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ワンナイト イン モンコック
2004
イー・トンシン


香港の繁華街・旺角(モンコック)を舞台としたチンピラと売春婦と慣れない殺し屋の悲しいストーリー。

正直、あんまり乗り気じゃないで観たのに、コレは良い映画ですよ。
大当たり。


香港映画を久しぶりに観たのでどういうテイストなのかすっかり忘れていて、覚えているのは「脚本無しで現場で考えながら撮る」というスタイルだけ。
最後に観たのはジャッキー・チェンの何か。
ちなみに、本作ではイー・トンシン監督が脚本・監督です。

本作は、あまりにも生々しい人間達のお話です。
しかし心理描写的なシーンが殆どありません。
むしろ、本当にその本人が考えていることは行動に出るのが当たり前というアングロサクソン的行動学の様な映画です。
香港出身の友人がいないので本当のところは分かりませんが、映画だけの世界で言えば往々にして日本映画というのは間で表現し、欧州ではモノローグに集約され、米国では全部を語るというスタイルですが、香港映画は全く底が知れません。本作に限ったことかもしれませんが。

イー・トンシン監督は『人』を描くことにしか興味がないのかもしれません。
物語を追うよりも「その場所にその人がいればなにをするか?」ということを描くために映画と撮っている気がします。
アクションはその一部であって、ソレを以て全てをカバーしようなんて思っていません。
そのアクションはサービスでもなく、逃げ口上でもなく、必要だからアクションシーンがある。
その行動・言葉こそが全てで、ソレを補う演出なんかやってられるかと言わんばかりの無説明だけれども伝わる演出。
カタルシスなんてどこの国の言葉だと言わんばかりの演出。

舞台装置に頼らない。
逆に言えば頼らないために香港の中でも最も密度の高いカオスであるモンコックで本作を撮影したのかもしれません。
あまりいないタイプの監督です。

映画のクオリティ(脚本・撮影・照明・芝居)を個々に観ればチープな映画なんですが、総合評価すると何故か傑作になってしまう不思議な映画です。



現在撮影中のイー・トンシン監督の最新作「新宿事件」(ジャッキー・チェン主演)は期待です。


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