*『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。18回目の紹介
美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲
何度でも言おう。
「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」
これは”風評”ではない。”事実”である。
2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。
「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」
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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介
ICRPを信じてはいけない
前に述べたように、呼吸器から取り込んでも、食べ物と一緒に体内に取り込んでも、放射性微粒子は体内のどこか一ヵ所に留まって、放射線を放出し続けます。
中でも、ベーター線とアルファー線は遠くまで飛ばない代わりに、付着した細胞にそのエネルギー全部を放出します。
原子の種類によって、出す放射線は違います。セシウム134,137はガンマー線とベーター線を放出します。
プルトニウム239はアルファー線を放出します。
ストロンチウムはベーター線を放出します。
福島第一原発から放出された放射性微粒子は、セシウム134、137、プルトニウム、さらにストロンチウムも含まれています。
これらのものを呼吸によって、あるいは食べ物によって口から体内に取り入れたらどうなるか。
その体内被曝について、ICRP(国際放射線防護委員会)は指針を作っており、日本の政府はそのICRPの指針に沿って、政府の方針を決めているといっています。
さて、このICRPとは何でしょうか。私たち日本人は、ICRPを権威のある国際的な中立の機関である、と思っていないでしょうか。
事実はそうではありません。ICRPとは文科省によれば、
「専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う国際組織」
となっています。しかし、ICRPは1928年にその前身が設立され、現在はイギリスのNPOとして公認の慈善団体です。その資金は、各国の行政部門・研究所から66パーセント、政府間組織から21パーセント、企業関連から8パーセント、専門職団体から4パーセント、となっています。
また、常設の5つの委員会がありますが、そのメンバーはボランティアで参加する世界の専門家たちです。
その資金の出所からし、世界の原発推進勢力の影響が強いことが伺えます。つまりICRPは民間の団体であり、国連の機関でも何でもありません。このICRPの発表する数値を絶対的なものとしてありがたがって使うのは、日本政府のような原発推進勢力だけです。
NHKが2011年12月28日に放送した番組「追跡!真相ファイル<低線量被ばく揺らぐ国際基準>」という番組の中で、思いもよらぬ真相が暴露されています。
低線量被曝については次で述べることにして、ICRPを構成している人間がどんな人たちなのか知っておくことは意味があるでしょう。
低線量被曝の基準を緩和した当時のICRPの委員17人のうち13人が、各国の原発・核兵器関係者であり、原子力推進派でした。
しかも、ICRPは1950年にできた当初持っていた、内部被曝を扱う委員会の審議を中止してしまいました。その理由は、内部被曝委員会から報告書が出てきたら、原子力政策を進められなくなるからです。
廃止された内部被曝委員会の初代委員長、カール・モーガンは2003年に発行されたその著書『原子力開発の光と影』(昭和堂)の中で、
「ICRPは原子力産業界の支配から自由でない。(中略)この組織がかつて持っていた崇高な立場を失いつつある」といっています。
NHKの取材では、さらに恐ろしいことをかつての委員たちがいっています。
「どうせ低線量のリスクはよくわからないので、基準値を半分にした」
「原発・核施設への配慮があった。労働者への基準を甘くしてほしいという要望があった」
などと答えています。
このようなICRPのいうことをどうして信じることができるでしょうか。
(次回は「大雑把すぎるICRPの計算方法」を紹介します)
※続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/12(木)22:00に投稿予定です。