Jun日記(さと さとみの世界)

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土筆(21)

2018-03-17 11:26:09 | 日記

 再び「あそこの家は辞めたんだよ。」という少しいらだった声が上がりました。今回は「僕も聞いた。そうだって、家業を閉じたんだって。」と淡々とした声で同調する者も現れました。「知らない人がいたら言って置いてくれって。」という訳知り顔な声も上がり、「一体何時までそんな家業があると思っているんだ。」「もう無いの?」「いや、陰では裏でやっている家もあるそうだ。」等、ぽつりぽつりと2、3人の間で言葉がやり取りされるのでした。

 「辞めたって。」

じゃあ何故、今は大丈夫だったんだろうか?と指導者の子が不思議そうに言えば、さぁ、とか、分からないの?、とか、年長者の間でもぽつぽつやり取りはされるのですが、ここから脱出して行ったあの子達が如何して無事に向こうの関門を突破して逃げおおせたのか、指導者にはどうにも結論が出せないままでいるのでした。グループの中には世事に詳しい訳知り顔な子もいるのですが、指導者の子と仲良くないのでしょうか、意味ありげに笑って辺りを見回しているだけです。指導者の子や仲間の体制を窺うように黙っています。見ようによっては現在の指導者の無知を小馬鹿にしているような笑い顔にも指導者には思えるのでした。

 『大将ってくたびれるなぁ。』

あれだけ憧れて、先輩達にも上手く取り入って、漸くこの春自分が大将になったと聞きその嬉しさに跳び上がって大喜びしたのに。今の仲間とのやりとりや同年代の子供達の様子、自分がリーダーになった事に対する不満から来るらしい反抗的な雰囲気を感じ取ると、この役がとても気疲れするという事にこのガキ大将は今気付いたのでした。

 今迄何でも教えあって来た仲良しグループだったのに、自分が皆から1ッ歩先んじただけでこの体たらくです。意地悪そうな嫉みの視線や自分の方がリーダーに向いていると考える不満そうな顔付き。改めて皆を見渡すと、自分の視線を外してそっぽを向く仲良しまで出て来て、精神的な衝撃を受けた新米リーダーは心底気疲れするのでした。


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