Jun日記(さと さとみの世界)

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土筆(168)

2018-08-25 09:47:42 | 日記

 訴えられた姑にしてもごく近い身内同士の事、如何苦情を処理してよいか思案に困ったのですが、蛍さんの母の手前もあり、一応曙さんとその母を側へ呼び出し蛍さんの母の疑いを告げると、曙さんの母もそんな言いがかりをと渋い顔をしました。

 長男の事で未だ腹の虫が収まらない上に、あらぬ疑いを掛けられたと彼女の腸は煮えくり返る思いになりました。そこで曙さんの母は、「一寸…」と祖母に呼び付けられて、3人の前に蛍さんと彼女の母が姿を現すと、やって来た蛍さん親子2人の顔にぎーっと猜疑に燃える目を向けました。

 その後、蛍さんの何時もと変わりないふっくりした頬を見て、「ほら、何とも無いじゃないですか。」。ふんとばかりに曙さんの母が声に出して言うと、「蛍、笑って御覧。」と、蛍さんの母も負けてはならじとばかりに燃える目できっ!と言い放ちました。

 そこで蛍さんの母は思いっきり自分の娘を笑わせると、さも不機嫌そうに自分の笑っている娘の顔を義姉と甥の2人の目の前に差し出しました。曙さんの母がそのきゃっとばかりに笑った蛍さんの頬をよくよく見ると、どうもそれらしい問題の個所に確かに窪みがくっきりと出来ています。

『まずい!』

と、流石に彼女は顔を曇らせました。内心ひんやりとした震えが来ます。彼女は眉根に皺を寄せたまま暫くは言葉も無いのでした。その後は一旦視線を下に落とし、再び視線を上げると、義弟の娘の頬に出来た窪みを見詰めながら彼女は神妙な顔つきになるのでした。自分にも娘がいるので蛍さんの母の気持ちは痛いほどによく分かるのです。


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