2、3日私は腹を立てていました。
父が自分勝手だと思っていたのです。
そして、その間閉じた事典を見もしなかったかというと、そうでは無く、表紙を撫でてみたり
、青い色を愛でてみたり
、その厚みや重さを手で体感するなどしていました。
流石に開いて中身を見るという、素直な気持ちにはなれませんでした。
何かしら中身を見ないという事が、子供ながらに親に反発する証であった訳です。
『だめだから。』
か、と私は思います。そう思うと溜息が出ます。
折角の人生の指針がもろくも崩れ去った今、何を心の拠り所にしようかとさえ思うのでした。
父にこんな事を言われた、こんな状態だったと親しい友人に話したり、
憂さ晴らしに公園に出かけ家を留守にしてみたり。
多分、図書館で本を読んでも気が晴れなかった事でしょう。
そんなある日、学校でだったでしょうか、おー君に話しかけられました。
「Junさん、化学者になりたいんだって?」
おー君は人から聞いたという事でした。
彼の話によると、
この地方では、1人くらいしか科学者になれない。
実は僕も科学者になりたいと思っている。
この地方では2人が科学者になるのは無理だから、Junさんの方で、化学者になるの止めてくれないか。
僕の為に。
というような内容でした。
私はまた地方なのか、と思って出だしを聞いていましたが、途中から又おー君特有の自分勝手な物言いになるので
、うんざりしてしまいました。
腹が立ったと言ってよいでしょう。
あ、そう、どうだっていいわ、科学者なんて。
私がそう言うと、おー君は分かってもらえたという感じで喜んでいました。
「どうせ家はお金がないから化学者になんてなれないのよ。心配しなくていいわ。馬鹿々々しい。
」
そう言うと私はさっさとおー君から離れて歩き出すのでした。
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