備前の古社を訪ねる(備前国内神名帳の研究)

備前の由緒ある神社を巡礼する

コラム68.石根依立神社と「神子岩」

2008-10-18 21:22:57 | Weblog
和気町の民話から。
「東の大川」と呼ばれた吉井川は、和気町原のあたりで南から西に大きく流れを変える。その川の流れに突き出して大きな岩があり、「神子岩(巫女岩、みこいわ)」と呼ばれていた。
昔、「石根依立神社」に美しい神子さんがいた。その美しさを聞きつけた国司が妾にしようと、神社や村人にいろいろ無理難題を押し付けてきた。折から、吉井川が増水して濁流が渦巻いた。村人は竜神の怒りと考え、盛んに祈りを捧げたが、一向に水勢は収まらない。濁流が大岩にぶつかって竜神のように見えた。そのとき、神子さんが大岩の上に上がり、榊を振って舞いだした。一層激しい水しぶきが上がり、神子さんの姿を覆ったと見る間に、流れは静まっていったが、大岩の上に神子さんの姿はなかった。神子さんは竜神に身を捧げて村を洪水から救ったとされ、それ以来、この大岩を「神子岩」と呼ぶようになったという。実は、神子さんには相思相愛の若者がおり、その後、この若者も神子さんの後を追ったという。
「神子岩」は、平成3年(1991年)の台風で吉井川が氾濫した際に土砂に埋もれて見えなくなった。
なお、今も「石根依立神社」の参道階段の脇にある岩は、この神子さんを祀ったものという(写真)。

(以上、「ふるさと和気-民話編-」(編集:和気町文化財保護委員会、平成13年3月)及びこれを基にした絵本「神子岩のはなし」(同、平成17年3月)による。)