Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華 123

2019-12-17 13:50:24 | 日記

 さて、祖母が帰って来て、父はと言うと、もう少し用があるという事で、彼女は1人祖父の待つ座敷へと入って行った。

「如何だって?。」

祖父の言う声が聞こえる。

「如何とも、しばらく様子を見てからという事で向こうへ置いてきました。」

祖母が答えている。何だか慣れた言い方だと私は思った。

 さては商いの関係で、商売用の品でも何処かに納めに行ったのかと、それで父と祖母が共に出掛けたのかと私は1人合点していた。祖母が商売の手伝いをする事が有るのだなぁと思い、そんな事も有るのだと、頭に控えて置こうと考えていた。祖父は祖母に少し話が有ると切り出し、ぽそぽそと内緒話宜しく声を落とした。祖母はまぁ、あのねえさんがとか、へえぇとか、今度は意外そうな声音で話していたが、私が階段の部屋で聞き耳を立てて祖父母のいる座敷を見詰めていると、開いていた障子襖の入り口に、ふぃと祖母は姿を現した。

 祖母は入口を見詰めていた私の顔と出会い、やはり驚いた顔をした。

「やっぱりいましたよ。」

彼女は奥にいる夫に自分の声が聞こえるように、やや顔を自分の斜め後方に向けると言った。この祖母の言葉に、私は聞き耳を立てていた事が恥ずかしくなった。思わず「戸が開いていたから、何を話しているのか気になった。」と、照れ笑いしながら彼女に言い訳した。

 祖母は戸が開いていたって…、と、何か言い掛けたが、奥から祖父の、その子の事は後でいいから、あの子の将来に付いてこれからの事を話し合おう、あの子にとっていいようになるようにな、という声が掛かると、祖母は私から視線を落とした。やや躊躇していた彼女は、しんみりした感じで祖父の元へと戻って行った。

「もう育った子より、今から育つ子の方が大事じゃ無いかしら。」

そんな呟きを彼女は座敷の入り口に残して行った。

 私はそんな彼女に、これ以上ここで続けて祖父母2人の話を聞いているのは礼儀知らずだと考えると、祖母と父が外出してから今迄暫く家で落ち着いて休んでいた事も有り、元気にまた活発な外遊びに出る事にしようと決意した。そうすれば後々私が家に居て彼等の話を聞いていたという嫌疑もかからないし、実際に私が聞く気が無くても、彼等の話が自然に耳に入ってしまったという事も無くなるのだから。

「外で遊んできます。」

私は家の玄関に向かった。