*『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。17回目の紹介
美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲
何度でも言おう。
「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」
これは”風評”ではない。”事実”である。
2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。
「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」
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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介
鼻血問題を無視するのは「科学的」な態度か
放射性物質を初めて発見したマリー・キュリーも、自分自身の白血病をラジウムにより放射線のせいだとは考えなかったそうです。
マリー・キュリーも、そもそも放射線の存在に気がついたアンリ・ベクレルも、放射線が人体に被害を与えるとは思ってもいなかったのです。アンリ・ベクレルに至っては、ラジウムを小さな試験菅のような菅に入れて、いつも持ち歩いて人に自慢して見せていたのです。これが、目に見えない、体に直接感じない放射能の恐ろしさではないでしょうか。福島の皆さんにはよくよく考えていただきたいことです。
医学が、放射線の人体に与える被害に対する知見を得たのは、それから後のことです。
第3章にも述べましたが、科学というものは、最初に何かの事象を認識することから始まります。
今までの科学知識では説明できない事象に出会う。
一体それは何なのだろうと、研究を始めることで、科学は進歩するのです。
それまで見たことがない事象でも、今までの科学知識の枠内で説明できると考える。それに反する新しいものの見方を、事実をもって提出しても、今までの科学の権威にあぐらをかいて否定する。
もしすべての科学者が、そのような態度を維持していたら、ガリレオは異端者のままだったでしょうし、そもそも原子爆弾も、原発も、この世に現れなかったでしょう。
一番大事なことは、今まで経験したことのない事象が起こったら、まずその事象が特殊な条件のもとでしか起こらない異常現象なのか、同じ条件の下では誰にでも起こる普遍的な現象であるか、確かめることです。
特殊な条件で特殊な人にしか起こらない事象であれば、いままでの科学で説明できる可能性は高いでしょう。
しかし、ある条件下では、かなりのパーセントの人に、今までの科学では説明のできない、同じ事象が起こるとなれば、それは特殊な事象ではない。単に、これまでの科学ではつかみ切れていなかった何かがある、と考えるのが本当の科学者です。
私が体験した鼻血。ひどい疲労感。これは私たちだけに起こった特殊な事象ではありません。私以外に多くの人たちが体験しています。
私が鼻血を出したと書いたら、多くのマスコミ、政府の大臣たち、そして首相まで「風評被害だ」といいました。
政治家はどうせ政治屋です。自分に利があると思えば何でもいうのが政治家です。
しかし、マスコミの中には、科学的に物事を考えようという人がいてもおかしくないと思うのに、そうではありませんでした。
科学的に無知なのか、政治的に既に屈服した人たちなのか。
そのどちらか、あるいは両方でしょう。
これまでの科学が認めない事象は受けつけないという科学者がいたら、それは科学者ではなく、権威の上にあぐらをかく怠惰な失格科学者か、政治の要請に従ってそれまでのカビの生えた科学的知識を振りかざして人々を圧迫する、雇われ科学職人です。
どちらも、本当の科学者ではありません。
本当の科学者は、今までの科学的知識では理解できない事象に真摯に対処する勇気のある、真理の開拓者です。
今度の福島第一原発の事故では日本の科学者、医学者たちが、初めて身近で体験する事象が次々に起こっています。今まで自分たちが学んできた科学的、医学的知識では追いつかないものが多いはずです。
しかし、私の見るところ、その新しい事象に追いつくための研究をしている研究者の数はまだ少ないように思います。
(次回は「ICRPを信じてはいけない」を紹介します)
※続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/11(水)22:00に投稿予定です。