シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

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TSMC を迎えるに何千億円もの税金が …

2022年01月20日 | 電子産業は花形?
左から 創業者の張忠謀 (モリス・チャン)、TSMC のロゴ、TSMC 日本進出への支援を明言した岸田首相。
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1年半ほど前から自動車や家電などの分野で半導体不足が叫ばれるなか 世界中から増産要請が殺到し、工場建設の要請も舞い込む、台湾のトップ半導体メーカーの TSMC ですが、去年の前後半に 米国と日本での新工場建設を表明しました。

半導体メーカーといっても ファウンドリー (受託製造) に徹するメーカーで、実は製品として TSMC マークが入った半導体はなく、アップルやエヌビディア、クアルコム、ブロードコム、ルネサスといった "マーク" を付けて出荷していますから、これがそうだよ といわれなければ、全く判りません。

元々 そうした電子産業分野での受託製造を得意としていた台湾という企業風土の中で、1987年に 米国から帰国した (TI 社で副社長などを勤めた) モリス・チャンが TSMC を設立したのも偶然ではなかったのかも知れません。

もちろん 当初は最先端ではない半導体を製造していたのですが、その数年前に設立された (総合電機のフィリップス社が 50% 出資する露光装置メーカーの) オランダ ASML 社の装置を積極的に採用し、徐々に技術力を高めていきました。

同時に 台湾は元より 高人件費の米国や日本の半導体メーカーなどから製造依頼を受け、今では米国の純粋な半導体メーカーとしては インテル社やマイクロン社、グローバルファウンドリーズ社くらいしか聞かないほど 多くの米企業の製造を請け負っています。
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当然ながら 業績は絶好調で、今月13日に発表された内容は __
「21通年の売上高は 18.5% 増の約 6兆5700億円、純利益は 15.2% 増の約 2兆4700億円で過去最高となった。 22年の売上高は 25~29% の増収になる見込み。 22年の設備投資が21年比で4割強増の約 5兆円に達する」(1月13日 日経新聞 ※1)

と、6.5兆円年間売上の会社が 5兆円の設備投資をするのも、私は理解できない部分もありますが、その経営・投資意欲は積極的です。

米日の政府補助金がこのうち どれほどが含まれるのかも不明です __「バイデン米政権は、自国での生産拡大を目指し 500億ドル/約 5兆5000億円の半導体部門支援策を盛り込む (※2)。 TSMC は 120億ドル/約 1兆3100億円を投資し、米アリゾナ州に 5nm 製造プロセスの生産ラインを建設している (※3)。 熊本の工場への総投資額は約 70億米ドル/約 8,000億円で、ソニーも約 5億米ドル/約 570億円を出資する。 半分を政府が負担すれば、4,000~5,000億円の予算が必要になる (※4)」… ※2:4月10日 ワシントン時事/※3:5月17日 朝鮮日報/※4 12月13日 日経ビジネス
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そして今では (2021年夏の時点で) 最先端半導体といわれる 5nm クラスは TSMC と韓国のサムスン電子の2社だけが、次の 7nm クラスで製造するのは、TSMC、サムスン、米国のグローバルファウンドリーズ、中国の SMIC、そして韓国の SK ハイニックスの5社だけといわれています __『台湾の “化け物” TSMC 知られざる強者の実力』(2021年12月10日 日経ビジネス ※5)

米国のアリゾナで工場を建設して 5nm の技術で2024年に生産を予定し、また 2024年末までに量産を始める予定の日本の熊本の工場では 22nm ~ 28nm の半導体といわれています。 一方で  TSMC 本社のある台湾では今年半ばには 3nm 半導体を生産する見通しです。

工場を立ち上げ・維持する技術者は無尽蔵にいるわけではありません。 いったい TSMC は開発技術者をどう割り振っているのでしょうか? 私の想像では、2nm より先の未発表最先端開発チームが第1グループだとしたら、3nm は第2グループ、5nm は第3グループ、22nm ~ 28nm は第5グループでしょう。 というのも 中国・南京工場では 12~16nm を生産していますから、ここが第4グループと呼ぶべきものと思います。
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TSMC の工場誘致が、日本の半導体産業復活の起爆剤となるかどうかについては賛否両論があります。

まず 日本の技術者だけで、22nm ~ 28nm の半導体を製造できるかというと、現時点ではできません。 日本の半導体工場では 40nm 止まりといわれているからです。 22nm ~ 28nm 用の装置を並べるだけで、運転スイッチを押せば トコロテン式に出来るものではないのです。 ですから TSMC の第5グループの数百人もの開発技術者を連れて来なくてはなりません。

「日本メーカーは半導体の設計や製造の部門で完全敗北しており、国際的な競争力はゼロに等しい。 競争力も失う可能性を回避するため、政府は日本進出を要請した。 経済安全保障面からも 地政学的リスクを軽減するため、資金援助を行う価値があると政府は判断した」(12月13日 JB Press/加谷 珪一 ※6) と、「TSMC の熊本工場の月産 4.5万枚のうち、ソニーのイメージセンサ用ロジック半導体や日本のクルマメーカー用半導体は月産 1万枚も必要ない。 この工場で製造された 28nm のほとんどが (日本以外の) 世界中に販売され、その利益が TSMC の懐に転がり込むことになる」(12月7日 JB Press/湯之上 隆 ※7) が対照的な主張ですが、私はどちらにも納得してしまいます。

ただ 私が思うには、過去 隆盛を誇った日本の半導体産業が、90年代にほぼ崩壊してしまった原因として数多くある中で、最も大きな原因は政治問題化した事で、官僚が日本のメーカーの動きを封じてしまった、これではないかと推理しています。

本来は自由な経済活動の環境を整えるのが政府の産業政策のはずだったのが、日本政府は米国の圧力を受けて逆の動きをしたのです (漁夫の利を得たのが 台湾と韓国でした)。 今回も政治が介入して巨額の資金援助を行いますが、果たして 今度は吉と出るか凶と出るか … もちろん 私は成功を信じています。
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上記ランキング (1月19日 日経新聞) には TSMC が含まれていませんが、含めるなら3位の約 550億ドルになります。 そしてこれは、クアルコム・ブロードコム・メディアテック・エヌビデアの名称で販売され、また AMD の一部も TSMC が製造しています。 それほど影の存在として TSMC は巨大なのです。

今日はここまでです。

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