「あんな人じゃなかったんだけどな…。」
光君が独り言を言う様に祖父に言いました。
「初めて会った時のあの人は、こう、にこやかで、人当たりが良くて、気のいい話の分かる、質のいい育ちの良い外国人、という感じだったんだ。で、僕の研究にも熱心に耳を傾けてくれて、興味を持って気軽に寄付してくれたんだよ。しかも当時としては結構多額に寄付してくれたんだ。それなのに…、どうしたんだろう?」彼は沈み込んでしまいました。
また、彼はこうも言うのでした。
「あの森での場面には前にも出くわした事があって、今日と全く同じ成り行きになったんだよ。じっちゃんも一緒だったんだ。けど、覚えてないんだろう?問題だよなぁ。」
否、じっちゃんがボケたと言う意味じゃないよ、何処かで交錯したんだ。入れ替わっているんだよ、じっちゃんと僕、僕達2人の組み合わせが何処かで別相手になってしまったんだ。でも、そう気にする程の事じゃ無いよ、こう世界を点々とした後考えてみるとね。光君は祖父の傍で、1人静かに物思いに沈んで行きました。祖父はそんな孫を横に、彼の思考の邪魔にならぬよう沈黙を守るのでした。
「初めの時は勢いに飲まれて、流石に余裕が無かったけれど、2度目ともなると気付く事もあるさ。」
彼は唇を噛み締めて、忌々しそうに拳を握り振り回しました。いったい何が起こったというのだろう?、僕がこの発見をしてからあの人がああなるまでの間の事だよ。僕はあの人達の国に、又は世界に、何か特別な酷い事をしたんだろうか?
「私達の世界、か。」
今現在、反社会的な何か、そんな大それた事を仕出かす気持ちなど更々無い彼には、全く思いも寄らない未来予想図なのでした。
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