シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

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政策で簡単に最先端 IC ができる?

2022年09月05日 | 電子産業は花形?
日米の経済版2プラス2の初会合に臨む (左から) 萩生田経産相、林外相、ブリンケン米国務長官、レモンド商務長官 (7月29日 ワシントン/日経新聞)。 右は 形成された何十もの IC が見える半導体ウェハー。 この後 1個ずつ切り離されて封止される。
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(主に自動車生産分野で不足が続く) 半導体業界で、新たな動きがありました。
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『日米、経済秩序づくり主導』(7月31日 日経新聞 ※1) __ 22年内に日本に研究開発拠点を新設する。 25年にも国内で量産できる体制整備を目指す。 回路線幅 2nm 相当の先端半導体を共同で研究する。
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高い目標を掲げるのは非難しませんが、数十ナノ台の半導体しか生産していない日本が25年にも 2nm 半導体を生産できるのだろうか?という素朴な疑問が湧いてきました。

そう思った人が他にもいたのか、疑問視する記事が出ました __「微細化競争で10年のブランクがある日本が “2nm” 製造に挑むのは明らかに背伸びしすぎの目標だ。 このままでは 米インテルの 2nm 開発の下請け作業を日本の財政資金で行なうだけで終わるということになりかねない」(古賀茂明/経済産業省元官僚 8月26日 週プレNEWS ※2)

「日本が辛うじて生産できる 45nm (⁂) からは、2nm というのは9世代先の微細化レベルである。 最先端を独走している TSMC でも、3nm が2022年後半にやっと量産できるかどうかの瀬戸際で、 (TSMC の) 2nm 量産時期は早くても2025年で、2026年にずれ込む可能性も …」(湯之上隆/元 DRAM 開発・量産技術者 9月2日 JB Press ※3)

__ というもので、冒頭写真の4人の政治家がどういう意図で発表したのかと推理すると、ただの政治的な思惑でしかない、という結論になりますね。

(実現可能な) 技術的見通しを踏まえての発表とは思えず、ヒタヒタと迫る “中国半導体産業を蹴落とす” ために、先端製造装置をもつ米国と先端材料を持つ日本がガッチリと協力して最先端を狙おう、という気合は買いますが。

実際に開発・設計・製造する 半導体産業の現場の技術者の声は、全く入ってないと想像できます。 また想像を逞しくすると 米国サイドでは、ここ数年 最先端 IC の開発で足踏みし、TSMC、サムスンに遅れをとったインテルへの梃入れも狙っているのでは?とも取れます。

一方 なぜ 日本の生産が 45nm (⁂) で止まっているかというと、それより回路線幅の短い半導体は ”TSMC に発注して生産してもらった方が安い”、これだけの理由です。 そうやって先端品の開発を怠ったツケが、今 やってきているのです。

金さえ出せば あっという間に (2~3年で) 先端半導体が量産できる … 政治家や官僚たちは、こう安易に考えているのでしょうね。 そして さらに、新工場建設に莫大な予算をつける法案が米国で成立しました。
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『米、半導体補助金法が成立 生産・研究に7兆円』(8月10日 日経新聞 ※4) __ 補助金はインテルの他、TSMC、サムスンなど米国内で半導体の新工場を建てる企業に支給される。 受け取る企業は中国における先端半導体の生産への投資を禁じられる。
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米国内で建設すれば建設資金の一部を補助しますが、それは米国人雇用につながる事を見越しています。 もともと 台湾 (TSMC)・韓国 (サムスン) の土地・建設費や従業員より米国の土地・建設費や従業員の費用が高いので、補助金をもらっても総合的にコストが安くなるのか、疑問にも思います。

そして 中国に半導体工場を持つ 台湾 (TSMC)・韓国 (サムスン) 企業への縛りにもなります。 そう解っていても、”超大国 米国のいい分” に従わざるを得ない、こういうジレンマにあるのが、中国以外の企業の実態でしょう。

かつて “虎の尾を踏んだ” 日本の半導体業界がどういう目に遭ったか、それを思い出すと (この業界にいた日本人としては) 悔しい思いが込み上げてきます __ 当時の日本の半導体業界が動けなくなった間隙を突いたのが、台湾・韓国の企業でした。

※2の古賀茂明氏、※3の湯之上隆氏の2人とも、野球になぞらえて批判しています __「2nm 半導体の開発・量産という目標は、絶不調の打者に一発逆転満塁本塁打を狙わせるようなもの。 空振りで終わるのは必至ではないか」「45nm と 2nm の差は、リトルリーグの野球少年とメジャーリーグで2刀流で活躍している大谷翔平ほどの差があるように感じる」
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そして 何十兆円という膨大な半導体輸入額を減らそうと、莫大な予算を付けて半導体産業を立ち上げようとしているのが、今の中国政府の政策です。 けれど 米欧の先端製造装置、日本の先端材料がなければ、先端半導体はできません。

同時期 中国メディアが、盛んにこの動きを牽制する記事を載せています __『米政府の “半導体製造支援案” が遅々として進展せず、大手企業の増産計画に影響』(7月22日)・『米国が “半導体戦争” 発動、制裁で中国の半導体産業の発展を加速』(7月31日)・『中国の半導体に再び着目、米国が新たな制限措置を検討』(8月2日)・『中国市場を捨てるのは死活問題、数百億ドルの補助では米国の半導体産業は救えない』(8月4日)・『日本から中国まで … なぜ米国は他国への “半導体制裁” に躍起になるのか』(8月13日)・『米国の半導体産業支援法、台湾企業や韓国企業にとっては “毒” か』(8月18日)・『”30年前の敵” だった米国は、日本の半導体業界の救いになるか』(8月26日 以上全て Record China)

超大国の政策次第で 叩かれたり・おだてられたりと 振り回される日本も情けないですが、”半導体業界の戦国時代” はまだ終わってないのです。

今日はここまでです。

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