Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

親交 55

2019-05-18 15:08:20 | 日記

 「新鮮な人だったわ、ミルは。」

彼女はそう言うと、俯いて懐かしさをかみしめるように穏やかに微笑みました。一方ミルの方では、その後の初期教育の団体の場で漸く初めて彼女に出会うのでした。

「僕も君に出会ったのは新鮮な驚きだったよ。」

ミルのいう様に、彼女は何をさせても秀逸によく出来たのでした。就学当初のんびり構えていたミルも、何時しか彼女に触発されると負けじ魂に火が点いた形になりました。その他の出来事でも、彼の向上心に影響を与えたあからさまな同級の男子の屈辱的な言動がありました。彼は更に学習意欲に拍車をかける事になりました。

 『今から思えば…。』

ミルは気付きました。あの時期の彼等の嫌がらせ行動は、1人の男子の扇動によるものだったようでした。その男子と言うと…。

「君のご主人、もしかすると焼き餅焼きなんじゃないかな。」

ミルはこの時点になって漸く過去の出来事に合点したのでした。「落ちこぼれ、…」過去の自分を囃し立てる声と、その人物が自分に向けた、幼いながらも妙に険悪な表情とオーラが瞼に甦って来ます。

「そうかもね。」

昔はそうだったと彼女は少々溜息を吐きました。でも、そんな彼の色んな言動が、実は自分には非常に嬉しい出来事だったのだ、と彼女はミルに告白するのでした。

「彼の1つ1つの行いが、私への気持ちの為だと思うと」

それは最高の気分だったと言う朗らかな彼女に、「僕の方は最低の気分だったよ。」ミルはさもうんざりした表情で言うのでした。

 『それであの時期彼女は弾けるようなオーラを放ったわけだ。』てっきりライバルだった自分に対して、さも優越感を感じた為の歓喜のオーラだとばかり思っていたよ。ミルは過去の自分の間違いを悟ると、彼女とそれ以降のあらゆる学習を競うために励んだ自分が、間が抜けていて如何にも滑稽な人間に思われてくるのでした。


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