奈良国立博物館 四天王像
焼き討ちに合うまでの東大寺には、大きな四天王像があったらしい。その像の多分ひな形としてつくられたと考えられる小さな四天王像が展示されているので見に行った。顔にまで彩色されているのでこれが大きければかなりの迫力でいいものである。作家名は書いてなかったが多分運慶じゃないか。
南山城には多くの小さな寺があることは知っていたが、東大寺別当が引退した後に住む寺であるとは知らなかった。引退したあとは勝手気ままが通るので、ひな形に作った四天王像を
「これ貰っていくよ」
とか言って持って行った別当が居たのだろう。
流石の筒井順慶も山の中の小さな寺までは手が回りかねたと見えて焼き討ちしなかったおかげで後世に残った。ありがたいことである。そのほかの仏像を拝見しても、気楽になった引退した別当の気分が伝わるような優しい感じの仏さまが多い。してみると東大寺別当というのは相当気苦労の大きい仕事であったと考えられる。昔も今も大きな組織のトップに立つのは大変なようである。
わたしが今の東大寺別当なら、このひな形をもとに3Dプリンターで大きなのを作ってまさか今の大仏の隣に置くわけにはいかないが(第一スペースがない)別の大きな建物をつくって安置して皆に見てもらうところである。または、ARを用いてこれを大仏の隣にあるようにみせるゴーグルを作るところである。(こちらの方がずーと安価で実現するのが早いだろう)
それに北円堂にある運慶の無著世親像を普段非公開にするとは勿体ない限りである。南円堂にある康慶の仏像も公開するべきだと思う。長いこと飛行機に乗ってはるばるやってきてあの目玉になる傑作を見ないで帰るとは実に気の毒である。お客さんにサービスする精神が皆無である。奈良のヒトはプライドが高くてものつくり(だから工学部が最近までなかった)もサービス業にも向かないとされているが、そのプライドの高さがどこからきているのか知りたいものである。
注目すべきは、南欧と思われる多くの観光客がこれらの仏像に見入っていることである。ローマとかへ行った方が安く済みそうなのにわざわざこんな遠いところにくるのは、日本のルネッサンスである鎌倉彫刻の魅力に取りつかれたというのもありだけど、たぶんヨーロッパの物価がバカ高いことの反映ではないかと想像した。それが証拠に博物館内のレストランは1100円で少ししか載っていない料理であるのに南欧と思しき人々で押すな押すなの盛況である。料理店を出そうという人、今がチャンスですぞ。1500円であの体格のヨーロッパの人の好みにあう料理を提供できれば繁盛するだろう。
中華圏のお客さんは親を連れ子供を連れ(しかも子供は眼鏡をかけているのが多い)旦那さん大変である。ヨーロッパのお客さんは夫婦ずれで子供がいない。子供は祖父母に預けているのか。しかしこの場合の旦那さんは中華圏の旦那さんより気を使っていそうで痛々しく見える。(実際はどうだか知らないが)気楽に旅行を楽しんでいるとはとても見えない。北米らしき人は見かけなかった。