が、しかし、入社直後のこの頃から目立っていた松山君達のグループのこと、野原さんの他にも彼等の話を聞いていた人は何人かいたのでした。実際、彼等が文句をつけたのは野原さんから離れた場所にいた男性社員でした。
思わずほっと胸をなでおろす野原さんです。『今度からは気をつけなければ、知らない人が面白い話をしていても、決して声に出して笑ってはいけないものなのね。』少し世間慣れした気がした野原さんなのでした。
彼女はそう思うと、彼等から顔を背け口元に手を当てました。今度は用心して笑顔も見られない様にしたのです。そして手の陰の口元に、にんまりと笑顔を浮かべました。これなら彼等にも気づかれない、言いがかりもつけられないだろうと考えたのです。
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