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映画【パンズ・ラビリンス】
映画
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2007-11-16 23:07:01
パンズ・ラビリンス
2007
Guillermo del Toro (ギレルモ・デル・トロ)
何から語ればいいのか分からないくらいあらゆるところが素晴らしい映画でした。
傑作です。
「気持ち良い(カタルシス)」だけが映画なのではありません。
「絶望の先にある私だけの希望のせかい」という映画。
是非、上映しているうちに映画館でご覧下さい。
監督はギレルモ・デル・トロ。
「バベル」
のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、
「トゥモロー・ワールド」
の
アルフォンソ・キュアロン
監督と3人でチャ・チャ・チャという映画制作会社を立ち上げた時代の寵児の一人です。
メキシコ映画ブームとのこと。でも、それってアメリカの話でしょ。
良い作品は、国籍なんか関係ない。
中途半端なカテゴライズはもう意味を持ちません。
本作はあらゆる構成要素が私の趣味にハマって、その結晶としての映画がまさに魔法をかけられたかのように素晴らしかった。
ラストシーンの衝撃(というにはあまりにも繊細だけれども)は久々です。震えがきました。
予告編だけ観ると少女のお伽噺映画だと思われがちですが、さにあらず。
内線直後のスペインを舞台としたフランス軍対ゲリラ軍のドロドロの戦いが行われている半径2kmが舞台となっています。
ファシズムの恐怖を描き、そこに放り込まれた少女が起こす、少女だけのファンタジー。
残酷すぎる現実が生んだお伽噺ではない、幻想です。
主人公のオフェリアを演じるイバナ・バケロが可愛すぎ。
完璧です。
少女の、少女が美しい瞬間をきっちり撮っています。
ただの可愛らしさではなく、その年頃の持つ残酷さとか頑なさまでもが映像に現れています。
パンフレットによると杉作J太郎氏は「画期的な可愛さ」と表し、大槻ケンヂ氏をして言えば「美少女 一世一代のはまり役」とのこと。
全く同意します。
何故この2人がこの映画のパンフレットに寄稿しているのかで狙いが若干見て取れますが、それにしても可愛すぎます。
私もインランド・エンパイアを観に行った時の予告編で、主人公:オフェリアのあまりの可愛らしさに観ることを決意したクチです。
脚本が巧みすぎです。
現実に起こっている大人達の戦いを理解できなくも放り込まれたオフェリアの心、もちろんそこに登場する全ての人間に血が通っています。
デル・トロ監督の書き下ろしだそうですが、そりゃこの本はビジュアル無しでは考えられません。
映画としてのアウトプットをコントロールできる人間でなければ書けません。
映像が美しすぎます。
2006年アカデミー賞で撮影賞・美術賞・メイクアップ賞を受賞しているあたりからご想像下さい。
映像面は完璧以上だと言うことです。
本当に最も映画を魅力的に描くために反射神経で気持ちいい部分を分かっている人にしか創れない映像。
計算でこれはできません。
映像を見ただけで感情移入できる映画はそうあるものじゃありません。
グロテスクさと美しさの絶妙なバランスです。
ラストシーンがそれはもう・・・。
ここはもの凄く語りたい部分なんですが、ネタバレになってしまうのでやめておきます。
あえて漠とした私の感想としては、レビューで言われている「千と千尋の神隠し」にテーマを同じくした「オフェリアの成長物語」であったというものとは違います。
あまのじゃくな訳ではなく本当にそう思ったので。私の見解が浅いのかもしれません。
本作は「余りの残酷な世界に絶望することも出来ず、逃避として幻想世界を創り出してしまった少女のお話」だと思っています。
環境が人を創るということなんですが、そこまで追い込んでしまった環境に対して腹が立ち、しかしその残酷な世界でも幻想であったとしても希望を自ら創り出すというオフェリアの想像力に胸が痛みます。
この思いがラストシーンに一気にやってきます。
デル・トロ監督、素晴らしい監督・脚本家です。
ただ、映画としては作家性に偏りすぎていることは間違いなく、万人に受け入れられる類の作品ではないでしょう。
私は大好きですが、あえて本作をして名作だとは言いません。
とはいえ、超必見なので是非。
ハードコア・ダーク・ファンタジーです。
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