*『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。23回目の紹介
美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲
何度でも言おう。
「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」
これは”風評”ではない。”事実”である。
2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。
「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」
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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介
「訳のわからない疲労感」も説明がつく
さらに、この本の中で興味深いのは、訳者竹野内真理氏による「訳者あとがき」です。
この「訳者あとがき」はただのあとがきではなく、資料集ではないかと私のような素人には思われます。
一番衝撃的だったのは、科学技術庁の付属機関である『独立行政法人・放射線医学総合研究所」が2007年に、
『虎の巻 低線量放射線と健康影響 ー 先生、放射線を浴びても大丈夫?と聞かれたら』
という本を出していたのを紹介してくれたことです。
私も、この本を書くのに、放射線医学総合研究所(略して放医研)の発表した論文をかなり参考にしています。しかし、この「虎の巻」などというものが存在していると知って呆れました。
私は「放医研」が政府寄りと知っています。だからこそ、「放医研」のデータを使うことが私の偏りのなさを語るものだと思っていたのですが、とんでもないことでした。
「虎の巻」とはねえ。
いかに、低線量放射線は無害なものであるか、それを人々に説得するための「虎の巻」なのです。
参りました。いわゆる、「原子力村」の人たちは抜かりがありません。
その「訳者のあとがき」の中で知ったのは、「放医研」がペトカウ効果を十分意識して、それに対する反論を考えているということです。
「放医研」もなんとか対策を講じなければならないほど、ペトカウ効果は原発推進者にとっては脅威なのです。
この「訳者あとがき」で紹介されている論文の中で、私が大いにひかれたのは、ニュージーランドのレス・シンプソン博士の研究です。
それは、
「低線量被曝によって赤血球が変形し、筋肉と脳からの適切な酸素と栄養を奪うことで、慢性疲労症候群、いわゆる『ぶらぶら病』が生じる」
というものです。
おお、これこそ、私たちが苦しんでいる、あの「訳のわからない疲労感」を説明するものではありませんか。
ロシアのブルラコーワ博士によれば、チェルノブイリの事故処理作業者の間にこの「ぶらぶら病」が発生し、しかも、この人たちの間には免疫系の低下が認められるということです。
この「ペトカウ効果」は日本でももっと真剣に考えなければならない問題でしょう。
少なくとも、鼻血問題と激しい疲労感について説明することができるのです。
(中略)
アブラム・ペトカウ博士は1930年生まれ、1962年にカナダ原子力公社の研究員となり、ペトカウ効果を発見しました。
しかしながら被曝労働者の白血球に関する研究をしているさなかの1989年、政府からの研究費が突然打ち切られていまい、ペトカウの研究所は閉鎖され、それ以後放射線研究者としての道が絶たれてしまいました。
その後、ペトカウは自らの診療所を開業し、2010年11月末に引退するまで医師として働きました。2011年1月18日に急逝しています。
(次回は「アメリカで行われた乳がん死亡率調査の驚き」を紹介します)
※続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/24(火)22:00に投稿予定です。