*『原発ゼロ』著者 小出裕章 を複数回に分け紹介します。3回目の紹介
『原発ゼロ』著者小出裕章
原発を廃絶させるまで、私は闘いたい。
原発は、都会では引き受けることができない寛大な危険を抱えています。「原子力マフィア」はまさか大事故は起きないだろうと高を括り、人々に対して「原発 は決して大事故を起こさない」と嘘をつきました。それでも不安を払拭できない彼らは、原発を過疎地に押し付けたのです。私は破局的な事故が起きる前に原発 を廃絶させたいと活動してきましたが、福島第一原発事故が起きてしまいました。私の人生すべてが否定されてしまい、自分の非力を無念に思わずにはいられま せんでした。しかし、この事故を忘れまいとする人々もまだ大勢いてくれることを、本当にうれしく思います。被害者の苦しみを少しでも減らし、嘘をついてき た巨大な権力を処罰するために、私自身も決して挫けずに闘いたいと改めて思います。
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**『原発ゼロ』著書の紹介
再び廃炉を先送りにした東海原発
2013年11月18日、奇しくも福島第一原発原子力発電所で4号機プールからの使用済み核燃料の取り出し作業が始まり、廃炉に向けた第一歩を踏み出したその日に、茨城県東海村の日本原子力発電東海発電所(東海原発)が、2014年度から予定している原子炉の解体作業を先送りにすると発表しました。東海原発が原子炉の解体を延期するのは、2010年に続いて2回目です。
東海原発は1966年に国内初の商業用原子炉として運転を始めましたが、30年経って老朽化してきたことと、施設が大きな割には出力が16・6万キロワットと小さく、効率が悪いということで廃炉にすることが決まりました。それで1998年3月に運転を停止して以来、廃炉作業が続いています。通常の廃炉作業は、図13のような流れで進められます。
東海原発の場合は、運転を停止して使用済み核燃料を取りだし、設備や配管を除染して施設の放射能を減衰させるという段階まで終えているのですが、その次の「建物内部の解体・撤去」でつまずいてしまっているのです。
今現在日本では、原子力施設を解体して出る「廃炉のゴミ」は、「低レベル放射性廃棄物」として地中に埋めて管理することになっています。そして同じ低レベル放射性廃棄物でも、放射能レベルによって、「きわめて低い廃棄物」、「比較的低い廃棄物」、「比較的高い廃棄物」の3つに分別され、それぞれ違った管理基準が定められています。
このうち、「比較的低い廃棄物」の処分場としては青森県六ケ所村に日本原燃の「低レベル放射性廃棄物埋蔵センター」があるのですが、ここが受け入れるのは運転中の原発から出たゴミだけで、廃炉のゴミは引きとってもらえません。そして、他の「極めて低い廃棄物」と「比較的高い廃棄物」に至っては、処分する施設そのものが一つもないのです。つまり、廃炉のゴミについて、処分の仕方のきまりはあるけれども、処分をする場所はないというのが現状です。
東海原発は、きまりがあるのだし、いずれ処分場は決まるだろうと踏んで廃炉の計画を建てました。そして、それを経済産業省が認可しました。しかし、今をもって処分場は一つも見つかっていないのです。現在、廃炉作業を行なっているのは東海原発だけではありません。
福井県敦賀市にある新型転換炉ふげん、静岡県御前崎市にある中部電力浜岡原子力発電所の1号機と2号機、そしてもし、プールからすべての使用済み核燃料を無事に取り出すことができれば福島第一原子力発電所の4号機も、このままいけば近い将来、「廃炉にしたくても廃炉にできない」という事態にぶつかることになるのです。
なお、福島第一原子力発電所では5号機と6号機も廃炉が決まっていますが、東京電力はこの2基については訓練施設として活用するのだと言っており、今のところ、解体する予定はないようです。
※続き『原発ゼロ』著書の紹介は、12/1(火)22:00に投稿予定です。