*『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。21回目の紹介
美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲
何度でも言おう。
「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」
これは”風評”ではない。”事実”である。
2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。
「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」
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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介
高線量より怖い「低線量被曝」とは
肥田舜太郎・竹野内真理の訳になる、ラルフ・グロイブとアーネスト・スターングラス著の『人間と環境への低レベル放射能の脅威』(原題は『The Petkau Effect』)という本は、低線量被曝が地球環境と人体に被害を与えることを、様々な例を挙げて示しています。
以下、その本の中でも、いかにICRPが原子力産業の都合のいいように基準値を作り上げているか、その実態が描かれています。
日本のマスコミは、ICRPの実態を国民に知らせようとしません。
前節で取り上げたNHKの番組はわれわれ日本人にICRPの実態を知らせる優れたものでした。NHKは以前にも「チェルノブイリの子供たち」のような良い番組を作りましたが、安倍内閣になって任命されたNHKの会長や一部の経営委員は、原発推進を方針とする政府に従順な姿勢を見せています。
これから先、NHKはこれまでのような番組を作ることができるのでしょうか。
この本の中で衝撃的なのは、原題になってる「Petkau Effect(ペトカウ効果)」でしょう。
ペトカウ効果とは、カナダのマニトバ州にあるカナダ原子力公社ホワイトシェル研究所の医学・生物物理学生主任だったアブラム・ペトカウが1972年に発見したものです。
ペトカウが生きている細胞に似ている人口膜に、水中で放射線を当てたところ、放射線照射を長時間続けると、X線フィルムで写真を撮るような線量よりはるかに低い線量の吸収で、細胞膜が破れることを発見したのです。
ペトカウは最初自分でも疑って何度も実験を繰り返しましたが、常に同じ結果が得られました。
細胞膜を破壊するためにはX線なら毎分260ミリシーベルト、全量が35シーベルトという高線量の被曝が必要だったのが、水に溶かした放射線食塩(塩化ナトリウム22)から毎分0.01ミリシーベルトという低線量を長時間照射すると、全量でわずか7ミリシーベルトの照射で細胞膜は破壊されたのです。
しかも、照射時間を長引かせるほど、細胞膜を破壊するのに必要な線量は低くなりました。
結果として、
「少量で慢性的な放射線被曝は、高線量の放射線を短時間被曝するよりその影響がより大きい」
という結論に達したのです。
これまで、細胞の中のDNAが放射線の衝突によって直接損傷を受けることは長い間知られてきました。しかし、細胞膜の場合はペトカウが発見したような、間接的に損傷を与える仕組みが作用するのです。
(次回は「放射線が作り出すフリー・ラジカル」(なぜ低線量の方が高線量よりリスクが大きいのか)を紹介します)
※続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/18(水)22:00に投稿予定です。