備前の古社を訪ねる(備前国内神名帳の研究)

備前の由緒ある神社を巡礼する

コラム258.田子浦 新浜の備前さん

2011-01-25 22:00:52 | Weblog
田子浦 新浜の備前さん(たごのうら にいはまのびぜんさん)。
場所:静岡市富士市宮島。「富士市西部浄化センター」の南側にある、「入道樋門公園」駐車場の道路を隔てた東側。「金毘羅神社(こんぴらじんじゃ)」に合祀されている。
前項「備前道丁」(2010年12月22日記事)では、いささか拍子抜けだったが、この「備前さん」は正しく「神様になった備前の人々」である。
昔、備前国から、幕府の御用米を積んできた船が時化(しけ)に遭い、航路を間違えて駿河湾に入ってしまった。流れが緩やかな潤井川(うるいがわ)河口に向かうべきところ、日本でも指折りの急流である富士川河口に入ってしまった。そのため、船は転覆し、乗り合わせた多くの乗組員が海に落ちて亡くなった。生き残った乗組員と田子浦新浜の人々は石塔を建て、亡くなった乗組員たちを手厚く供養した。しかし、長い年月が過ぎ、たび重なる天災も手伝って、石塔はすっかり埋もれてしまい、人々の記憶からも消えてしまった。ある年、この付近に悪い病気が流行ったが、1年経っても病気は一向に収まらなかった。ある信心深い老人が「あの石塔を粗末にしたせいだ」と言いだしたので、人々は早速小堂を建て、再び供養することした。すると、その次の年から、病気はぴたりと止んだという。それから、その小堂は「備前さん」と呼ばれるようになり、人々は身体安全や大漁を祈るようになり、いつの間にか願い事が叶うと言われるようになった。現在では、「金比羅神社」に、他の神様とともに、大切に祀られている。


広報ふじ707号より(新浜の備前さん):pdfファイル


写真1:「金毘羅神社」正面鳥居


写真2:社殿正面


写真3:由緒を記した石碑