出版されているのは意味のあることである。

 今は個人で買っているようだがそれでも平積みされて(いかに多くのヒトが会社などの人間関係に悩んでいるか)大量に売れているようである。わたしならこの本を赤い表紙にして胸ポケットに納まるくらいにして売る。これを見えるか見えないように胸ポケットに入れておくのである。毒を吐いてくる同僚には威圧になるであろう。

  • 著者(美人である)の写真があまりにも大きく強調されている。これからの本は著者の容貌も売れ行きに関係するかもしれない。そう言えば養老孟司さんも司馬遼太郎さんもあまりなじみはないかもしれないが森毅さんもなかなかの男前である。

 ならば、著者と写真のモデルは別々にしてもいい。しかしモデルになった人はサイン会くらいしかできない。講演とかは無理だからこれはできないか。

 これから出版業界で写真家の腕やメイクアップの技術がもてはやされるかもしれない。


映画 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE

2023-07-28 11:57:47 | 日記

シリーズで見ていないから何と何がどう争ってるのかが分からないまま遊園地に放り込まれて、今一つ気が乗らないまま乗り物に載せられた気分である。

 しかし、面白いことも発見した。

  • 古い映画では敵味方二つしかなかったが、今はどうやら四つくらいありそうでそのうち一つはAIの機器連合に仮想される勢力になって居そうである。すでに世界は多極化していることの現れか。世界の多極化はその通りと思うが、AIの機器連合が人間と同じように勢力争いに参加するとは真面目な予言なのか。
  • 取り合いされているのは、国家機密ではなくビッグデータであるらしいこと。そんなにビッグデータは値打ちありなのか?
  • 女優さんがアクションに参加するようになったが、まだ主役になって居ない。ここはトム・クルーズも主役を降りお酒を注いで回ったり気分を和ませる役柄になって、きれいで強い女優さんが主役になるのがいいのではないか。もちろんトム・クルーズもいくらかはアクションするが最後には助けてもらう側に立たないといけない。もっと大企業に女性社長が出ないといけないとの掛け声を先取りするのである。
  • 007はイギリスの、こちらはアメリカの諜報機関をモデルにしているらしい。それにしては舞台がヨーロッパのそれも古街並みを使いすぎてないか。よほどヨーロッパの古い文明に劣等感をお持ちと見える。それに最後はオリエント急行が舞台になる。オリエント急行がめちゃめちゃに壊されるということは、ヨーロッパ文明をこれから壊してやるぞという意識の現れか。

 

アメリカはヨーロッパを尊敬し、ヨーロッパの人々はギリシアを尊敬しているということだから、ヒトは自分の文化のルーツになるものを尊敬するという性質があるのか。そう言えば日本人も三国志や史記の時代の中国を尊敬するし、宋の時代位までの文化芸術に敬意を払う人が多い。(わけあって元には敬意を払わないが)インドやエジプトの遺跡や古い文化に、ましてや中南米の遺跡に接するときの心境とは明らかに異なる気分である。エキゾチックなものを求めて接している。

 してみると、今日本に来ている外国人観光客は奈良の大仏を見るときも浅草の観音さんを見るときもエキゾチックな気分で見ているのであって敬意を払っているわけではないだろう。

 オリエント急行が宙づりになって椅子やらピアノやらが壊れておいしそうな料理が流されていく場面で勿体ないなーと思いながら上の様な事を考えていた。


AIの教育利用について

2023-07-27 10:03:49 | 日記

AIの教育利用について

 むかしむかしのわたしが高校生であったころの実話である。担任は当番に掃除しとけよと言ったきり姿を消した。当番であった私はもちろん見えるとこだけ掃除して帰宅した。帰宅途中にその日新装開店のパチンコ屋があって、その担任はあろうことか当日は掃除当番ではなかった我がクラスメートと一緒に楽しそうに会話しながら並んでいたのである。

 こんなこともあった。五時間目に世界史を教えていた教師の家は、我が家から辻一つ曲がったところにあった。六時間目を終えて帰宅途中にその教師の家の前を通ると、その教師は風呂上がりのさっぱりした顔で庭の手入れをしていた。

 むかしの教師は実に暇であった。それでも日本の教育は世界一効果が高いとか言われていたし、教師はそれなりに世間から尊敬を受けていた。ただし収入は当時から低かった。それが今は世界一ブラックな職場になって居る。この理由は私の見るところ以下のとおりである。

最近AIを教育に利用することが決まったと発表された。導入のうわさは十年くらい前から噂されていた。もしわたしが文科省高官ならこう考えるだろう。

「我が子の教育をAIに託すなんて許せんと保護者は思い、教師の方は自分たちの仕事が機械に奪われるなんて許せんと思うだろう。新ラッダイド運動が起こって収拾がつかない、なにかいい手はないものか。」

 ところで同じ材料の手打ちそば五千円と、手打ち風そば五百円だとわたしなら断然手打ち風の方を注文する。安いからである。ところが教育に関しては公費負担であるから、お客の方は手打ちそばにせよ我が子に手打ち風とは何事かと迫ってくるのは確実である。教師のほうはそれに悪乗りして自分たちの利権を守るためにも、

「教育は人間が行う神聖な行為である、行政がごちゃごちゃいうとは許せん。」

というであろう。

 そこで文科省高官はこう考えたに相違ない。

「仕事を忙しくしてやれば、教師の方は音を上げて是非機械(AI)の導入をしてくださいと泣きを入れるであろう。」

 まずあってもなくてもどうでもいいような統計の書類作成を学校の教師に命じた。次に知り合いに依頼して学校に何でもいいからいちゃもんを付けてくれ、その対応に学校が四苦八苦して時間がかかるようにしてくれ、それが世の中の風潮になるようにしてくれというであろう。

 文科省高官の目論見は見事に当たり、平穏のうちにAIは導入されそうである。わたしは予言するが、導入が終わったらすぐに、学校はブラックでなくなるしモンスターペアレントというものは地を払うことになるであろう。もう必要がなくなったからである。

 文科省には知恵のあるのが居る。