Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

親交 57

2019-05-18 16:05:04 | 日記

 「作り手の手を見て分かったのよ。」

彼女は夢の中にいるような瞳になると言葉を続けました。

「それはもう、それはもう、色々な花の色に染まって黒ずんだ見苦しく汚れた酷く痛んだ手だったわ。」

しかも彼の目の周りには隈が出来て、細くしょぼしょぼの目をしていたのよ。話の途中から、くっくくくと含み笑いしながら話す彼女に、

「ご馳走様。」

ミルはうんざりして彼女にさよならを告げようとして振り返りました。その時です。彼女は振り返ったミルの上唇に、ぱくっと彼女の唇で噛みつきました。ミルは一瞬驚きましたが、気を取り直すと、そんな彼女の唇を優しく労わるように自分の唇で覆いました。2人はお互いに優しく労わるように親愛のキスと抱擁を取り交わし合うのでした。

 旧友同士のこの星の親愛の挨拶を交わし終えると、2人は静かに離れてお互いの目を見つめ合いました。2人はにこやかに優しい面差しを交わし合うと、共に昔と変わらぬ大切な友人に感じる親しい友情を感じ合うのでした。そして、

「私は本当にミルの事も好きだったのよ。」

と、彼女は彼の気持ちを取り成すように明るく言葉をかけるのでした。概して、この星の人間は皆朗らかで平和な性格なのでした。

 後にミルは彼女の夫が彼女を花園に呼び出した日が、2人の初対面の日と同じ月日であると彼女夫妻から聞くのでした。

「もう、これ以上にロマンチックな事があると思う。」

そう目を輝かせて幸福に満ち満ちて言う彼女に、ミルは地球上での任務のある天啓を受けたのでした。

 

                                   「親交」終わり


親交 56

2019-05-18 15:37:17 | 日記

 「僕はもう帰るよ。」

ミルは腰かけていた場所から立ち上がりました。もうさっさと彼女と別れて1人山道を歩きたい気分でした。

「待って、私も帰るから。」

そこ迄一緒に行きましょうという彼女に、少々嫌気がさしながらもミルは愛想よく承諾すると先に立って歩き出しました。

 彼の後ろから静かに歩いてくる彼女は、再びぽつりとぽつりと話し出しました。

「ごめんね、ミル。」

あの頃は実際、自分も新参者で新鮮なミルの言動に気持ちが向いていたという事実を彼女は認めると、そんな自分が彼にとっては心配の種であり、それがとても許せない事態だったのよと告げるのでした。当時幼少の夫がミルにつらく当たった事の大本の原因は、実はこの様なミルに好意を抱いた自分に有ったのだと、彼女は静かに詫びるのでした。

 「あなたが宇宙に飛び立って1年程した頃よ、」夫から私に連絡が入ったの。山の盆地の花園で会おうという事でね。彼女は静かに話すのでした。「私はその盆地には久しく行った事が無かったんだけど、何となく気が向いたのね、気候も良い時期だったから、清々しい風に吹かれて私は花園にやって来たの。」

 さて、果たして彼女がそこに着くと、花園には沢山の花の輪が彼女を待ち受けていました。「それはもう、幾千幾万もの花の輪なのよ。それが楽しく美しく花園を飾り立てていたの。夢のような光景だったわ。」

「複写したんだな。」

ミルは彼女の話の腰を折るように低い声でぼそっと言いました。そうでもないみたい。彼女は少々ミルの反応を楽しむかのように反論しました。


親交 55

2019-05-18 15:08:20 | 日記

 「新鮮な人だったわ、ミルは。」

彼女はそう言うと、俯いて懐かしさをかみしめるように穏やかに微笑みました。一方ミルの方では、その後の初期教育の団体の場で漸く初めて彼女に出会うのでした。

「僕も君に出会ったのは新鮮な驚きだったよ。」

ミルのいう様に、彼女は何をさせても秀逸によく出来たのでした。就学当初のんびり構えていたミルも、何時しか彼女に触発されると負けじ魂に火が点いた形になりました。その他の出来事でも、彼の向上心に影響を与えたあからさまな同級の男子の屈辱的な言動がありました。彼は更に学習意欲に拍車をかける事になりました。

 『今から思えば…。』

ミルは気付きました。あの時期の彼等の嫌がらせ行動は、1人の男子の扇動によるものだったようでした。その男子と言うと…。

「君のご主人、もしかすると焼き餅焼きなんじゃないかな。」

ミルはこの時点になって漸く過去の出来事に合点したのでした。「落ちこぼれ、…」過去の自分を囃し立てる声と、その人物が自分に向けた、幼いながらも妙に険悪な表情とオーラが瞼に甦って来ます。

「そうかもね。」

昔はそうだったと彼女は少々溜息を吐きました。でも、そんな彼の色んな言動が、実は自分には非常に嬉しい出来事だったのだ、と彼女はミルに告白するのでした。

「彼の1つ1つの行いが、私への気持ちの為だと思うと」

それは最高の気分だったと言う朗らかな彼女に、「僕の方は最低の気分だったよ。」ミルはさもうんざりした表情で言うのでした。

 『それであの時期彼女は弾けるようなオーラを放ったわけだ。』てっきりライバルだった自分に対して、さも優越感を感じた為の歓喜のオーラだとばかり思っていたよ。ミルは過去の自分の間違いを悟ると、彼女とそれ以降のあらゆる学習を競うために励んだ自分が、間が抜けていて如何にも滑稽な人間に思われてくるのでした。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-05-18 15:01:17 | 日記
 
土筆(72)

 『一体、この世界に何が起こったんだろう?』私は訳も分からず只々動揺するばかりでした。 周りをよく見ようと何度か目を擦って見てみるのですが、太陽光線の射る様な光をまともに受けた......
 


 この舞台の時期、SFが流行っていたようです。太陽が燃え尽きると世界が滅ぶ、そんな風分もあり、世情不安な時代を反映していたようです。