*『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。19回目の紹介
美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲
何度でも言おう。
「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」
これは”風評”ではない。”事実”である。
2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。
「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」
----------------
**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介
大雑把すぎるICRPの計算方法
ICRPは内部被曝についても基準を決めています。
しかしその決め方は、恐ろしく面倒くさいものです。
臓器ごとに等価線量というものを計算し、さらに組織荷重係数というものを使った計算をし、そして「実効線量」というものを得る、という仕組みです。
こんなことの説明文はネットでいくらでも転がっているので、興味のある方は、いろいろ調べて下さい。
ICRPの結論である実行線量を簡単に丸めていってしまうと、
①体内に放射線源がある場合、
②体内の各臓器が被曝するだろう。
③臓器によって放射線から受ける影響の度合いが違うだろう。
④その影響を計算に入れて、臓器ごとの被曝量を計算する。
⑤その、それぞれの臓器の被曝量を足しあわせて、全身の内部被曝による被曝量とする。
⑥この体全体の内部被曝量を「実効線量」という。
これがICRPの、内部被曝についての考えです。
だから、体内に1キログラム当たり100ベクレルの線量のものを1日2キログラム取り込んでも、このように分散して計算すると、年間1ミリシーベルトの体内被曝量になる、というわけです。
私は、こんな大雑把な考えを真面目に主張できる人がいることが信じられません。
先ほどからいっているように、現在福島の人たちに被曝させているのは、直径が2~3マイクロメートルの放射性微粒子です。それが、体内の臓器に付着した、あるいは入り込んだときの被曝を、私たちは考えているのです。
アルファー線は体内で40ミクロン(マイクロメートル)ほど、ベーター線は2~4ミリメートルほどしか飛びません。
わざと小さい臓器を選んでみます。例えば甲状腺は、上下3センチから5センチ、卵巣は1つ当たり直径が平均3センチほどです。
ベーター線アルファー線は、甲状腺や卵巣のような小さい臓器すらまんべんなく照射するなどということはできません。
しかし、一つの細胞だけでなく、次の細胞まで達する飛距離はあります。
ベーター線アルファー線は自らの直近の細胞に自分のもつすべてのエネルギーを放出します。放射性微粒子周辺の細胞は、ベーター線アルファー線によって破壊されたり、あるいは染色体の異常をおこすでしょう。
キログラム当たり小さいと判断される線量でも、実際に細胞にあたるところでは大きな被害を起こし、それが、臓器に影響を与えるのです。
それが本当の内部被曝であるのに、どうしてわずかな数の微粒子の出す放射線の影響を臓器全体に広げ、さらに体全体に広げるのでしょう。
水道の消毒には次亜塩素酸ナトリウムという塩素の化合物が使われています。
この次亜塩素酸ナトリウムを耳かき半分の量でも直接舌に乗せたら、大変な害を及ぼします。
しかし、それを1リットルの水に溶いたら、水を消毒し、飲んでも何の被害も及ぼしません。
ICRPの内部被曝の計算は、今私が例に挙げた次亜塩素酸ナトリウムの場合と同じです。
耳かき半分の次亜塩素酸ナトリウムは舌に大きな害を与える。
しかし、それを1リットルの水で割ってしまったら、その外がわからない。
放射性微粒子が臓器にくっついたか入ったかした場合、その放射性微粒子の直近の細胞が被害を受けるのです。
その線量を体全体で割って計算するなど、次亜塩素酸が舌に与える被害を計算するのに、体全体で次亜塩素酸の強さを割ってしまうと同じです。
私たちが心配している内部被曝は、次亜塩素酸を乗せられた舌の心配をしているのと同じで、その次亜塩素酸を水で割ってそれを飲んだ時の、体全体の心配をしているわけではありません。
そんな心配は意味がないではありませんか。
結論を述べます。
福島の内部被曝の構造は、次の通りです。
①放射性微粒子を、呼吸器、食べ物、水などから体内に取り込む。
②放射性微粒子が、様々な経路をたどって、体内の臓器に入り込む。あるいは付着する。
③放射性微粒子は、排泄されることもあるが、ストロンチウムのように骨に入り込んでしまって外に出ないものもある。
④放射性微粒子は体内にある限り、放射線を出し続ける。
⑤ガンマー線は体の外に出て行ってしまう。
⑥ベーター線アルファー線は遠くに飛ぶことはなく、すぐ近くの細胞にその持つエネルギーをすべて放出する。
⑦臓器全体から見れば低い線量でも、放射性微粒子の周囲の細胞は大きな被害を受ける。
⑧結果的に臓器は損傷を受ける。
⑨細胞のDNZAも損傷を受ける。
⑩ガン化だけでなく、臓器の損壊はこうして始まる。
(次回は「福島の人たちはなぜ怒らないのか」を紹介します)
※続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/16(月)22:00に投稿予定です。