Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

その ◯◯マタはどんな動物?

2016-08-21 07:07:16 | 日記

 幸せのキンキラキンで帰宅した私は、家の夕餉で日中の余波を漂わせるのでした。

家族の誰にどんな話をしたか憶えていませんが、とても嬉しいお友達が出来た事、しかもそれがボーイフレンドだという事をほんのり頬を染めて上の空で話していたと思います。

目の前に金銀がちらついていて、ちらついて、夢うつつだった私は、その日の夕刻からの事を何も憶えていません。

  さて、次の日、だったと思いますが、私は再び紙のお礼を言おうとえーちゃんを探します。

「えーちゃん、昨日ありがとう。」

なんのこと

色紙の事

色紙って?

昨日もらった金と銀の色紙よ。

あー、あのお礼今言うの

昨日も言われ無かったっけ?

おやぁ、と、私は思います。

次の日とか次に会った時もまた言うでしょ。

馬鹿丁寧なんだ。

そんな会話を続けている内に、えーちゃんどうしたのかと私は不思議に思うのでした。

なんかあった?

と、聞かずにいられません。

「昨日誰かと話した?」

「ふたまたって知ってる?」

などなど言われて、思い当たることがない私でした。

昨日は家から出ていないので家族以外話す人はいないし、と首をかしげます。

それより、えーちゃんの言う、その『フタマタ』とかいう物がわからないのでした。

「フタマタってなに?」

私は知っている限りの言葉を総動員して考えてみるのですが、思い浮かぶ意味を持った言葉がありません。

そういえば、ネコマタという言葉を聞いたことがある。

「猫のお化け、しっぽが切れているとかいう?」

ああ、それはねこまた。

「猫の好きな食べ物」

またたび。後ろにまたは付かない。

「何まただっけ?」

など他愛ない会話をしている内に。硬かったえーちゃんの態度が和らいできました。

もう少しで昨日の続きの雰囲気になるところでした。ここまで漕ぎ着けたのに、惜しい。

そこでえーちゃんは他の友達に呼ばれて行ってしまいました。

 暫くしてこちらへ帰ってくると、また態度は元に戻っていました。

「昨日の金紙と銀紙返して。」

と言うのです。びっくりでした。

もう貰ったから返せない。元々そっちの物じゃないでしょ、貰ったからもう私の物、本とは僕の物だったでしょ、などなど、返せ嫌だのやり取りが始まりました。

当然私は大好きな色紙の事です、返したくはありません。

また、返すのが惜しくて惜しくて仕様がありませんでした。

大事に色紙袋を脇に抱えて、嫌々している内にえーちゃんが言いました。

「他に上げたい子がいるから、返して。」

これって、この「子」は女の子よね、私はそう考えずにいられませんでした。

 口では嫌だ、絶対に、自分の物になった物だから、嫌!

等と繰り返しながら、内心そうか、私と友達になる前に付き合っていた子が他にいるんだ、と、直感するのでした。

『人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られて死んじまえ!』

の言葉をたまたま私は知っていました。

 私が四の五の言いながら返そうかなと思い始めた頃、ふいにえーちゃんは妥協案を提示しました。

「金でも、銀でも、一枚上げるから一枚返して。」

そうね、2枚返してもいいけど1枚はくれると言うなら、と、私はどちらを返そうかと金と銀を袋から出して手に取ると交互に見詰めるのでした。

もちろん、昨日からの判断が付くはずがありません。

すると、早くしろとじれったそうにしていたえーちゃんは

「金でいいよ」

と言ってすっと金紙を持って行ってしまいました。

撮んだ手の中から金紙が無くなって行く喪失感は、えーちゃんとのさよならを意味しているのでしょうか。

手の中に1枚残った銀紙も昨日のような輝きを失ったようで、見つめる私に魅力的な輝きを感じさせることができないでいました。

「銀紙か、やっぱり銀より金よね。

銀1枚になってみると、いい方を手放したという損失感と、今日のえーちゃんの態度の硬変に

しばし呆然とする私でした。


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